「美雪……華星国を捧げて、あなただけを愛します」 愛? 笑わせるでない。 「他の男に渡すくらいなら、美雪を殺して俺も死ぬ」 華星国の豪奢な宮殿は、いまや地獄の様相を呈していた。 炎がすべてを飲み込んでいく。天井の梁が崩れ落ちる音が、遠くで雷鳴のように響く。熱気が肌を焼き、焦げた絹の匂いが肺に入り込む。 私・美園美雪は胸を刃で貫かれながら、律王の狂った瞳を見上げていた。 刃が肉を割く感触は、痛みよりも冷たさとして胸に広がった。 自分の血が温かいのか、炎が熱いのか、もう判別がつかない。 (私はここで死ぬのか?) 意識が暗転する瞬間、女の声が聞こえた。 「私たちが、王妃の座を!」 (野心的な令嬢の声) 「騙される方が、お悪いのですよ」 (狡猾な商人の声) 「王妃とあろうお方が、何という様なのでしょう」 (冷徹な側室の声) 「来世は、平民ですわね」 (残酷な貴族の声) その声を聞きながら、私は掠れ掠れにこう告げる。 「……いいわ。この記憶を抱いたまま、何度でも生まれ変わってみせる。私があなたを地獄の底へ突き落とし、この国を奪い取ってみせます」***それは、一年前。私が王妃になる前の話だ。 国を豊かにした。それは、ただ政を動かしただけではない。 私自身の手で、華星国の土を、民を、未来を、ひとつずつ掬い上げた。 「美雪様、どうかお助け下さい」 助けるしかない。私が動かなければこの者たちは終わる。 荒れ果てた土地を耕した。 干からびた大地に触れたとき、指先に伝わるざらつきが忘れられない。 「土は嘘をつかない。皆も一緒に手伝ってくれるか?」 肥えているか、痩せているか、どれほどの年月を放置されてきたか。触れればすぐに分かった。 私は農民たちと膝をつき、土を握りしめ、「ここはまだ、生きている」と告げた。 「美雪様に、何とお礼をしたらよいのだろうか」 「ありがたや、ありがたや」 彼らの目に灯った光を、私は今でも覚えている。 民の生活を整えた。 飢えた子どもたちの頬に触れたときの、あの冷たさ。 冬を越せない老人たちの震える声。 彼らの痛みは、私の胸に直接突き刺さった。 「農民のことに、手を貸すな。王である私のそばから離れるでない」 だから私は、税を見直
Last Updated : 2026-07-12 Read more