離婚届が受理された日、S国には深い雪が降り積もっていた。私は正人から届いたメールをじっと見つめた。私と柊也の婚姻関係が解消されたとのことだった。たったそれだけの内容だった。私の8年間を、静かに過去へと葬った。その夜、柊也から最後のメールが届いた。宛名も、署名もなかった。【紬。今日、君のお母さんが昔所属していた劇場に行ったんだ。一番後ろの席で、どこにでもあるような普通の演劇を見たよ。幕が下りるとき、君が昔言っていたことを思い出したんだ。君のお母さんは毎回カーテンコールの際、客席の左端を見ていたそうだな。幼い君が、そこでずっと待っていたからって。昔の僕は、そんな君の話をちっとも真剣に聞いていなかった。本当に申し訳なかった。あの耳飾りを見つけたよ。萌香が控室に落としてしまい、清掃員が普通のアクセサリーと勘違いして片づけてしまったんだ。3日かけてようやく探し出した。修理させて送ったから受け取ってくれ。それから、あの指輪もだ。もう僕には、それを手元に置く資格なんてない。紬。僕は人生で一番輝いていた夜に、君を失った。あの時の配信動画を何度も見返したんだ。光に照らされて、君が自分の口で『スタッフに過ぎない』と言ったところを。僕の人生はあの一言で終わったんだと、やっと分かったよ。そのナイフを君に差し出したのは、他の誰でもない僕自身だったんだ。君に許しを請うなんてことはしない。もう『愛してる』なんて言葉も言えない。これから君はたくさんのオーロラを見て、栗のケーキを好きなだけ食べて、誰かを待たなくていい誕生日を何度も迎えるんだ。もう振り返るな。もし来世があるなら。その時は、もっと人の愛し方を覚えてから君に出会いたい】メールの最後には、一枚の写真が添えられていた。あの古い婚約指輪だった。内側の【OnlyT】という刻印の隣に、小さく文字が付け加えられていた。【Sorry.T.】その写真を見た瞬間、私の頬を涙が伝った。翌日、荷物が届いた。耳飾りは綺麗に直っていた。羽織も丁寧にアイロンがかけられている。箱の底に、その指輪が静かに眠っていた。私は指にはめなかった。そのまま母の遺品と一緒に古い木箱の中へ仕舞った。箱の蓋を閉めた時、窓の外ではオー
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