ゴールデンウィーク、私――水野紗季(みずの さき)が乗っていた観光船が、海難事故に遭った。船室に閉じ込められ、今にも溺れそうになっていた私を置き去りにして、恋人の神谷直人(かみや なおと)は救命ボートに乗り込んだ。そして、ずぶ濡れになったかつての想い人――榊原玲奈(さかきばら れな)を、風邪をひかせてはいけないと病院まで送り届けた。救助され、病院で意識を取り戻したあと、私は玲奈が投稿したSNSを目にした。【結局、あなたがいちばん忘れられない、いちばん守りたいのは、ずっと私】事情を知る人たちは、コメント欄で好き勝手なことを書き込み、私を笑いものにしていた。けれど私は乾いた笑みを浮かべ、祝福のコメントを残した。【素敵な恋ね。今度こそ、もうすれ違わないといいわね】目を覚ましてからずっと、頭が割れるように痛んでいた。強張った体をどうにか動かし、そばにいた看護師に尋ねた。「私をここまで運んでくれたのは、誰ですか?」「ツアー会社のスタッフです。同じ事故に遭った方が、ほかにも何人か運ばれてきましたよ」まだ諦めきれず、私はもう一度尋ねた。「ほかには……誰もいなかったんですか?」「ええ。スタッフの方だけでした」看護師ははっきりと答えた。私は何も言えなくなった。結局、直人が助けることを選んだのは、私ではなく玲奈だったのだ。そのとき突然、けたたましい着信音が病室に響いた。スマホを見ると、画面には直人の名前が表示されていた。通話ボタンを押した途端、直人の怒鳴り声が病室中に響き渡った。彼が電話をかけてきたのは、私の容体を心配したからではなかった。玲奈の代わりに、私を責めるためだった。「紗季、あのコメントはどういうつもりだ!玲奈は大学時代からの友人で、もう何年もの付き合いなんだ。帰国したばかりで、こっちには俺以外ほとんど頼れる相手もいない。そんな玲奈を放っておけるわけがないだろ!俺たちは昔から今まで、やましいことなんて何ひとつない。いい加減、妙な勘繰りをするのはやめろ!」私はせめて事情を説明しようとした。「直人、私も怪我をして――」けれど、最後まで言い終える前に、直人は苛立ったように電話を切った。かけ直してみたものの、すでに着信を拒否されていた。これまで直人と過ごしてきた日々が、次々
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