All Chapters of たとえ異端になろうとも~蒼炎と黒炎を宿した騎士、サルロの魔王焼却譚~: Chapter 11 - Chapter 20

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#11 闇に潜む者たち

王都まであと二日だろうか、とサルロは宿屋の一室、聖典を前に考えていた。王都とケックを結ぶ街道を往けば、一日進むごとに宿が設けられている。その代金は、手形でツケて王都で清算してもらえる、とのことだった。 (ありがたいことだ) 蒼騎士とて、人間。泊まるにも飯を食うにも金が要る。 (教会からの給金はもう少ししなければ届かないし、そうするには都市に行かねばならない。国王陛下には、頭が上がらんな……) ボーン、と壁掛けの時計が鳴った。午後七時、夕食だ。居間のテーブルで聖典を読む、というには集中できない状態だった彼は、顔を上げる。窓の外を見ると、鐘を備えた監視塔があった。 「ガリヤ」 彼は、奥の寝室で新聞を読む親友に声をかけた。 「食事に行かないか」 「別に食堂行かなくていいんだろ。届けてくれる、って支配人が言ってたしよ」 「そうだったな……スイートの特典、だったか」 ガリヤの溜息が聞こえてきた。 「サルロくん、食事に鶏肉を入れないよう頼んでくれたね?」 サルロの向かいで銃身を磨きながら、ダンケルが問う。 「伝えはした。厨房にどれほど共有されるか、私には断言できないが……苦手なのか?」 「苦手、と言うよりも掟だね。同じ翼を持つ者同士、共食いになってしまう」 「難儀なことだ」 難儀かねえ、とダンケルが漏らす。そこで、扉がノックされた。 「お食事をお持ちしました」 四人分の夕食が、ダイニングテーブルに並ぶ。仔羊のローストをメインとして、人参や玉葱をオーブンで焼いたもの、青葉のサラダ。豆のスープに羊乳のチーズだ。飲み物は葡萄酒で、セキには茶が供された。 騎士らは声を揃えて祈りを捧げる。セキが、 「感謝を」 と続けた。 「ナイフは……右手でしたよね」 彼女は、そのまま慣れない手つきでローストを切ろうとしていた。 「ゆっくりでいい。焦らずとも、食べ物は逃げないさ」 銀食器を囲む食卓は、緩やかな空気で満ちていた。 「あの、サルロ様」 セキが話し出す。 「蒼い目の人なら蒼炎を使えるって話、前にしましたよね」 「ああ。それがどうした?」 「覚えてます? どこかで使い方を教えてくれる、って言ったの」 「……そういうこともあったな」 そこで、サルロは葡萄酒を一口飲む。 「そうだな、食べたら、
last updateLast Updated : 2026-07-31
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#12 蛇騎士、シゲレル

「魔物が出たぞ!」 監視塔から、鋭い声と鐘の音が響く。サルロは鎧を纏ったまま、裏庭から玄関へと駆ける。セキも一緒だ。 宿の前に出た時、そこには、既に死体が転がっていた。腹を食い千切られ、死肉を漁られている。狼型の魔物が二十、四十、いや六十に近いほどの数で、群れていた。「蒼炎よ、我が剣に宿れ」 静かに、彼は唱えた。途端、刃を蒼い炎が覆う。黒を孕んだ、聖なる炎の蒼い軌跡。飛び掛かる黒い狼を一閃を以て消し去り、盾を体に前に出す。「魔物に、倫理観や善悪というものは存在しない」 すぐ後ろにいるセキに、彼が語り掛ける。「だから、躊躇なく殺せ。いいな」 その声音に込められた並々ならぬ怒気に、セキは気圧された。目の前で人が死んだから、というだけではない。燃え盛る熱。魔に故郷を奪われた彼の過去を思い出す。「一匹たりとも通すなよ」 彼女は、魔物に視線を向ける。黒い狼が真っ直ぐ走り寄ってきた。下腹に力を籠めながら、目測で距離を見定める。怯むことなくメイスを持ち上げ──振り下ろす。見事、頭蓋骨を叩き潰す。赤い体液が、街道に広がる。(大丈夫、魔力を使えてる!) 一匹、二匹と魔物を殴り飛ばしていく。肉にめり込み骨を砕く感覚は気持ち悪いが、守れないことよりずっとマシだ。何より、自分が食われるよりも。 得物を握り締める。体に取り込まれたマナが、手に馴染んだ武器を、いつもより軽く思わせる。しっかりと体重を移動させて振り抜いたメイスは、一撃で魔物を屠る。(これが、戦う!) そこで、三階の窓から飛び出す影が二つあった。一つは赤い翼を、一つは青白い鎧を有している。「すべての王よ、今や目覚めよ──」 ガリヤの、聖典を詠唱する声が戦場に響く。そうなれば魔物たちも止まる筈──誰もが、そう考えた。しかし、目論見は外れる。 ガリヤの口から出る言葉は、魔力を伴っていても狼を抑え込めない。着地して、一時詠唱を止め、叫ぶ。「サルロ、数を減らし
last updateLast Updated : 2026-08-01
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#13 宣誓、隣にいると

怒りのままに、剣を振るった。ベッドに横たわるセキを見ながら、サルロは己のやったことを振り返っていた。魔力を暴走に近い形で用い、黒炎に支配された。それは、蒼騎士としての道に悖る行為。だが、何故だろうか。恐怖は、教会からの追放ではなく、セキからの失望にしか向いていない。 昼だというのに閉め切られたカーテン。入ってこない陽光。セキは、顔を彼に向けないまま、沈黙している。「セキ」 呼びかけても、応じない。「起きているんだろう。どうだ、痛みはしないか」 それでも、彼女はサルロに背を向けている。「私の責任だ。浅はかな挑発に乗り、隙を──」 「違うんです」 セキが、やっと言葉を発した。「サルロ様のことを、恨んでるわけじゃないんです。ただ……」 続く言葉があまりに恐ろしくて、サルロは何も言えなかった。どんな叱責でも受け入れるつもりだった。それが違うとなれば、一体全体、何が来るのか、想像もできない。「見られたく、ないんです」 女心。いや、人として、突然の醜さを押し付けられればそうもなろう。簡単な事実だが、サルロはそこに思い至らなかった。「窓ガラスで、見ちゃったんです」 セキの声は、震えていた。「だから、あたしは置いて行ってください。こんな顔じゃ──」 言い切られる前に、サルロは彼女の体を掴んでいた。顔を自分に向けさせる。赤黒く爛れた、右目周りの火傷跡。まるで油絵具を塗ったくったかのような凹凸。「いやっ、やめてください!」 突き放そうとする細い腕。だが、鍛え抜かれた戦士を前に、抵抗は無意味だ。「こんな顔じゃ、サルロ様だって一緒にいたくないですよ!」 「私たちは、仲間だ」 彼女の両肩を掴んで、サルロは静かに、だが力強く語り掛ける。「共に命を託し合う、仲間なんだ。君だって、魔物から皆を守るため戦ってくれた。その心意気がある限り、いや、そうでなかったと
last updateLast Updated : 2026-08-02
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#14 歓待のダンスと、過去を想って

「よく参った」 白い垂れ幕が幾つも並ぶ、ターリシュ王国玉座の間。それぞれの垂れ幕には、建国伝説をモチーフとした刺繡が施されている。「面を上げい」 跪き項垂れるサルロ一行に向け、金髪のドベル王が数段高い場所から告げた。両脇には完全武装した、白い盾を持つ騎士を立たせ、己もまた佩剣している。背後には、側近らしい老人が控えていた。「蒼騎士の滞在、心より歓迎する。目的は、この国に存在する魔王の遺体を回収すること。相違ないな?」 「ええ、国王陛下」 サルロは静かな声で応えた。「魔王復活を目指す異端者の集団、『青の背徳者』に関する情報を頂ければ、それを基に行動いたします。そして、これは道中での出来事である故、お手紙では申し上げられなかったのですが……」 「何があった、言ってみせよ」 「蛇騎士が、復活しております。行方を追っていただきたく」 「なんと、蛇騎士!」 国王が大声を出した。「魔王討伐と時を同じくして、消滅したのではないのか」 「私もそう聞いておりましたが、現実として、存在します。蛇王も生きているとか」 ムウッ、と国王は唸る。「軍の情報部を動かし、捜索させよう」 「恐れ入ります」 そこで、ドベルは側近を呼び、二言三言囁く。測建は駆け出し、玉座の横、袖の部分から消えていく。「龍斬りの蒼騎士、サルロ・ファージ。君と二人で話したい。暫し、残ってくれないか」 「仰せのままに」 三人が出て行って、残るのは白盾の騎士とサルロ、王だけだ。「いい年頃の娘がいてな」 サルロは話の目的を掴みかねた。だが、袖から顔を出した金髪の美人を見て、理解した。「どうだ、ターリシュ王国との繋がりも必要になるだろう」 「妻に、ということでしょうか」 「そうだ。君は随分と綺麗な顔立ちをしているだろう? 我ながら、娘
last updateLast Updated : 2026-08-03
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#15 王弟のホテルにて

「こうも待遇がいいってのは……」 ガリヤが呟く。「むず痒くさえ、あるな」 サルロが言葉の後ろを引き取った。 政府が手配したホテルは、街道沿いの宿屋とは比べ物にならないスイートだった。王都の夜景を見下ろす大窓。彼方に城壁。最新鋭の魔導冷蔵庫に、レコードプレーヤー。通信機。四人が揃って食事を摂れる大きなテーブルだって勿論ある。 セキは引き寄せられるように歩き出す。それから、トトッと走り始めた。「サルロ様! お風呂が二つあります!」 入って右の寝室に一つ、左の寝室にも一つ備わっているらしい、とサルロは間取り図を見ながら把握する。 興奮した様子の彼女を追い、サルロも歩く。中央にある居間から、寝室はすぐにアクセスできる。玄関からは、居間に行くにも寝室に行くにも別に扉を経由しなければならない。(不意の侵入者が来ても、対応する猶予があるように作られているな……) それぞれの家具の間にはかなりゆとりがあり、壁からも十分に離れている。短剣を振るうくらいならできそうだ、と彼は推測した。 椅子は分厚い木材で作られており、触れた彼は盾としても使えそうな、ずっしりとした感を覚える。「要人自身が戦える、って感じだな」 ガリヤも同じ感想に至っていた。「そうだな。おそらく、どこかで室内での戦闘を学んだ者が設計に携わっているに違いない。それで、ダンケルはどこだ」「え? あ、マジでいねえな」 見渡せど、赤い翼は見えない。そこで、玄関の鍵が開いた。サルロの右手は、腰の短剣に伸びた。が、その必要はない。「すまない、遅れたね」 ダンケルだ。その両手で、果物や白パンの詰まった紙袋を保持している。「買い物に行っていたのか?」 サルロは安堵に表情を緩めて問う。「そうさ。ほら、色々と買ってきたんだ」 どさり、と紙袋をダイニングテーブルに置いた時、セキも探検を終えて居間に戻ってくる。「まず白パンだろ
last updateLast Updated : 2026-08-04
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#16 英雄前夜

 自動で開いたカーテンが、朝日を取り込み、サルロに覚醒を促す。流石の最高級ホテル。彼は体に纏わりつく疲れというものが、一切残っていないことに気付く。「セキ、朝だ」 優しく語り掛けると、セキものっそりと起き上がった。「……何もしてないですよね」「ガリヤではないんだぞ」「聞こえてっからな⁉」 親友の怒鳴る声が飛んできた。地獄耳だ、と苦笑いを見せたサルロは、セキを連れて寝室を出た。 並んで寝起きの歯磨き。うがいの動きも、自然と揃った。「旅先で大切なのは歯の健康……でしたよね」「ああ。食べ物や水が違えば、不意のトラブルが訪れる」 話しながら、サルロは寝室に置いた魔法のトランクから着替えを取り出す。「私は風呂場で着替えるとするよ」 騎士として、彼はいつも黒いリネンシャツを着用している。「それ、喪服みたいですよねえ」 風呂場から出た彼に向けて、セキがそんなことを言った。「黒は、魔族の象徴。だが、人は己の中に必ず魔を飼っている。それを抑え込むという意味を込めて、蒼騎士は日常的に黒を身に着けるんだ」「でも、本当に黒を宿した人には……」「そういう話は、やめておこう」 そこまで言葉を交わした所で、玄関がノックされた。「ご朝食をお持ちました」 居間に運び込まれる、銀色のカート。それを見たサルロは、「いつ頼んだんだ?」 とガリヤに問う。「いや、俺じゃねえよ」「僕でもない」 有り得ないが、という前提付きで彼はセキに視線を飛ばす。否定された。「わたくしですよ」 そう言って現れたのは、三つ揃いのスーツを着用した、金髪を撫でつけた中年男性。鳶色の目に、にやりとつり上がった口端。「お初にお目にかかります、龍斬りの蒼騎士、サルロ・ファージ様」 丁寧だが、大仰にも思える動きで男は一礼
last updateLast Updated : 2026-08-05
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#17 会議の終わりは唐突に

「ようこそ、蒼騎士」 黄金の髪と目を持つ女性が、参謀本部第二会議室へ、サルロを迎え入れた。「よろしくお願いいたします。確か──」「センク・イーバンハード・ドボルケイン首都連隊長。センクでいい」 センクの左腰には、剣と短剣。背中には白塗りの盾。護国騎士団の証だ。「武勇は聞いている。サダレの近くで龍を斬ったと」「友人あってのものです」 サルロとセンクはそっと握手を交わす。冷たい怜悧を備えた金色の瞳が、彼の体躯を舐めるように、品定めするように上から下まで見る。「初めに言っておく。私は蒼騎士が嫌いだ」 吐き捨てるように言って、センクは部屋の奥へ向かった。明るい魔力灯に照らされるその部屋の中央には、円形のテーブルがある。ターリシュ王都ナーガ周辺を描いた地図が内接する四角形のように置かれ、肋骨服の軍人たちが詰めている。 一方で、騎士として参加したサルロとガリヤ、ダンケルは簡素なシャツだ。他に大人四人が入って多少余裕がある程度の部屋で、彼らは机から数歩離れた位置につく。「ゴホン」 と、最も年長らしい、白い顎髭を誇る男が咳払いした。「まず、蒼騎士サルロ・ファージ殿、状況を説明していただけますかな?」 サルロは一礼し、一歩前に出る。「ご紹介に与りました、サルロ・ファージです。数日前、ケックからこちら、王都ナーガへ向かう道中、蛇騎士を名乗る男、シゲレル・スランサと遭遇。撃退しました」「撃退? 殺したのではなく、か?」 センクが問う。「蛇騎士シゲレルは、多くの魔物を従えており、私に止めを刺す余力はなかったのです」 セキのことは、口にしなかった。「国王陛下より軍情報部へ、捜索の要請が来ておるのは、そういうことだったのだな」 目の下に隈のある、中年将官が言う。「それで、情報部の動きはどうかね」 髭面の年長者は、まだサルロと五つも変わらないだろう、という若い士官に問うた。セキにも似た、燃えるような赤髪だ。「蒼騎士様、情報部
last updateLast Updated : 2026-08-06
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#18 襲撃、王都ナーガ

王都西方、城壁の上に立ったサルロ一行は、静かに戦いの姿勢を取った。ダンケルは赤い翼を羽搏かせて雨中に舞う。ガリヤが二本指を立てて詠唱を始める。サルロと、軽めの鎧を与えられたセキは、敵の只中へと飛び込んだ。「なにゆえ、独りで座っているのか──」 ガリヤの詠唱が始まる。魔物たちは動きを緩め、降り注ぐ迫撃砲や十ミリ弾の前に肉体を削られ始めた。ダンケルの打ち下ろす炸裂弾も、次々に化け物を屠る。青の背徳者に放たれた弾丸は、防御魔法に弾かれるが。 それを受けて、サルロは剣を構える。「蒼炎よ、我が剣に宿れ!」 ボウッ、と雨もものともせずに、黒の混じった蒼炎が立ち上った。上段に構えられた剣が、地面を打つ。花が咲くように炎が広がり、魔物の群れを飲み込んだ。「セキ」 そう名前を呼んだ彼の脳内に、迷いが生まれる。また、傷を負わせることになるのではないか。次々に護国騎士団の騎士が飛び込んでくる中、彼は恐怖を殺す。「私から離れるな」 「はい!」 刃が唸り、鈍器が輝き、魔物の群れを蹴散らす。サルロが目指すのはただ一つ。黒馬に跨った、黒き騎士。蛇騎士だ。胸に赤い宝石が輝いている。 相手も彼を認めた。馬を嘶かせ、ドッドッという激しく鈍い音と共に、サルロへ突撃を開始したのだ。その銀仮面の名はミカハルデ。右手にランスを携え、襲歩を馬に強制する。銃弾を鎧で弾き、魔法も通さない。止めようとした護国騎士団の者が、轢き殺された。 だが、サルロは動じなかった。円錐状の穂先をじっと睨み、衝突の刹那、体を横にする。そして、ランスを抱え込んで、ミカハルデを馬より引きずり下ろした。「貴様がサルロか!」 ミカハルデは、左腰の剣を抜き、左手に盾を構えて叫ぶ。「そうだ。私がサルロ・ファージだ」 「なら、その命、貰い受ける!」 敵の武器を、サルロは冷静に観察する。分厚く、幅広な剣だ。片手剣というよりも、山刀と表現する方が相応しいほど。刃渡り六十センチのそれが、如何に重いか。真っ向切りを
last updateLast Updated : 2026-08-07
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#19 一夜の後の、研鑽

雨が上がった、朝のこと。サルロはガリヤと木剣による剣戟を交えていた。ホテル前の庭にできた即席の円形リング。まるで、かつての剣闘士のような光景だった。 カン、カンと小気味いい音が連続して鳴り、晴れ渡った春空に消えていく。上、上、下、右とサルロの剣は素早く動き、ガリヤを少しずつ後退させていく。やがて、ガリヤはリングの際まで追い込まれ……剣を弾き飛ばされた。「勝負あり! サルロ・ファージ!」 審判を務めていたダンケルが、鋭い声を挙げる。ワアッ、と群衆となった騎士たちが盛り上がった。「よって、此度の剣技大会、優勝はサルロ!」 「流石だ、蒼騎士!」 「でも相手も蒼騎士だぜ」 指笛に歓声、悲喜こもごもの声。混じり合った中、密かに金も動いていた。 ロープも何もない闘技場を降りたサルロを、護国騎士団や駐留していた蒼騎士が取り囲む。「なあなあ、あんた、龍斬りの称号持ってるって、マジか?」 「ああ。少し前に、サダレ近くの洞窟で赤いドラゴンを狩った」 「俺は獅子斬りの称号を持っちゃいるが……ドラゴンってのは早々会えねえ。あんた、幸運だな」 困った笑みを浮かべながら彼は人ごみを抜けようとするが、時間が経てば経つほどに人が集まっていく。「魔法を見せてくれよ、その目、蒼炎が使えるんだろ?」 赤い目の男が、そう言った。「あまり人前に見せるものでもない。だから、通してくれ」 「なんだ、ノリの悪い兄ちゃんだ」 そうして、人の群れはガリヤへと向かう。「兄ちゃん、さぞ名前がある騎士だろう⁉」 「おうよ、英雄サルロの相棒たる祈祷騎士、ガリヤ・ダベル!」 「祈祷騎士が剣術もできるのかい! そりゃあ龍だって斬れるわけだ!」 リングの上で胸を張る親友から、サルロにアイコンタクトが飛ぶ。頷きを返して、彼はそそくさと走り去った。 ホテルの敷地を抜け、騎士館へと向かう。少し、試
last updateLast Updated : 2026-08-08
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#20 どう進むか、決める時

「蛇騎士が吐きました」 燃えるような赤髪を持つダーブ中佐が言う。参謀本部第二会議室。地図のある円卓の周りに、三人の軍人と三人の騎士が集まっていた。「ナーガ西方、ダオウ火山近くの洞穴に、蛇騎士と背徳者の拠点が築かれているそうです。詳細な場所については、吐くつもりもないようですが……」 ダーブは、卓上の地図を指差す。王都ナーガから火山へ、左に指が動く。「火山近辺……地脈の強い場所という訳だな」 センク連隊長が、金髪の髪を揺らして言う。その言葉に、サルロはドラゴン狩りを思い出す。あれも、地脈が強いエネルギーを放つ場所に暮らしていた。「何か、強力な魔力が必要なことをしているのでしょうか」 ダンケルが問う。「そこも、吐かせました」 ダーブ中佐が指を鳴らす。立体映像が机の上に現れる。「その、それは中佐の魔法なのですか?」 「そういう魔導具がある……とだけにしておいて。蛇騎士と蒼騎士の鎧は、本質的には同じものであるようです」 「ほう?」 立派な顎髭のランカリーダ閣下が問いを放つ。「蒼騎士の鎧は多量の魔力で鎧表面をコーティングし、魔法への耐性を持たせている。そうですよね、サルロ様」 「はい。蒼騎士のものであれば、聖別によって黒炎にもある程度耐えられますから……蛇騎士が、何らかの儀式を経て、蒼炎に対して耐性を得ている、というのはあり得ます」 「蒼騎士の鎧の修復には、火山から齎される莫大なエネルギーが必要、というのも正しいですね」 サルロは頷く。「なるほど、蛇騎士が蒼騎士クラスの魔法耐性を持っているなら、当然それだけのエネルギーを確保しなければ活動できない、と」 ガリヤの言葉に、軍人たちも納得した。「我が国唯一の活火山が、ダオウ火山。溶岩湖が存在し、基本的に誰も近づきませんが……それを利用して蛇騎士が活動しているというのも、おかしくありません」 立体映像を操作しながら、ダーブ中佐は言葉を並べる。「セリアード偵察隊は、向かっているのかね?」 ラ
last updateLast Updated : 2026-08-09
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