国内の警察は対応が早かった。卒業式の会場を出た途端、俺は警察官に呼び止められた。身分証や結婚を証明する書類を提示し、事情を説明すると、ようやく警察も納得してくれた。警察が立ち去るとほぼ同時に、スマホが震える。送信者は妻の相沢遥だった。【誠、さっきのことにはちゃんと理由があるの。だから変に考えないでね。先に家で待っていて。帰ったら全部説明するから】短いメッセージだった。それを見つめた瞬間、不思議なくらい待つ気持ちがなくなっていた。遥と結婚して間もない頃、彼女は博士課程へ進みたいと言った。妻とその家族に少しでもいい暮らしをさせたくて、俺は大学時代の友人とともに海外へ渡り、働く道を選んだ。あの頃の俺は、自分の生活を切り詰め、稼いだ金のほとんどを遥へ送り続けていた。ただ、彼女に少しでも不自由のない生活を送ってほしかったからだ。そして去年、AIブームの波に乗り、俺が開発した製品が次々とヒットした。そのおかげで会社を立ち上げ、わずか一年で急成長を遂げ、業界でも注目される新興企業へと成長した。今回帰国したのも、本社を国内へ移し、ようやく妻や家族と一緒に暮らそうと思っていたからだった。起こり得る問題はすべて想定していた。そのための対策も、できる限り用意してきた。それでも、唯一予想できなかったことがある。その想定外が、遥自身だった。タクシーを拾おうとしたそのとき、ポケットのスマホが再び鳴る。親友の高瀬礼(たかせ れい)からだった。「もう着いたんだろ? いつもの店で待ってるから、早く来いよ。今日はお前の帰国祝いだ」通話を切ると、俺はタクシーで「路地裏バー」へ向かった。礼たちはすでに店で待っていた。俺の姿を見つけるなり、礼が満面の笑みで立ち上がる。「やっと誠が帰ってきたな。ほら、こっち座れ」席に着くなり、俺は目の前にあった酒を一気にあおった。そんな様子を見た礼が苦笑しながら肩をすくめる。「どうした? せっかく帰国した初日だってのに、そんな暗い顔して。独り身が長すぎて、寂しくなったか?」その言葉に、俺は思わず目を瞬かせた。意味が分からず、礼の顔を見返す。「独り身って、何の話だ? 俺は何年も前に結婚しただろ。お前も知ってるはずだ」礼は驚いたように目を見開いた。「お前
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