私、葉室日和(はむろ ひより)の恋人、御影伊吹(みかげ いぶき)は、人のぬくもりを求めずにはいられない「スキンハンガー」だと言いながら、私には簡単に触れさせてくれなかった。同棲して4年。伊吹は毎晩、大きな白いガチョウのぬいぐるみを抱かなければ眠れない。「ぬいぐるみを抱くと、人に抱きしめられているような感覚になって安心できるんだ。気持ちも落ち着く」私は甘えるように、伊吹の胸へ潜り込んだ。「私を抱くのじゃ駄目なの?」伊吹は私をそっと押しのけ、背を向けると、白いガチョウを抱きしめた。「ふざけないで。こっちのほうが抱き心地がいいんだ」ある日、私がそのぬいぐるみを洗濯機で洗うと、伊吹は激怒した。「型崩れしたらどうするんだ!」「同じものを買い直せばいいでしょ?」「日和には分からないよ!」それから伊吹は、何日も口をきいてくれなかった。仲直りするために同じぬいぐるみを買おうと思い、伊吹が入浴している隙に、販売ページを探そうとこっそりスマホを開いた。画面には、花房莉世(はなぶさ りせ)とのトーク画面が開いたままだった。伊吹が送り続けたメッセージは、どれも未読のまま残っている。【この白いガチョウを抱いていると、莉世を抱いているみたいだ】【莉世がいないと、まともに眠れない】【莉世、いつになったら戻ってくる?】ところが、昨日送られた最後のメッセージだけには既読がつき、その下に女からの返信があった。【今回は抱きしめただけ。次はどうする?】頭の中が真っ白になった。ベッドの上に転がる白いガチョウを見つめていると、急に何もかも馬鹿らしくなった。伊吹。どうしても私には触れられないというのなら、これからはもう、私から触れたりしない。……伊吹が浴室から出てきたときも、私はまだ、花房莉世という名前が頭から離れずにいた。伊吹と同棲を始めて4年。その間、伊吹は1日も欠かさず莉世にLINEを送り続けていた。何百通、何千通と並ぶメッセージには、一つも既読がついていない。ブロックされた相手へ送り続けた言葉の数々から、私の知らない伊吹の顔が浮かび上がってきた。伊吹は、口下手な人じゃなかったの?ベッドの上でぼんやりしている私に気づくと、伊吹は手を拭き、慣れた指つきで額のツボをそっと押した。彼が自分から触
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