画面の中で、沙耶はうつむき、バッグの内ポケットから白い錠剤を1錠取り出した。その動きは素早かった。水を飲む。錠剤をのみ込む。顔を上げ、目を赤くして航介を見る。そして、エビを箸でつまみ、口へ入れた。ざわめきが一気に会場中へ広がった。沙耶の顔が真っ白になり、勢いよく一歩後ずさった。「嘘よ」甲高い声が震えている。「こんなの偽物だよ。結菜、私に仕返しするために、こんな動画まででっち上げたの?」ステージ脇に立ったまま、署名したばかりの任命書を手にしている。紙の端を指先で押さえると、手のひらの傷痕がかすかにつっぱった。ステージの明かりが、その痕を薄く照らしている。瑞穂は私を見ると、映像担当のスタッフに再生を続けるよう合図した。動画は止まらなかった。沙耶が倒れると、航介が駆け寄り、その体を抱き上げた。画面の隅で、私は航介に強く突き飛ばされ、割れたグラスの上に手をついた。血がみるみる白いカーペットを赤く染めた。会場から音が消えた。航介はその場から動けず、スクリーンを見つめている。あの日、航介が見ようともしなかった光景が、ようやくその目に映った。床に座り、青ざめた顔で手のひらを押さえる私の姿だ。動画が終わると、スクリーンには一人で立ち上がる私の後ろ姿が残った。沙耶が再び私へ駆け寄ろうとしたが、警備員に阻まれた。「航介くん、結菜を信じないで」航介の袖をつかみ、涙をぼろぼろとこぼした。「二人に喧嘩してほしくなかっただけなの。本当に結菜を傷つけるつもりはなかった」航介はゆっくりとうつむき、袖をつかむ沙耶の手を見た。絆創膏が、指輪に締めつけられた赤い痕を隠している。不意に、喉の奥からかすれた笑いが漏れた。「俺たちが喧嘩するのが怖かった?」沙耶の頬を、さらに涙が伝った。「航介くんを愛してるから。結菜に取られるのが怖かったの」航介は沙耶を見つめ、冷えた声で言った。「最初に結菜を紹介したのは、沙耶だろ」沙耶は力なく笑った。「ただの遊びだと思ってた。本気になるなんて思わなかったの」周囲から、押し殺した声が聞こえた。「何それ、最低すぎる」「結婚式の試食会でそこまでやる?今まで何回、同じことをしてきたんだろう」その言葉が耳に障ったのか、沙耶が勢いよく振り返った。
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