本物の婚姻届受理証明書を手にした。そこには区役所の受理印がきちんと押されている。洋隆から受け取ったほうには、それがひとつもなかった。そのとき初めてわかった――あの男の欺き方は、こんなにも雑だったのか。「さっさと、あの家から荷物を出せ。俺はこれから、ちょっと片をつけることがある。二、三日待っていろ。車は手配してある」慎治は受理証明書を胸ポケットに押し込むと、ぶっきらぼうにそれだけ言い残して、自分の車に乗り込んだ。手にした受理証明書をもう一度、ぎゅっと握る。私が慎治の手配してくれた車に乗り込むと、外は土砂降りの雨になった。ちょうどそのとき、洋隆から着信が入る。「今どこにいる。なんでこんな時間に家にいねえんだ」昔の私なら、甘えて迎えに来てとねだっていた。でも、洋隆がくれた恋も結婚も、すべて偽物だ。あのとき、私の中で何かが終わったのだと思う。返事を待たず、電話越しの声は苛立ちを募らせる。「どこにいようが、さっさと戻れ。こっちはまだメシも食ってねえんだ。優衣奈も待ってる」一方的に通話を切られた。最後の一言で確信する――やっぱりあの女も一緒にいるのだ。私は短く鼻で笑い、スマホをバッグにしまい込む。5年前から住み続けた、あの家へと足を向けた。リビングのソファに優衣奈がふんぞり返り、果物を頬張っている。その隣には、キャラクターシールでべたべたに飾られたスーツケースが置いてあった。「遅かったな。さっさとメシ作れ。優衣奈と帰りに買い出しは済ませてあるから、手間も省けるだろ。そうだ、こいつのマンション、契約が切れたから今日からここに住む。お前、飯を作り終わったら急いでゲストルームを片付けろ」洋隆は、優衣奈や仲間の前だと決まってこんな調子だった。私をあごで使う姿を見せつけて、自分の方が上だと誇示するのだ。付き合い始めた頃は「人前だと強がっちまうだけなんだ」と下手に出て弁解したこともあった。けれど今では、私の献身も我慢も、すべて当たり前のものとして享受している。思わず笑いがこみ上げてくる。そう口を開こうとした、その時だった。私が折れたと思ったのか、優衣奈がバッグから一枚の協議書だか何だかを取り出し、勝ち誇った顔で差し出してくる。「沙耶華さん、今日から一緒に暮らすんだから、どうか仲良くしてくださいね。これ、一応目を通しておいてもら
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