結局、朔弥から返ってきたのは【分かった】という一言だけだった。それを聞いた葵は、呆れたように言った。「今さら何を一途な男ぶってんだろうね。だったら最初から大事にしろって話」けれど、私がどれだけそっけなくしても、朔弥は諦めなかった。自分が粘りさえすれば、私はいつか昔のように折れる。たぶん、そう信じているのだろう。でも、人の心はバネじゃないから、押しつけられた分だけ勢いよく戻るわけじゃない。むしろ蝋燭に近く、燃え尽きてしまえば本当に何も残らない。それから朔弥は、私にいろいろなものを送ってくるようになった。高価なブランド物などではない。そんなもので私の気持ちは動かないと、彼も分かっていたのだろう。届いたのは、昔よく食べていた路地裏の店のお菓子や、大学時代に好きだった作家のサイン本。ある年の大晦日、私が何気なく「集めてみたい」と口にしたシリーズのブラインドボックス。どれも昔の私なら喜んだものばかりだった。そして、どれも遅すぎた。届いた品々を見て、葵は珍しく少し黙り込んだあと、ぽつりと呟く。「梓のこと、よく分かってはいたんだね」私はお菓子の箱を開け、一つ口に入れた。味は変わっていなかった。記憶どおり、柔らかくて甘い。けれど噛みしめているうちに、ふと、大した味じゃないように思えてきた。でも、それは私が変わったのではない。昔の私はほんの少しの甘さで、それまでの苦しさまで全部帳消しにできると思っていただけ。今なら分かる。甘いものは甘い、苦いものは苦い。どちらかが、もう片方をなかったことにはしてくれないのだ。そんな日々がひと月あまり続いた。その間、朔弥からのメッセージにはたまに返信し、電話にもたまに出た。彼は関係が少しずつ戻っていると思っていたのかもしれないが、でも私はきちんと終わらせるために、話をするタイミングをただ待っていただけだった。そのきっかけは、思いがけない形でやって来た。ある日、知らない番号から電話がかかってきたので電話に出てみると、聞こえてきたのは遠慮がちな女の声だった。「もしもし、梓さん。向井です」私は何も言わなかった。しかし、琴乃は気にする様子もなく一方的に話し始める。自分が悪かったと思っていること、最近朔弥の態度がひどく冷たくなったこと、書店の運営資金まで止められてしま
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