カーテンの向こうから、美晴の、心配と苛立ちの入り混じった声が聞こえた。「どうしてすぐ私に電話しなかったの?何のために私の番号を教えたと思ってるの?」神谷怜央(かみや れお)は無理に上体を起こし、いかにも物分かりのいい顔をした。「旦那さんから許されたのは3回までだって言ってたから、怖くて……」「3回って何よ?」美晴は声を荒らげた。「何かあったらいつでも電話して。あなたにもしものことがあったら、私はどうすればいいの?」隣のベッドで静かに聞いているうちに、僕の視界は滲んでいった。事故が起きたときも、僕の意識ははっきりしていて、真っ先に彼女へ電話をかけた。けれど何回立て続けにかけても、1度も出なかった。怜央がかけたのは、たった1回。その電話には、美晴はすぐに出た。美晴は、僕には頼れる人がいないから、どれだけ遅くなっても彼女からの折り返しを待ち続けると知っていたのだ。そのとき、医師が処置のために入ってきた。カーテンが開いた瞬間、「事故を起こした張本人」である僕へ向けていた美晴の怒りが、すっと顔から消えた。一瞬、呆気に取られたものの、彼女の口から飛び出したのは――「怜央のことをこっそり調べたの?わざと車をぶつけたの?」僕がけがをしていないか確かめようともせず、美晴は事故の責任を僕に問いただした。僕が浮気に気づいてから、美晴は怜央に関する情報をひた隠しにしてきた。「彼は家庭環境に恵まれていないの。素性を暴かれたら、彼に迷惑がかかるでしょう」それなのに、僕が親のいない施設育ちだということは、周囲にはとうに言いふらしていた。僕がどれほど彼女なしでは生きられないか、周囲に知らしめるためだけに。喉の奥の苦みを飲み込み、僕は自嘲するように笑った。「これで4回目だ。約束を破ったね」かつて僕が離婚を言い張ったとき、美晴は僕たちの家の屋上に立った。「私と離婚するなら、ここから飛び降りる!あなたがいないなら私も生きていけない。私は一生、あなただけを愛するって言ったでしょう!」僕はたちまち決意が揺らぎ、彼女に、あの男ときっぱり縁を切るための機会を3回与えた。美晴が浮気の痕跡をすべて消したのを見て、僕はこの結婚を守り抜いたのだと、愚かにも信じていた。だが今日、残酷な現実に思いきり頬を打たれた。「3回
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