同じ頃。遠く離れた海凪市の病院。窓ガラスから差し込む陽光が、床に落ちている。病室のベッドで青白い顔をした女がゆっくりと目を開け、呆然と周囲を見回した。自分は死んだのだろうか?これが死後の世界なのか?試しに体を動かしてみると、激しい痛みと脱力感が同時に襲いかかり、彼女は思わず息を呑んだ。「まずは安静にして」耳元で、穏やかで温かみのある声が響いた。夕夏はハッとして顔を向けた。男は仕立ての良いスーツを着こなし、ハーフ特有の彫りの深い端正な顔立ちをしていた。湖のように澄んだ碧い瞳は一見穏やかだが、よく見ると背筋が凍るような冷ややかさを秘めている。夕夏は彼に会うとは思いもしなかった。「デリックさん?どうしてここに?」「君が私のオファーを断ったと聞いてね。もう一度口説き落とそうと思って、わざわざ会いに来たんだ。まさか、君に会った時……」デリックは眉をひそめ、そこから先は言わなかった。だが、夕夏には彼が何を言おうとしたのかわかっていた。愛する人に嫁ぐのだと笑っていたかつての彼女が、あんなにも惨めで苦しみに満ち、虫の息になっているとは思いもしなかっただろう。しかも、部下たちに命令を下したのは他ならぬ蒼介なのだ。夕夏の瞳が、一瞬だけ暗く沈んだ。だが、一度生死の境を彷徨ったせいか、後ろ向きな絶望はむしろ薄れ、冗談を言う気力さえ湧いていた。「私がオファーをお断りしたのは5年前ですよ。5年も経ってから、突然会いに来たんですか?」「降参だ。実はこの国に用事があって来たんだが、ふと君のことを思い出してね」彼女の精神状態が少し回復しているのを見て、デリックは誰にも気づかれないほど微かに安堵の息を吐き、口角に笑みを浮かべた。夕夏は痛みをこらえて身を起こし、しばらく沈黙してから言った。「ありがとうございます。私の命を繋ぎ止めるのは……簡単ではなかったでしょう?」何しろ、蒼介の放った弾丸は彼女の胸を真っ直ぐに貫いていたのだから。デリックは、自分が最高の医療チームを呼び寄せたことには触れず、ただ微笑みながら言った。「君の両手を治すことのほうが、よほど難題だと思うがね」「私の手は、まだ治るんですか?!」「非常に難しいが、やってみる価値はある……」デリックの視線が彼女の手に残る傷跡をかすめ、そ
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