征臣は何気なく書類を受け取った。先ほどのやり取りを思い出し、思わず尋ねた。「周りはみんな……俺と夏帆が付き合ってると思ってるのか?」秘書は征臣からの信頼も厚く、星奈との結婚も知っている。それだけに、星奈のことを気の毒に思っている。そう尋ねられ、秘書は慎重に言葉を選んだ。「社長と白石さんは幼なじみですし、社内でも何かと白石さんを気にかけていらっしゃいます。白石さんも以前から社長の恋人のように振る舞っていますから、周囲が誤解するのも無理はありません。奥様との結婚式を挙げれば、皆さんの誤解も解けるはずです」征臣の表情が少しずつ和らいだ。「そうだな。式を挙げれば、星奈ももうつらい思いをせずに済む。嫉妬して怒る必要もなくなる」口元にかすかな笑みを浮かべ、秘書へ指示を出す。「バッグをいくつか選んでおけ。帰りに星奈へ持っていく。この数日、ろくにそばにいてやれなかった。まだすねてるはずだ」秘書はすぐにうなずいた。「かしこまりました。すぐに手配いたします」そこでようやく、征臣は手元の書類に目を向けた。封筒を開けると、中から1枚の証明書がのぞいた。それを目にした瞬間、征臣の表情が消え、顔がみるみるこわばっていった。征臣の顔に一瞬、動揺が走り、ぎこちなく手を伸ばして中身を取り出した。婚姻届受理証明書によく似た1枚の証明書だ。だが、征臣は証明書を指先でつまんだまま、離婚届受理証明書という文字を食い入るように見つめた。どうして、離婚届受理証明書なんだ?そう思うと、征臣は慌ててスマホを取り出した。確認すると、弁護士から離婚届の提出が完了したとの連絡が届いていた。だが、あのときは夏帆の世話に追われていた。弁護士事務所の文字だけを見て、内容を確かめないままスマホをしまっていた。星奈には、離婚届を提出しないよう弁護士へ連絡するよう言っておいた。そのときの星奈の反応を思い返し、一度も提出を取りやめるとは言っていなかったことに、ようやく気づいた。征臣はずっと、星奈が離婚を持ち出すのは、自分を思いどおりに動かすためだと思っていた。嫉妬し、愛情を確かめたがっているだけだと。一度も考えたことがなかった。星奈が本気で、自分との離婚を望んでいたなんて。このところの星奈の言葉や表情が、次々とよみがえる。征臣が
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