夏帆は、征臣と幼い頃から一緒に育った幼なじみで、数年前に海外へ渡っていた。1年前に帰国した夏帆は、征臣と星奈が隠れて結婚していると知った。それ以来、幼なじみという立場を利用し、何かにつけて星奈に張り合ってきた。星奈も泣いて、怒って、嫉妬もした。だが征臣は、夏帆は妹のような存在だと言い、星奈には我慢しろ、夏帆に譲れと繰り返すばかりだった。星奈は膨らんだ腹をそっとなで、夏帆には答えず、警察署の入り口へ目を向けた。ほどなくして長身の征臣が警察署に姿を見せると、たちまち周囲の視線が集まった。星奈には目もくれず、まっすぐ夏帆のもとへ向かう。「夏帆ちゃん、大丈夫か?」夏帆は得意げに星奈を一瞥すると、椅子から立ち上がって征臣の胸へ飛び込み、いかにも傷ついたような顔で見上げた。「征臣、やっと来てくれた。警察署に連れてこられたのなんて初めてで、怖くてたまらなかったの」征臣はごく自然に夏帆の腰に腕を回し、なだめるように言った。「俺がいるから、もう大丈夫だ」警察官は丁寧な口調で話しかけた。「白石さんが鷹取さんの奥様だったんですね。あちらの方も妊娠中で、ご自分が妻だとはっきり主張されていたので……まさか虚偽の申告だったとは思いませんでした」そこでようやく、征臣は部屋の隅にいる星奈へ、まるで見知らぬ相手を見るような目を向けた。ほんの一瞬見ただけで視線を外し、警察官へ告げる。「では、妻を連れて帰ります」夏帆の手を取り、立ち去ろうとする。その背中を、星奈はかすれた声で呼び止めた。「待って」バッグを開け、婚姻届受理証明書を取り出すと、警察官へ差し出した。「これは、私と征臣の婚姻届受理証明書です。公印も押されていますし、役所の記録を照会すれば確認できます。本物かどうか、調べればすぐに分かります」顔から血の気が引いた夏帆は、不安そうに征臣を見た。「征臣……」征臣はわずかに眉を寄せ、警察官が受け取るより先に証明書を奪い取った。その場にいた全員の目の前で、ためらうことなく証明書を細かく破り、床へ投げ捨てた。「偽物です」星奈は床に散らばった紙切れを呆然と見つめ、信じられないものを見るように征臣を見上げた。夏帆もすぐに征臣の意図を察し、その胸に寄り添ったまま、ぷっと吹き出した。「皆さんはご存じないでしょ
Baca selengkapnya