木立の影が、動いた。一つではなかった。私は窓から離れなかった。離れれば、こちらが気づいたと悟られる。――数を、数える。木立に三。噴水の裏に二。東の回廊の柱の陰に、たぶん一。六。いや。屋根に、二。八だ。私は、ゆっくりと窓辺を離れた。灯りを消さなかった。消せば合図になる。寝間着のまま、壁伝いに扉へ向かった。――シェラを起こす。そう思ったところで、扉が音もなく開いた。シェラが、すでにそこにいた。「お嬢様」囁き声だった。侍女服ではなく、動きやすい黒の上下に着替えている。いつ着替えたのか。「八人」私が言うと、彼女は首を振った。「十一でございます」「……十一?」「厨房の裏に三。あれは先ほど壁を越えました」彼女は淡々と言った。「屋根の二名は弓。回廊の一名が指揮。残る八名が突入班かと」「シェラ、あなた」「四天王が一、灰塵のシェラハドでございます」彼女は初めて、少しだけ笑った。「斥候と暗殺を束ねておりました。同業の手癖は、見れば分かります」「アルヴィス様は」「あちらはご心配なく」「なぜ」「宮の警備が動いておりません」シェラは言った。「これだけの人数が壁を越えて、見張りの一人も騒がぬはずがない。にもかかわらず静かだということは」「……内応者がいる」「あるいは」彼女は目を細めた。「――すでに、あちらが把握して泳がせている」*廊下へ出た。灯りが半分落とされている。夜半以降はいつもそうだ。角を曲がったところで、正面から人影が来た。私は反射的に構えを取り、そして止めた。「ヴィオレット」アルヴィス様だった。夜着ではなかった。黒の軍装だ。剣を佩いている。「起きていたか」「……はい」「窓から見たな」「はい」「そうだと思った」彼は微かに笑った。「あなたの部屋の灯りが、見張りより先に消えなかった。よく気づいてくれた」「泳がせておられたのですか」「三日前から」彼は言った。「グレンツ侯の家令の一人が、先週アーデルハイドの商人と会っている。金の出所は聖教会だ」私の指先が冷えた。「侯爵閣下が――」「侯は関係ない」彼は即答した。「家令が個人的に買われた。侯自身は今夜、東棟で私の兵と一緒にいる。自ら申し出た」「ヴィオレット。頼みがある」「はい」「後ろにいてくれ」私は、
Última actualización : 2026-08-29 Leer más