結婚3周年の記念日、その夜の11時。私は何度もスマホを確認したが、秋からの返信は一つもなかった。【秋、大丈夫?どうして電話に出ないの、すごく心配だよ】【秋、今日そんなに忙しいの?いつ帰ってこられる?】【秋、今日は早めに帰ってきてね】テーブルの上に置かれた、すっかり冷めきった料理を見つめながら、私は心配とやるせなさに胸を締め付けられていた。せめて彼の秘書の連絡先だけでも控えておけばよかったのに。最近、会社で新しいプロジェクトが始まって多忙を極めているから、私のことにかまっている暇はない、と彼からはそう聞いていた。私も彼を理解しているつもりだが、今日は結婚記念日だというのに……秋のために特別に設定していた着信音が響き渡り、私は慌てて通話ボタンを押した。聞こえてきたのは、耳に心地よい女性の声だ。「奈央さんでしょうか?私、大崎社長の秘書です。社長がかなり飲みすぎてしまって、私と運転手で地下駐車場までお連れしたのですが、お迎えに来ていただけないでしょうか?」私は急いで階下に降り、運転手に手伝ってもらいながら、酒臭い秋を何とか部屋のベッドへと寝かせた。リビングに戻ると、私たちのあとをついてきたあの若い女性が、しゃがみ込んでうちの猫・ムギと遊んでいるところだった。でも、普段は人懐っこい猫なのに、その女にはまったく懐かず、低い唸り声を上げて威嚇している。彼女は立ち上がると、秋のスマホを私に差し出し、ふわりと爽やかなシトラスの香りが漂わせながら薄笑いを浮かべた。「奈央さん、今夜のことは、本当に私のせいなんです。私、お酒が弱くて……社長はずっと私の代わりに飲んでくれてたんです。それで、スマホもずっと私が預かってました。奈央さんからのメッセージも、さっき気づいたところで……どうか社長を責めないであげてくださいね」私の返事も待たずに彼女はさっさと踵を返して部屋を出ていき、ドアを閉める直前、私に向けていかにも挑発的な意地の悪い視線を投げてきた。最近、秋から時折あの微かなシトラスの香りが漂っていた。そのことをふと思い出し、手元の秋のスマホ画面に視線を落とした。ダメ元で、自分の誕生日を入力してみた。画面のロックが解除された。私はほっとした。秋のLINEを開いてみたが、そこに私とのトークはもうピン留めされて
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