私が黙って立ち尽くしているのを見て、美玲がたしなめるように両親へ視線を向ける。「お姉ちゃんはもともと自分の容姿にすごく敏感なの。もっと優しい言葉をかけて、いっぱい褒めてあげて。これ以上、傷つけないでよ」父は眉をひそめ、こちらを見た。「マスクを外してみろ。まだ見込みがあるか、確かめてやる」私が何かするより先に、母が鼻で笑った。「顔は心を映す鏡ってよく言うわよね。だから、美玲は顔も心もきれいなのよ。どこかの誰かさんはしつけが悪いから、家に入ってきても挨拶ひとつできない。もう見なくていいわ。これ以上見たら、気が滅入って食事も喉を通らなくなりそう」決して、挨拶の仕方を知らないわけではない。ただ、18年間、一度も会ったことのない人を前にして、「お父さん、お母さん」という言葉が、どうしても口から出てこないのだ。スーツケースのハンドルをきつく握りしめる。「私の部屋は、どこですか」マスクで顔の半分は隠れているが、清らかな声までは隠せない。つい先ほどまでとげとげしい態度だった母は、まるで感電したように固まった。そして、しどろもどろになりながらも、妙に丁寧な口調で答える。「に、2階の……左手にある、2番目の部屋よ」父と美玲から怪訝な目を向けられ、母も自分の失態に気づいたらしい。頬を赤くし、気まずそうに顔をしかめる。その声には、苛立ちまで混じっている。「この家の部屋には、それぞれ使い道があるの。あんたに使わせるのは、もともと美玲のメイクルームだったんだからね。美玲は私たちのいいところを受け継いでいるし、未成年なのに、もういくつもの芸能事務所から声をかけられているのよ。あの部屋は美玲にとって大切なの。いつまでもあんたに使わせるわけにはいかないんだから……言っている意味、分かるわよね?」静かにうなずく。「分かりました。ここにいるのは1週間だけです。大学の入学手続きを済ませて、寮に入ったら出ていきます」国民的歌姫で、声に人一倍こだわる母は、またしても私の声に心を奪われたらしい。「あ、あのね。そこまで急がなくてもいいわ。大学を卒業して、就職先が決まってから、近くに部屋を借りてもいいのよ」けれど、私はもうこれからのことを決めている。軽くうなずいただけで何も答えず、そのまま2階へ続
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