Lahat ng Kabanata ng たらい回しの娘、美貌だけじゃない: Kabanata 1 - Kabanata 10

10 Kabanata

第1話

私が黙って立ち尽くしているのを見て、美玲がたしなめるように両親へ視線を向ける。「お姉ちゃんはもともと自分の容姿にすごく敏感なの。もっと優しい言葉をかけて、いっぱい褒めてあげて。これ以上、傷つけないでよ」父は眉をひそめ、こちらを見た。「マスクを外してみろ。まだ見込みがあるか、確かめてやる」私が何かするより先に、母が鼻で笑った。「顔は心を映す鏡ってよく言うわよね。だから、美玲は顔も心もきれいなのよ。どこかの誰かさんはしつけが悪いから、家に入ってきても挨拶ひとつできない。もう見なくていいわ。これ以上見たら、気が滅入って食事も喉を通らなくなりそう」決して、挨拶の仕方を知らないわけではない。ただ、18年間、一度も会ったことのない人を前にして、「お父さん、お母さん」という言葉が、どうしても口から出てこないのだ。スーツケースのハンドルをきつく握りしめる。「私の部屋は、どこですか」マスクで顔の半分は隠れているが、清らかな声までは隠せない。つい先ほどまでとげとげしい態度だった母は、まるで感電したように固まった。そして、しどろもどろになりながらも、妙に丁寧な口調で答える。「に、2階の……左手にある、2番目の部屋よ」父と美玲から怪訝な目を向けられ、母も自分の失態に気づいたらしい。頬を赤くし、気まずそうに顔をしかめる。その声には、苛立ちまで混じっている。「この家の部屋には、それぞれ使い道があるの。あんたに使わせるのは、もともと美玲のメイクルームだったんだからね。美玲は私たちのいいところを受け継いでいるし、未成年なのに、もういくつもの芸能事務所から声をかけられているのよ。あの部屋は美玲にとって大切なの。いつまでもあんたに使わせるわけにはいかないんだから……言っている意味、分かるわよね?」静かにうなずく。「分かりました。ここにいるのは1週間だけです。大学の入学手続きを済ませて、寮に入ったら出ていきます」国民的歌姫で、声に人一倍こだわる母は、またしても私の声に心を奪われたらしい。「あ、あのね。そこまで急がなくてもいいわ。大学を卒業して、就職先が決まってから、近くに部屋を借りてもいいのよ」けれど、私はもうこれからのことを決めている。軽くうなずいただけで何も答えず、そのまま2階へ続
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第2話

学生課の先生からは、ほとんど間を置かずに返信が届いた。【承知しました。素敵な名前ですね】私も礼儀正しく返した。【ありがとうございます。祖母がつけてくれたのです】両親が私につけた名前は、「たらい」だった。「縁起の悪い名前をつければ、厄がつかない」と言って、両親は、厄介者をたらい回しにするように、生まれたばかりの私を祖母の菅原万葉が暮らす田舎へ預けた。5歳になり、小学校へ上がる時期が近づいた。その頃になって、学校の手続きや書類にも使う、きちんとした名前が必要になった。祖母は、両親に何度も電話をかけた。しかし、返ってくる言葉はいつも同じだった。「分かってる、もう考えてるから。こっちはドラマのオーディションや、全国ツアーで忙しいんだ。たかが名前ひとつで、そんなに急ぐことないだろ?」そうして何ヶ月も待たされ、とうとう入学式の日が近づいてきた。このまま入学して、クラスメイトに笑われるのではないかと心配した祖母は、とうとう自分で決めた。私に「菅原風歌(すがわら ふうか)」という名前をつけた。「いいかい、おばあちゃんはね、風歌がお金持ちになってほしいなんて思ってないよ。ただ、風みたいに自由に生きて、笑っていてくれたら、それでいい」そのとき、幼いながらも悟った。「たらい」でいる限り、私は何度でも厄介払いされるだけだ。だから私は、祖母が望んだように、菅原風歌として生きていく。そこへ、部屋の外から使用人の声がした。「食事の時間だ」使用人たちも、私が両親の娘であることくらい知っている。それなのに、妹には敬語を使い、私にはタメ口をきく。それが両親の指示なのか、それとも相手によって態度を変えているだけなのか、私には分からない。ただ、ここが最初から自分の居場所ではないことだけは、よく分かっている。だから、何かを期待したこともない。階下へ降りると、思わず足が止まった。サングラスをかけていても、目が眩むような光景だ。リビングには、何列もの華やかなドレスとハイヒールが整然と並べられている。宝石やアクセサリーは、使用人たちが恭しく手に持ち、美玲が好きなように選べるようになっている。私が階段の途中で足を止め、並べられた品々を眺めていることに気づくと、父の顔に一瞬だけ気まずそうな表情が浮かんだ。
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第3話

遠慮しようと口を開きかけたとき、使用人が足早に入ってくる。「周防社長がお見えになりました。ご自宅で造られたワインを持ってきてくださったそうです。ご一緒にいかがかとおっしゃっています」父は途端に愛想のいい笑みを浮かべ、立ち上がって出迎えようとする。何かを思い出したように、ふいにこちらを振り向く。「大事な客が来ている。昼は自分の部屋で食べなさい。あとで使用人に食事を運ばせる。食べ終わったら、食器は部屋の前に置いておけばいい。用がないなら、下には降りてくるな。どうしてこんな醜い娘が生まれたのか、いちいち説明する羽目になるからな」華やかなドレスに身を包んだ美玲が、気位の高い白鳥のように、つんと顎を上げて私を見下ろしてくる。「お姉ちゃん、気にしないでね。お父さんもお母さんも、芸能人なんだから、プライベートを守るためにも、余計な噂はできるだけ避けたいの。お昼を食べたら、ゆっくり部屋で休んでいて。下には降りてきちゃ駄目よ。晩ご飯も、もし声がかからなかったら、そのまま部屋で食べてね」両親は何も言わず、美玲の言葉を暗黙のうちに受け入れている。両親も美玲も、眩しいほどに輝き、世間の羨望を集めている。その中で、私だけが世間から隠されるべき「菅原家の汚点」だ。両親の有無を言わせない視線を受けながら、淡々と口を開く。「これからは、ずっと自分の部屋で食事をします」両親は満足そうに頷いた。「顔はともかく、身の程はわきまえているようだな」その言葉通りに部屋にこもっていた。翌日、使用人が部屋のドアをノックした。「お誕生日パーティーも、もうすぐケーキを切る時間だ。美玲お嬢様が、下へ降りて一緒にケーキを食べてほしいとおっしゃっているよ」しかし、言われた通りに階下へ降りたときには、すでにケーキはみんなに配られていた。使用人やボディーガードの分まで用意されていた。それどころか、屋敷で飼っている番犬にまで、生クリームたっぷりのケーキが与えられていた。私の分だけは残されていなかった。両親が顔を見合わせる。そして、私を貶め、美玲をかばう言葉が、ためらいもなく口から出てくる。「お前はもともと顔立ちがよくない。せいぜい体つきが人並みに見えるくらいだ。ケーキは糖質もカロリーも高いから、食べないほうがいい。美玲
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第4話

私が両親の選んだ婚約者から「ガラクタ」呼ばわりされているのに、彼らは私をかばうどころか、気まずそうに瑞城へ視線を向ける。「縁談を決めたときは、まだ生まれていなかったから、どんな顔なのかは分からなくてね……瑞城くん、安心してちょうだい。上村家とは代々の付き合いだもの、一番優秀で美しい娘を嫁がせるに決まっているわ。見た目の悪いほうは、たとえ一生家に置いて、嫁がせなくても、誰かに迷惑をかけるようなことだけはさせないから」両手をきつく握りしめ、私は何も言わなかった。言い訳などするつもりもない。こんな底意地の悪い婚約者など、こちらから願い下げだ。しかし、瑞城は私を放っておくつもりはないらしく、さらに厚かましく距離を詰めてきた。「おじさん、おばさん、それは言いすぎですよ。お二人の優れた遺伝子なら、どんな子が生まれたって、そこまでひどくなるはずがないでしょう。だから、俺も気になるんですよ。いったい、どんな顔をしているのか……せっかくですから、マスクとサングラスを外して、みんなに見せてもらえませんか?今日ここに集まっているのは、どこもそれなりの家柄ばかりです。もしこういう顔立ちでも気にしない人がいたら、いい縁談になるかもしれませんよ」両親は気まずそうに顔を見合わせる。相槌を打つことも、はっきり断ることもできない。実の親である二人でさえ、これまで私の顔をまともに見ようとしたことがなかった。だからこそ、この瞬間、二人も内心穏やかではない。私がマスクやサングラスを外して、自分たちが笑い者にされるのではないかと恐れているのだ。瑞城の威圧感に押されまいと、後ろへ下がる。「結婚するつもりがないのなら、私の顔など気にする必要はないはずです。私は帝都大学に合格したばかりですし、これからは学業や自分の仕事がありますから、結婚を急ぐつもりもありません。それに、これから誰と結婚するかを決めるのは私です。赤の他人に、お節介を焼かれる筋合いはありません」瑞城は、これまで人前でこけにされたことなどなかったのだろう。不穏な気配を漂わせ、目を細めた。周りの人たちも足を止め、ひそひそと話し始める。「我々のような家柄は、教育や環境に恵まれているが、それでも帝都大学に受かる子などほんの一握りだぞ」「聞いた話じゃ、あの子は小さい頃
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第5話

「バケモノだ!」誰かの悲鳴を合図に、人々が蜘蛛の子を散らすように後ずさりしていく。まるで得体の知れない化け物でも見るように私から距離を取る。水面に目を落とすと、長い髪がべったりと顔に張り付いている。被っていたキャップはどこかへ流されたらしい。濡れた大きな目だけが髪の隙間から覗いていて、なるほど、これでは薄気味悪いし無様だ。もがきながら、どうにか自力でプールから這い上がる。美玲がわざとらしく口元を押さえて声を上げる。「お姉ちゃん、ごめんなさい。大丈夫?ただ、お姉ちゃんの顔を少し整えてもらえたらって思っただけなの。これからは自信を持って、人前に出られるようになるかなって。まさかこんなことになって、皆を驚かせちゃって、本当にごめんね」私は美玲を一瞥しただけで、何も言わなかった。美玲は口では謝りながらも、その目元と口元には、隠しきれない笑みが浮かんでいる。一方、父と母は私の姿をまともに見ようともせず、露骨に嫌そうな顔で急かす。「さっさと着替えてきなさい!今日は美玲の誕生日だ。菅原家の恥を晒す気か!」夜風が濡れた体を撫でた。そこへ両親の冷ややかな声まで重なり、思わず身震いする。両腕で体を抱きしめ、足早にその場を後にした。背中に浴びせられる視線とともに、ひそひそとした声が追いかけてくる。美玲は笑いをこらえながら瑞城のそばに歩み寄った。「瑞城さん、驚かせてごめんなさい。お姉ちゃんがあんなに顔を見られるのを嫌がっていたのも無理ないわね。あんな顔を見たら、みんなが悪夢を見るんじゃないかって心配してたかもね」しかし、瑞城はそんな美玲の言葉を聞き流すように、淡々と口を開いた。「俺はよく見えなかった。お前は、ちゃんと彼女の顔が見えたのか?髪でほとんど顔が隠れて、確かに化け物みたいだった。でも、あの目は……すごく、きれいだ」それを聞き、美玲の笑顔が凍りつく。鋭い視線が、蛇のように私の背中へ絡みつく。自室で服を着替えながら、もうここにはいられないと決意する。どんなに息を潜めていようと、この家には私の居場所などないのだ。そこで私は、大学の先生にメールを送った。【少し事情がありまして、予定より早く入寮することはできますか?もちろん、ただで泊めていただくつもりはありません。何かお手伝い
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第6話

両親の顔に、驚きと気まずさが浮かんだ。けれど、監督はそんな二人の反応など気にも留めない。「君たちも知っているだろう。俺はこの映画を、もう何年もかけて準備してきた。なかなか撮影に入れなかったのも、ずっと心に描いてきたヒロインが現れるのを待っていたからだ」美玲が涙を浮かべながら見つめる中、父は意を決して口を開く。「監督、そのヒロインというのは、今売れっ子の若手女優なのかお聞きしてもよろしいでしょうか」監督は首を横に振る。その目には、憧れの光が宿っている。「芸能界の人間じゃない。どこにいるのかもわからない、ただの一般人だ。だが、初めて彼女を見た瞬間にわかった。俺のヒロインは、この子しかいないってな」そう言いながら、監督はスマホの画面をつけた。少し画質のあらい、何年も前に撮られたと思しき写真を、宝物のように待ち受けにしている。「この写真を見れば、俺が何を言っているのかわかるはずだ」スマホを受け取った両親は、その写真を見た瞬間、息をすることさえ忘れたように固まってしまった。「……こんな、生まれつき恵まれた美貌の持ち主が、本当にこの世にいるのでしょうか?」「なるほど……映画界で名を知られていて、これまで数え切れないほど美人を見てきた本郷監督が、何年も忘れられないのも無理はないですね」その間も、美玲は必死に甘えた声を出し、なんとか自分を売り込もうとしている。しかし、両親はもう、美玲のために一言たりとも口を挟むことができなかった。あまりにも残酷な差が、そこにはあったからだ。この写真を見るまでは、両親も美玲の素質と自分たちの人脈に九割方の確信を持っていたのだろう。しかし、その写真を目にした途端、両親は生まれて初めて、劣等感というものを味わった。これ以上食い下がろうとしても、どれだけ厚かましく振る舞ったところで、口にできる言葉など残っていない。美玲は悔しそうに唇を噛みしめ、画面の中の少女を憎々しげに睨みつける。「こんなの、どうせ合成でしょう。加工だってされてるに決まっています。本当にこんな人がいるなら、とっくに有名になってるはずですよ。どうして今まで一般人のままですか?監督、そんな子をいつまでも探していたら、きっと後悔しますよ!」だが、監督の視線は待ち受け画面に釘付けになったままだ。
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第7話

私が出てくるのを見た父の目に、わずかな嫌悪が浮かんだ。「出ていくのか?」「ええ、早めに学生寮へ入ることにしました」それを聞いても、両親はそれ以上何も聞こうとしない。「あ、そう。ならさっさと行きなさい。ちょうど美玲のメイクルームを空けられる」まるで私と一言でも多く話すことさえ、人生の無駄だと言わんばかりだ。美玲は堪えきれなくなったように顔を覆い、泣き声を上げる。「お姉ちゃん、わざと笑いに来たの?」父はそんな美玲の頭を、優しく撫でる。「気にするな。あんな醜い奴に、美玲を笑う資格なんてない。ほら、もう泣くな。今月の小遣いを20万円増やしてやるから、な?」母も美玲を抱きしめ、目に入れても痛くない娘をあやすように、甘い声をかける。「そうよ。自分の顔を人に見せることすらできないくせに、美玲のことをあれこれ言う資格なんてないわ。今日で出ていくんだから、今からお母さんと買い物に行こう。新しいお洋服も、アクセサリーも、化粧品も、家中いっぱいになるくらいたくさん買ってあげるからね」その瞬間、私は「さようなら」とさえ言うことができなかった。自分がこの家にとって、完全に余計な存在だったのだと思い知らされる。ただ黙って背を向け、その場を離れるしかない。……大学に着くと、担当の先生が私を部屋まで案内してくれた。水の入ったグラスを差し出しながら、先生は不思議そうに私の姿を眺める。「どうしてそこまで顔を隠してるんですか?」私は真面目に答える。「癖になっているんです。余計な騒ぎを起こしたくなくて」先生は思わず吹き出した。「何それ、まるで芸能人みたいなことを言いますね。そんなに隠さなくてもいいでしょう。ちょっと外して、顔を見せてくださいよ」そして、私の素顔を目にした瞬間、先生の笑顔が固まった。視線すら動かせないように、じっと私の顔を見つめている。「あなたの考えは正しかったみたいですね。外に出るときは、やっぱりそのまま隠しておいたほうがいいと思います。そうしないと、大学中の男子学生があなたを見に教職員宿舎まで押しかけてきますよ。夜もまともに眠れなくなるし、あなたのために見張りまでしなきゃならなくなりそうです」言い終えるや否や、先生はふと何かを思いついたように、ポンと手を打った。「よ
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第8話

先生は自分のことのように喜び、興奮した様子で聞いてきた。「どの事務所に入るか決めましたか?」私は首を横に振る。「どこにも行きません。興味がないので……」それを聞いた先生は、困ったように笑った。「ここはひとつ先生の顔を立てて、ちょっとだけ話を聞きに行ってもらえませんか?さっき学長から直々に電話がかかってきたんです。あなたが行ってくれないと、私はどう返事すればいいか……」仕方なく、私はスリッパのまま自分で外へ出て、さっさと話を終わらせることにした。寝間着にすっぴん、スリッパという格好で現れた瞬間、何十台ものワゴン車から、大勢の人が一斉に飛び出してきた。「嘘だろ……本人は動画で見るより、ずっときれいじゃないか!」「菅原さんはこの世界でトップに立つために生まれてきたんだ!うちに来てくれれば、必ずトップまで押し上げます!」あまりの勢いに、目まいがする。そのとき、不意に見覚えのある人影が人混みを掻き分けて近づいてくる。「上村エンターテインメントの代表だ。菅原さんが頷いてくれさえすれば、どこよりもいい条件を提示する」瑞城が、ようやく私を正面から見た。けれど、私は思わず冷ややかな視線を返してしまう。「私はまだ大学に入ったばかりです。せっかく帝都大学に合格したのに、どうして真面目に勉強もせず、そちらの事務所に行かなきゃならないんですか?」瑞城が虚を突かれたように言葉を失っていると、隣にいた秘書が小声で耳打ちした。「菅原さんは、今年の帝都大学の首席合格者です」その言葉に、周囲の大人たちの目がさらにぎらついた。「ルックスも、声も、頭脳も、学歴も、すべてがトップクラスだぞ」「彼女と契約できれば、金脈を掘り当てたようなものだぞ!」皆が一斉に私のもとへ押し寄せようとしたそのとき、本郷監督の威厳に満ちた声が雷鳴のように響き渡る。「待て。本人に決めさせろ」映画界の重鎮が自ら姿を現したのを見て、スカウトマンたちは自然と道をあけた。監督は興奮を抑えきれない様子で、まっすぐ私の前まで歩いてくる。「やっと見つけた。ずっと君を探していたんだ。俺のヒロイン。安心しろ。今は学業を優先したいというなら、無理にとは言わない。何しろ、俺はもう5年も君を待っているんだ。あと4年くらい、どうってことない。俺にと
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第9話

父は失望したようにため息をつき、ぼそりと呟く。「少しは役に立つかと思ったんだがな。あの子を見つけられたら、俺にとっても手柄になったはずだ。今後の仕事だって倍になったかもしれないのに」母も悔しそうな顔をしている。「絶対にあの子を見つけて、私の弟子にするわ。私はもう若くないけれど、あの子なら間違いなく全国、いや世界中で大スターになれる。私の誇りを受け継いでくれるはずよ」そのとき、父のスマホが鳴った。電話に出た途端、父の顔色がさっと変わる。「すがわら、ふうか?あの子の名前が、すがわらふうかだって!?」胸がざわついた。気づけば、父と母は揃って私の目の前まで来ていた。「おい、たらい。お前が知らないならそれでいい。ただ、その名前をどこかで聞いたことはないか?」口元がわずかに引きつる。まさか今まで、両親は私の本当の名前すら知らなかったのだ。二人にとって、私はいつだって、好き勝手にたらい回しにされる「たらい」にすぎない。「お二人が知らないなら、私に分かるはずもないでしょう」それを聞いて、なぜか美玲がほっとしたように胸をなでおろした。「お姉ちゃん、私てっきり、勉強くらいは得意なのかと思ってた。いざってときには役に立って、人探しくらい手伝えるのかなって。まさか、ただの役に立たないガリ勉だったなんてね。だったらお姉ちゃんも、少しくらい見た目に気を遣ったら?女の子にとって、一番大きな武器はやっぱり美貌だもの。見た目が悪いと、生きていくのも大変よ?でも、勉強ができるんだから、将来はきっと役に立てるよね」美玲の言葉を聞き終えると、両親は私を一瞥しただけで、背を向け、そのまま人探しへ戻っていく。彼らが血眼になって探している「菅原風歌」本人が、すぐ後ろで彼らを見送っていることなど、知る由もない。両親をやり過ごしたのも束の間、今度は瑞城が大学に押しかけてきた。メッセージを何度も送りつけ、電話までかけてくる。「今、大学の正門前にいるけど、一緒に食事でもしないか?上村エンターテインメントに入りたくないなら、それでも構わない。ただ、君と友達になりたいだけだ。駄目かな?」迷うことなく冷たく突き放した。「そちらの事務所には入りませんし、友達になるつもりもありません」まさか、あれほど人を見下してい
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第10話

美玲は勝ち誇ったようにこちらをちらりと見た。「お姉ちゃん、自分の家に監視カメラなんてつける人いないよ。お姉ちゃんが悪いことをしなかったら、私たちだって身内に泥棒がいるなんて、思いもしなかったわ!」美玲がいい気になって私に濡れ衣を着せようとしているそのとき、使用人が突然、ぽんと手を打って声を上げる。「あっ、そういえば、監視カメラならあります!奥様に言われて、急きょ取りつけたんです。田舎育ちのお嬢様が、もし何かよからぬことをしでかしたら困るからって……廊下や階段の踊り場にも小型カメラを仕掛けて、少しでも怪しい動きがあれば、すぐに屋敷から出すようにと言われていました」母が監視カメラをこっそり設置させたのは、もともと私を監視するためだった。それが思いがけず、私の無実を証明することになる。美玲の顔から、さっと血の気が引いた。「もうネックレスは見つかったんだから、監視カメラまで確認しなくてもいいんじゃない?家族なんだし、これ以上追求するのもお姉ちゃんに悪いから……」私は振り返り、警察官に向かって言う。「見るかどうかを、彼女が決めることではありません。私は泥棒扱いされ、濡れ衣を着せられた被害者です。監視カメラの映像をしっかり確認して、私の無実を証明してください」結局、映像には、美玲が昨夜こっそり自分でネックレスを私のマットレスの下に隠す様子がはっきりと映っていた。そして今日になって見つからないふりをし、わざと通報して私に罪をなすりつけたのだ。警察官は険しい顔で美玲を振り返る。「まだ若いんだから、これからは勉強や、人としてどうあるべきかを考えることに時間を使いなさい。実の姉を陥れるなんて、あまりにもひどすぎる!」両親はひどく気まずそうな顔をしていたが、この時ばかりは美玲をかばおうとしなかった。警察官は申し訳なさそうに私を見る。「すみません、菅原風歌さん。被害総額が大きかったから、大学からそのままこちらへ来てもらって、事情を確認することになりました」その言葉を聞いた瞬間、その場にいた全員の体が強張った。「菅原風歌?今、菅原風歌って言ったのか!?あの帝都大学の菅原風歌だと!?」父が何度も問いただしている間に、母はふらつく足取りで慌てて物置へと駆け込んでいた。そして、埃をかぶった未開封
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