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第3話

Author: 富永勉
遠慮しようと口を開きかけたとき、使用人が足早に入ってくる。

「周防社長がお見えになりました。ご自宅で造られたワインを持ってきてくださったそうです。ご一緒にいかがかとおっしゃっています」

父は途端に愛想のいい笑みを浮かべ、立ち上がって出迎えようとする。

何かを思い出したように、ふいにこちらを振り向く。

「大事な客が来ている。昼は自分の部屋で食べなさい。

あとで使用人に食事を運ばせる。食べ終わったら、食器は部屋の前に置いておけばいい。

用がないなら、下には降りてくるな。どうしてこんな醜い娘が生まれたのか、いちいち説明する羽目になるからな」

華やかなドレスに身を包んだ美玲が、気位の高い白鳥のように、つんと顎を上げて私を見下ろしてくる。

「お姉ちゃん、気にしないでね。

お父さんもお母さんも、芸能人なんだから、プライベートを守るためにも、余計な噂はできるだけ避けたいの。

お昼を食べたら、ゆっくり部屋で休んでいて。下には降りてきちゃ駄目よ。

晩ご飯も、もし声がかからなかったら、そのまま部屋で食べてね」

両親は何も言わず、美玲の言葉を暗黙のうちに受け入れている。

両親も美玲も、眩しいほどに輝き、世間の羨望を集めている。

その中で、私だけが世間から隠されるべき「菅原家の汚点」だ。

両親の有無を言わせない視線を受けながら、淡々と口を開く。

「これからは、ずっと自分の部屋で食事をします」

両親は満足そうに頷いた。

「顔はともかく、身の程はわきまえているようだな」

その言葉通りに部屋にこもっていた。翌日、使用人が部屋のドアをノックした。

「お誕生日パーティーも、もうすぐケーキを切る時間だ。

美玲お嬢様が、下へ降りて一緒にケーキを食べてほしいとおっしゃっているよ」

しかし、言われた通りに階下へ降りたときには、すでにケーキはみんなに配られていた。

使用人やボディーガードの分まで用意されていた。それどころか、屋敷で飼っている番犬にまで、生クリームたっぷりのケーキが与えられていた。

私の分だけは残されていなかった。

両親が顔を見合わせる。

そして、私を貶め、美玲をかばう言葉が、ためらいもなく口から出てくる。

「お前はもともと顔立ちがよくない。せいぜい体つきが人並みに見えるくらいだ。

ケーキは糖質もカロリーも高いから、食べないほうがいい。美玲は、お前のためを思ってこうしたんだ」

何も言わず、再び自分の部屋へ戻ろうとする。

そのとき、美玲が親しげに私の手を取り、一人の気品のある男の隣まで連れていく。

「瑞城さん、紹介するね。

この人が私のお姉ちゃん。親同士が決めた瑞城さんの婚約者よ」

上村瑞城(うえむら みずき)は目を細め、私をじっと見つめた。

「夜なのに、なんでマスクとキャップなんか被ってるんだ?

美玲が紹介してくれなかったら、パパラッチかと思ったぞ」

美玲は、自分のものだと言わんばかりに瑞城の腕に絡みつき、声を上げて笑った。

「瑞城さんったら、意地悪ね。

お姉ちゃんはただでさえ自分の見た目にコンプレックスを抱えてるんだから。

婚約者にそんなこと言われたら、ショックでもう部屋から出られなくなっちゃうよ」

瑞城は口元に冷ややかな笑みを浮かべた。

「婚約者?

いくら親同士が決めた縁談だからといって、俺はガラクタまで引き取るつもりはないな。

俺が妻にするなら、少なくとも美玲みたいに、容姿も頭も申し分のないお嬢様じゃなきゃな」

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