All Chapters of オオカミさんのカフェ!: Chapter 1 - Chapter 10

10 Chapters

第一話 バレちゃった!

 爽やかな森の木陰。夏は、こうやって泉で水遊びするのが楽しい。裾を捲って、膝まで水に浸かる。「気持ちいいね、お姉ちゃん!」「そうねえ。涼しくて気持ちいいわ」 くすくす笑い合う私たち。「じ……人狼!?」 背後から、突如悲鳴が上がった。 振り返ると、猟師のタルトさんが、猟銃の銃口をこちらに向けていた。彼の愛犬が、わんわん吠える。「待って! 私たちです、私たち! 銃を下ろしてください!」 獣人の姿を、お姉ちゃんとともに解いて、人の姿になる。 風下から近づかれたから、気づかなかった……。さすが、プロ。 私たちは、人里で正体を隠して暮らす、人狼の姉妹。これは、大変なことになりました……。 ◆ ◆ ◆「……というわけでして」 タルトさんに銃を突きつけられながら、村長さんの家に連れられてきてしまいました。「それ、下ろしてくださいよぉ~」 まだ、銃口は向いたまま。手を後ろに組んで、ひざまずいている私たち。「えーと、本当に人狼なのかな?」「はい……」 小柄な村長さんの声に応え、獣人姿に変化。ざわつく村人たち。「こりゃ驚いた」 その割には、割と冷静に私たちを見ている村長さん。村の人々はざわつきが大きくなったけど。「私たちを欺いていたのですね! 親友だと思っていたのに……」 血気はやる村長の孫娘、シャルちゃんを、村長さんが手で制する。シャルは愛称で、シャルロットがちゃんとした名前。「これ、シャル。そういう言い方をするものではない。たとえばこの村で、今までこれといった問題が起こったかね?」「それは……」 先程の勢いが失せる彼女。村人たちも、しんとなる。自分たちの、日頃の行いに感謝……。「タルトも、銃を下ろしなさい」「はあ」 ほっ。銃を下ろしてくれた。「それに何より、村で数少ない憩いの場がなくなったら、困るじゃないか」 お姉ちゃんは、この村唯一の喫茶店を経営している。小さな村だから、あまり繁盛しているとはいえないけれど、二人食べていくぐらいの売上はある。「というわけで、これにて解決!」 村長さんがポン! と手を打ち、お開き宣言。毒気を抜かれた人々が、ぞろぞろと去っていく。 タルトさんも、ため息一つついて、愛犬と帰っていきました。 シャルちゃんも、所在なさげだ。「わたしたちも、帰りましょ」「そうだね、お姉ち
last updateLast Updated : 2026-09-05
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第二話 オオカミさんのカフェ!

「みんな、遠巻きに見てるねー」 お昼前、カフェの開店準備中。流石に二日も休んだら、生活できないからね。 まあ、あの後で、お客さんが来てくれるかわからないけれど……。「お姉ちゃん、テーブルの準備整ったよー」「厨房のほうも、OK!」「じゃあ、開店してきまーす」 表の札を、「営業中」にして、おすすめメニューの立て札を置く。 今日は、合鴨のサンドイッチがおすすめ! 一見、人気がないように見えるけど、匂いでわかっちゃうんだなあ、これが。 とりあえず、「本日営業再開でーす!」と、声を上げる。 あとは、あれをやって、お客さんが来るのを待つしかないね。人はいるんだから。 ◆ ◆ ◆ もうすぐ正午。う~ん、誰も来ない……。こりゃまいったね。 からんからん。 扉が開かれる!「いらっしゃいませ!」「あや!?」 びっくりして、変な声を出すタルトさん。 だって私たち、狼耳に、狼しっぽ出しているんですもの。半獣人状態とでもいったらいいのかな。「はー……。また、思い切ったねえ!」「正体、バレちゃいましたからね。開き直ってこうした方がいいって、お姉ちゃんの提案なんです」 きれいで賢いお姉ちゃん!「ご注文が決まった頃に、お伺いしますね」「いや、その前に」 百八十度に折れそうなぐらいの勢いで、突如タルトさんが頭を下げる。私たち、びっくり!!「どうしたんです、急に! 頭を上げてください!」「そうもいかない。昨日は、君たちに酷いことをした。どうしても、お詫びがしたい。銃口を突きつけられて、さぞ、怖かったろうと思ってね……」 やあ、困った。怖かったのは事実だけど、こうも下手に出られると。「そんな。わたしたちのような人外を見たら、ああするのも無理はありません」「そうですよ! 頭を上げてください!」 お姉ちゃんも、話に入ってきて、二人で説得。「それでは、俺の気がすまない。なにか、償いをさせてもらえないだろうか」「いえいえ! お気持ちだけで十分です!」「いやいや、そうはいかない!」 と、なんだか変な押し問答になってしまい、一割引きでジビエを卸してもらうという条件で、なんとか手打ちに。「本当に、すまなかった」「お気遣い、ありがとうございます。お気持ちは、十分に伝わりましたから」 彼、色んな意
last updateLast Updated : 2026-09-05
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第三話 史上初の事態で大変!

「どっひぇ~……!」 思わず、変な声を出してしまう。 いやもう、店内からでもはっきりわかる、長蛇の列!「すごいことになってるよ、お姉ちゃん」「ほんとにねえ。どういうことかしら?」 危害を加えてきそうには見えないし。 とりあえず、開店時間になったので、「営業中」の札をかけ、おすすめメニュー、BLTサンドの看板を置く。 と! わーっと、人が押し寄せてくる!「おー! ほんとに狼耳にしっぽだ!」「おねーちゃん、可愛い!」「こりゃたまげたねえ!」 うわ~。私たち、聴覚いいからあんまり騒がないで~。「落ち着いてください! なんの騒ぎですか!」「いやね、噂の狼耳としっぽ姿を一目見ようと。あ、もちろん、お茶もしていくよ」 はあ。お客さんじゃ、断れないなあ。小さな村だから、噂が広まるのは、あっという間だね。でも、この人数……百人はいそう……。うちのお店、そんなに入れられないよ。「とりあえず、順番に入ってくださーい!」 というわけで、営業開始! いやもう、忙しい、忙しい! うちのお店始まって以来の、大繁盛ぶり! BLTサンド以外にも色々あるけど、こんなにお客さんが来るとはお姉ちゃんも思ってなかったろうから、あっという間に品切れ。お茶も切らしてしまいました。「すみませーん! もう、品切れでーす! 本日、閉店でーす!」 ええ~! と不満そうな声が上がる。「申し訳ありませ~ん。明日は、もっと仕入れておきますので~」 お姉ちゃんも、頭を下げる。むう、お姉ちゃんが頭下げることないのに。私が代わりに、いくらでも下げるよ! ともかく、諦めの悪い人が、耳と尻尾を一目見ようと、寄ってくる。まあ、こっちは減るもんじゃないし、いいけど……。 しばらくすると、徐々に人がはけて、誰もいなくなりました。「やれやれだね。お姉ちゃんの作戦、お見事!」「ここまで、効果てきめんだとは思わなかったわね。早く終わっちゃったから、街へ買い出しにでかけましょうか」「街へ!? 行く行く!」 うわあ! 新しい服欲しい! きれいな私を、お姉ちゃんに見てもらうんだ! あ、もちろん、新しい服のお姉ちゃんも見たい!「じゃ、行きましょ」「はーい」 軽トラックに乗り込む私たち。「しゅっぱーつ!」「しゅっぱーつ!」 お姉ちゃんの声に続ける。お姉ちゃんの運転で、一路街を目指すの
last updateLast Updated : 2026-09-05
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第四話 信仰姉妹

 今日は、教会でミサ。 神様の教えを拝聴。 しかし、ここで疑問が。私たちのような人外を、神様はどう思っていらっしゃるのか。 そんな疑問を、懺悔室で告解してみることにしました。「神父様。すでにご存じのように、私たちは人狼です。私たちのような存在を、神様はお赦しになられるでしょうか」「心配することはありません。主は、信ずる者を見捨てません。どうか、その篤い信仰心を、持ち続けてください」「ありがとうございます!」 ほっと一息。 続いて、お姉ちゃんにバトンタッチ。 お姉ちゃんも、同じお話を聞かされたようで、安堵の表情。「神様はお認めになられるって」「良かったね、お姉ちゃん!」 今日は定休日なので、村長さんの家へ。「シャールロットちゃーん! あーそびーましょ!」「あら、妙に機嫌がいいわね」「実はね……」 教会での出来事を話す。「それは良かったわねえ。でも、あなたたちの場合、その重度のシスコンぶりをお赦しになられるか、仰いだ方が良かったんじゃない?」「へ? だってねえ? 普通の姉妹愛だよねえ、お姉ちゃん」「そうよねえ」 二人で、首を傾げる。「ううん……自覚なし。まあ、いいけれども。ところで、遊ぶといっても、何をして遊ぶの?」「ショコラちゃんも誘って、玉蹴りとかどう?」「あら、いいじゃない!」 ショコラちゃんは、シャルロットちゃんの幼馴染で親友! 彼女も、ノリノリです! というわけで、三人でショコラちゃんの家へ~。  ◆ ◆ ◆ 「ショーコーラーちゃーん、あーそびーましょー!」 三人で、呼びかける。「こんにちは~。いいよ~暇してたから~」 茶髪で三つ編みおさげの、のんびりさんが出てきました。「というわけで、初手私ね!」 四人で輪になり、お姉ちゃんにパス。「シャルロットちゃん!」 見事にパス連携。 こんな感じで、ひたすら玉蹴り。こうやって、無心にボール遊びするのも、楽しいね!「ふう、もう夕方だね」 気づけば、随分遊んでいたみたいで。「楽しかったわ。また誘ってね」「うちも~」 二人と別れて、我が家へ。「お風呂とご飯、どっち先にする?」「ご飯! いっぱい遊んだから、もうお腹ペコペコ!」「ふふ。じゃあ、エクちゃんのために、腕によりをかけよっかな」 今日は、タルトさんから仕入れた兎で、なにか作ってくれ
last updateLast Updated : 2026-09-09
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第五話 応援するよ!

「ねえ、ショコラちゃん」 他のお客様もいなくなって、ショコラちゃんがぽつねんと、ちびちびお茶を飲んでいたので、話しかけてみる。「あっ、ごめん! お茶一杯でこんなに粘ったら迷惑だよね! えーと、カモミールティーのおかわりと、ジンジャークッキーを」「それはありがたいけど、何か困り事なら相談乗るよ?」「うーん……エクちゃんたちならいいかなあ……。うち、今日、教会に行ったのね。そこでね……」 言いよどむ彼女。 お姉ちゃんが、お茶とクッキーを持ってきてくれる。「女の子に恋しちゃったって告解したら、それは誤った気持ちですって、否定されちゃって」「ええー! いや、色々あれだけど、女の子にガチ恋愛!?」 元気なく、こくりと頷くショコラちゃん。「で、あの温厚な神父様が否定? ふむう……」 解せぬ。「ちょっと私、直談判してきていい!?」 腕まくり!「待って、大ごとにしないで~! うち、どうしたらいいんだろ……」 お茶に手もつけずに、しゅんとする彼女。 私たちにとって、神父様の言葉は神様の言葉。でも、一人の女の子をこんなにも傷つけるのが、本当に神様の思し召しなのだろうか。 神父様を疑いたくない! でも、ショコラちゃんの気持ちも尊重したい! どうすればいいのー!? お姉ちゃんを、ちらりと見ると、やはり同様に困ってるようだった。「とりあえず、私はショコラちゃんの恋、応援するよ!」「ありがとう」 元気のない笑顔が、少し切ない。「それ、奢りでいいわよ。食べて飲んで、元気取り戻してね」「ありがとうございます」 お姉ちゃんの厚意に押されてか、やっと、お茶とクッキーに手を付けてくれた。 それらを食べ終わると、彼女が再度お礼を述べて、帰って行きます。 私たち姉妹は、悶々とした気持ちを抱えたまま、どうにも寝心地の悪い夜を過ごしました。  ◆ ◆ ◆  翌朝、お姉ちゃんと連れ立って、教会へ! ショコラちゃんは大ごとにしないでほしいと言うけれど、やっぱり黙っていられない! それに、神父様には強い守秘義務がある。告解の内容は、たとえ「人殺しました」みたいなものでも、絶対に口外してはいけないのだ。 だから、告解である限りは、大事にはならない。「おはようございます!」 勢いよく、教会の扉を開ける。「これは、エクレールさん、マドレーヌさ
last updateLast Updated : 2026-09-09
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第六話 私にできること

いらっしゃいませ」「カモミールティーと、ジンジャークッキーをお願い」「かしこまりました」 今日も、やっぱり元気ないな。「ショコラちゃん。あのね。私、ショコラちゃんの気持ちがおかしいだなんて、思わないよ。愛こそが、神様の教えだもの」 ほかにお客さんがいないので、ずばり切り込む。「そう……かな?」 力強く、何度も頷く。「私に手伝えそうなことがあったら、何でも言って!」「おまちどう様。わたしも、微力ながらお手伝いするわ」「ありがとう」 はにかむ彼女。少し、元気が戻ったみたいで良かった。「今日も、それ奢りでいいわよ」「さすがにダメだよ、二度もそんなの! ちゃんと払うからね」 有無を言わさず、お代を出すショコラちゃん。こういうところ、しっかりしてるよね。元気が出てきた証拠かな。うんうん。 彼女は、お茶とクッキーをゆっくり味わい、帰途につくのでした。  ◆ ◆ ◆ 「ショコラちゃんの恋、上手くいくといいね」「うん」 寝室で、おやすみのキス。同性愛に抵抗がないの、私たちがこんな感じだからかな。ほかの村人はどうなんだろう? 女同士って、ハグとかするとお互い柔らかくて気持ちいいよね。 今日も狼モードで、いい感じに安眠。すやあ……。  ◆ ◆ ◆  今日もお仕事に励んでいると、夕刻にショコラちゃんとシャルロットちゃんがやって来ました。「いらっしゃいませー」「うちは、いつもの。シャルロットちゃん、何にする?」「私は、カフェオレと、ドーナッツにしようかしら」 オーダーをもらい、お茶が入るまで、なんとなしに二人の様子を見る。 楽しげに談笑する彼女ら。特に、ショコラちゃんからは、喜びが溢れ出ている感じ。 そっか、そうだったんだね。好きになった相手。 上手くいくといいね! 応援するからね!  ◆ ◆ ◆ 「お姉ちゃん、気づいた?」「ん?」 食卓の向かいで、応えるお姉ちゃん。 今日は、鹿肉のステーキ! もちろん私は、三人前!「ショコラちゃんが、好きになった相手」「うん。シャルロットちゃんでしょ?」「だよね、だよね! 上手くいくといいね!」 鹿肉も美味しいし! ご飯が美味しいと、いい方向に進む気がするね!「そうね。私たちにできることがあったら、相談してほしいわね」「なんならさ! 私たちから仕
last updateLast Updated : 2026-09-09
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第七話 どうしてこうなった!?

 どうしてこうなったの……。 戻ってくると、シャルロットちゃんがそっぽを向いてツン! 一方、ショコラちゃんはえらく落ち込んで泣きそうになってるし。「ちょっと、何があったの!?」 尋常ならざる様子に驚き、思わず狼耳としっぽがぴょっこり出てしまったので、慌てて人モードに戻る。「うちが悪いのぉ……」 そう言うと、こらえていたものが吹き出してしまったのか、わんわん泣き出してしまう。 これではなんでこうなったか聞き出せないだろうと、シャルロットちゃんに水を向けた。「説明してよ、わけわかんないよ。あんなに楽しそうだったのに」「……ショコラが、街に行かないで、なんて言うからいけないのよ」 お姉ちゃんと顔を見合わせ、揃って首を傾げる。「えーと……意味分かんないよ、それじゃ。もっと、順を追って説明して」 シャルロットちゃんの渋々とした説明によると、将来の夢についての語り合いになり、「村で一緒に暮らし続けたい」と言うショコラちゃんに対し、「私は、都会へ出るの!」と言い争い……というか、彼女の性格とこの状況だから、きっと一方的なきつい言い方をしたのだろう。そんなことがわかった。「シャルロットちゃん、この村、嫌いなの?」「嫌いではないけれど……私は、都会で華やかな暮らしがしたいの! 村長は兄様が継げばいいのだし!」 ふむう……。「ショコラちゃん、シャルロットちゃんと一緒に都会に出るっていう選択肢はない?」 背中を擦って、慰めながら問うと、少し落ち着いたのか、とつとつと答える。「うち、この村が好きだし、うちが街に行っちゃうと、家業を継ぐ人がいなくなっちゃうから……」 困った。二律背反。「とりあえず、謝った方がいいよ、シャルロットっちゃん」 まだぐずついているショコラちゃんを困ったように見て、「悪かったわ。きつく言い過ぎた」と、頭を下げる。「ショコラちゃんも、とりあえず、この場はこれでいい?」 まだ目尻を拭いながら、「うん」と返す。「とりあえず、お茶でも飲んで、落ち着きましょう」 お茶を差し出すと、二人が飲んでくれる。やっぱり、こういうときはとりあえず一服だよね! 鳥の声を聴きながら無言で過ごしていると、不意にお腹の音が鳴ってしまう。時計を見ると、もう一時だ。「お腹空いちゃった! ご飯にしましょ!」 ぽん、と手
last updateLast Updated : 2026-09-09
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第八話 お姉ちゃんといっしょ!

 今日も、お姉ちゃんとお仕事を終えて、ご飯をもぐもぐ。「えへへ~」「どうしたの? 食事中に、にやにやして」「こうして、お姉ちゃんとずっと一緒なの、嬉しいなあって思って」 そう言って、さらに顔を緩ませる。 思えば私、何をするにもお姉ちゃんと一緒だったなあ。  ◆ ◆ ◆ 「おつかい、いってきまーす」「まってー! エクもいく~!」 ちっちゃい頃、お買い物に行くおねえちゃんにちょこちょこついて行ったり。「おねーちゃん、いっしょのベッドでねよー!」「いいよー」 もちろん、寝るときも一緒。結局、お父さんたちも諦めて、ダブルベッドにしてくれたのよね。「おねーちゃんと、おなじかみがたにしてみたの! おそろいだね!」 今でこそ違う髪型だけど、服も髪も同じにしてみたり。「おトイレ、おねーちゃんといっしょにはいる!」「それはちょっと……」 こんな事を言って、困らせたこともあったっけ。「おねーちゃん、おふろはいろ!」 もちろん、お風呂も小さい時からずっと一緒。「おお~~~~~~ん……!」「おお~~~~~~ん……!」 お父さんたちや村の人には内緒で、狼姿で丘の上で満月に吠えてみたり。 遠くから、遠吠えが帰ってきたのは驚いたな。狼なのか、お仲間だったのか。 帰ったら、こってりしかられたっけ。私が言い出したことなのに、お姉ちゃん必死でかばってくれて、かばい合いになった結果、お父さんたちが逆に折れちゃったね。 お姉ちゃんが学校に上がると、私も行きたいと駄々をこねて、さんざん三人を困らせたり。 この村は分校だから、七年間ずーっとお姉ちゃんと一緒だったのはいいけれど、お姉ちゃんが卒業しちゃうと、今度は私のやる気がだだ下がりになっちゃって。 私とお姉ちゃんが十八歳と二十歳になって間もない頃、神様が意地悪にもお父さんとお母さんを連れて行ってしまった。 とてもとても悲しかったし、これからどうしようって悩んだけど、お姉ちゃんが「力を合わせて生きていきましょう。エクちゃんは、私が守ってあげるから」と言ってくれて、随分持ち直したっけ。 二人が遺してくれたこのカフェが、四人の思い出。この店を守っていこうと、お姉ちゃんと誓いあったのです。  ◆ ◆ ◆ (お姉ちゃん、ほんときれいだなあ……) 入浴中、お姉ちゃんの裸体に見惚れる。 お姉ちゃ
last updateLast Updated : 2026-09-09
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最終話 リュミエール、再始動!

 ちくたくちくたく。 うう……。針の音が気になって、眠れない……。 久しぶりに、この部屋の時計に電池入れたけど、こんなに針の音ってうるさかったっけ。 ちくたくちくたく。 う~~~! 眠れない! 電池抜いちゃおう! ……。今度は、静かすぎる。ううう。お姉ちゃんがそばにいないだけで、こんなに寝付きが悪くなるなんて。お姉ちゃんの匂いがしないよう……。 なんだっけ、羊数えるといいのよね。 ひつじが一匹……。羊が二匹……。ラムステーキが三個……。 お腹空いた。きちんと晩ご飯、食べたのに。 台所行こう。 作るなら、サンドイッチかな。 ピーナッツバター塗って……。いただきます。 お姉ちゃんのいない食卓は、寂しいな。 ごちそうさま。 また、歯磨きしなきゃ……。 お姉ちゃん、どんな様子かな? そっと、寝室のドアを開ける。「こほっ」 少し咳き込んでるけど、お薬が効いたのかな。今朝ほど酷くないや。 いつまでもこうして見ていたいけど、私もいい加減寝なきゃな。 ……寝れるといいけど。  ◆ ◆ ◆  あー、少しは眠れたのかな。寝不足気味だけど。今、何時……?「えっ!?」 十一時!? 完全に寝坊した! ……って、時計の電池、抜いてたんだった。 雀が鳴いてるから、まだ早朝? お姉ちゃんは……。 まだ寝てる。 咳も、さらに若干軽くなった? とりあえず、お姉ちゃんが起きたときのために、オートミールを作っておこう。 ! 足音!「お姉ちゃん、おはよう!」「おは、こほ、よう。トイレ行くね」 元気ないなあ。当たり前だけど。「お姉ちゃん、一緒にご飯食べよ!」 薬を飲みに来たお姉ちゃんに、提案。「ダメよ。ほん、まだうつしちゃうから。これ、温めたら寝室で食べるね」「ああ、私が持ってくから、お姉ちゃんは寝てて」「ありがとう。じゃあ、横になってるね」 一緒に食事できないの、切ないなあ。 ともかくも、オートミールのミルク粥を、お姉ちゃんの下へ。「ありがとう」 もそもそと食べる、お姉ちゃん。あんまり美味しいもんでもないだろうけど、病人食といったら、これだからね。「エクちゃん。うつすといけないから、出てたほうがいいよ」 うう……。食事姿を見ることも叶わず。「何かあったら、呼んでね?」「うん、ありがとう」
last updateLast Updated : 2026-09-09
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EX 幸せな日々

 本日も、まったりと営業中。レジ打ちしてると、シャルちゃんとショコラちゃんが、入店してきました。「いらっしゃいませー!」 お姉ちゃんと一緒に、ご挨拶。 レジを打ち終わると、お客さんが帰っていき、四人きりの空間になります。「二人共、いつもの?」 さっそく、オーダーを取りに行く。「うん」「りょうかーい。なんか、ずいぶん幸せオーラが漂ってるね? 匂いでも、すっごく感じる」 お姉ちゃんにオーダーを伝え、ほかにお客さんがいないのをいいことに、おしゃべり。 すると彼女ら、なにやらもじもじとして、照れくさそう。「ショコラから言ってよ」「えー? 恥ずかしいよ~」「じゃあ、一緒に」 何を言い淀んでいるのだろう? 狼耳を、ピンと立てる。「私たち、正式にお付き合いすることにしましたの」「うちら、正式にお付き合い始めたんよ」 頬を赤らめ、うつむいてそう言う二人。「え! つまりそれって……」「うん、恋人同士。うち、もう、嬉しくって……。で、さっそくデートってわけ」 ショコラちゃん、顔が真っ赤だ。「うわ、うわ、おめでとー! 今日はおごりでいいよ! ね、お姉ちゃん?」「ええ。おめでとう」「ふふ、ありがとう」 はにかむショコラちゃん。「ちなみに、この話、他の人には?」 今度は、寂しそうに首を横に振る二人。「神様は、お認めになっていない関係だから……。みんなに話すの、怖くて」「そんなわけで、しばらくエクレールさんとマドレーヌさん以外には、内緒の関係にしようかと」 以前、神父様に猛抗議したことを思い出す。「そっかー。いつか、みんなに言える日が来るといいね」「そうですわね。そう願いたいものです」 お茶が入ったので、クッキーとともに、二人のもとへ運ぶ。「付き合ったきっかけは、なんだったの?」「んー……。なんか、話の流れでね。自然と」 ほほー。「あ、あまり幸せカップルの会話にお邪魔するの、よくないかな。何か用があれば、呼んでね」「気遣い、ありがとう」 お姉ちゃんとともに、それは幸せな表情で会話する二人を、こちらも笑顔で眺める。 ショコラちゃん、恋が叶ってよかったね!  ◆ ◆ ◆ 「お姉ちゃん、あとで、宝石店行っていい?」 街での買い出しの最中、提案する。「宝石? いいけど」「やった! お姉ちゃん、大好き!
last updateLast Updated : 2026-09-09
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