LOGINある村で喫茶店を営んでいた、人狼姉妹。しかし、突然正体がバレちゃった!? 人狼姉妹と、人々との交流を描いた、ほのぼの日常作品です。
View More爽やかな森の木陰。夏は、こうやって泉で水遊びするのが楽しい。裾を捲って、膝まで水に浸かる。
「気持ちいいね、お姉ちゃん!」
「そうねえ。涼しくて気持ちいいわ」
くすくす笑い合う私たち。
「じ……人狼!?」
背後から、突如悲鳴が上がった。
振り返ると、猟師のタルトさんが、猟銃の銃口をこちらに向けていた。彼の愛犬が、わんわん吠える。
「待って! 私たちです、私たち! 銃を下ろしてください!」
獣人の姿を、お姉ちゃんとともに解いて、人の姿になる。
風下から近づかれたから、気づかなかった……。さすが、プロ。
私たちは、人里で正体を隠して暮らす、人狼の姉妹。これは、大変なことになりました……。
◆ ◆ ◆ 「……というわけでして」タルトさんに銃を突きつけられながら、村長さんの家に連れられてきてしまいました。
「それ、下ろしてくださいよぉ~」
まだ、銃口は向いたまま。手を後ろに組んで、ひざまずいている私たち。
「えーと、本当に人狼なのかな?」
「はい……」
小柄な村長さんの声に応え、獣人姿に変化。ざわつく村人たち。
「こりゃ驚いた」
その割には、割と冷静に私たちを見ている村長さん。村の人々はざわつきが大きくなったけど。
「
血気はやる村長の孫娘、シャルちゃんを、村長さんが手で制する。シャルは愛称で、シャルロットがちゃんとした名前。
「これ、シャル。そういう言い方をするものではない。たとえばこの村で、今までこれといった問題が起こったかね?」
「それは……」
先程の勢いが失せる彼女。村人たちも、しんとなる。自分たちの、日頃の行いに感謝……。
「タルトも、銃を下ろしなさい」
「はあ」
ほっ。銃を下ろしてくれた。
「それに何より、村で数少ない憩いの場がなくなったら、困るじゃないか」
お姉ちゃんは、この村唯一の喫茶店を経営している。小さな村だから、あまり繁盛しているとはいえないけれど、二人食べていくぐらいの売上はある。
「というわけで、これにて解決!」
村長さんがポン! と手を打ち、お開き宣言。毒気を抜かれた人々が、ぞろぞろと去っていく。
タルトさんも、ため息一つついて、愛犬と帰っていきました。
シャルちゃんも、所在なさげだ。
「わたしたちも、帰りましょ」
「そうだね、お姉ちゃん」
こうして、私たちも家路につくのでした。
◆ ◆ ◆ 「今日は、大変だったねー。これからどうなるんだろ、私たち」本日、臨時休業。あんな事があったばかりだからね。
お姉ちゃんと一緒に、遅い昼ごはんをもぐもぐ。お腹がぺこぺこだったので、お手軽にベーコンエッグトースト。
「村長さんが温厚を絵に描いたような方なのは知ってるでしょ? どうにもならないわよ」
穏やかな表情のお姉ちゃん。
「うーん。私、けっこーう心配性だからなあ」
「私の姿が見えないと、大騒ぎするものね」
お姉ちゃんが、くすくす笑う。
「だって、お姉ちゃんと一瞬でも、離れたくないんだもん!」
そうです。私、ガチのシスコンです。
「かわいい」
目を細める、愛しの人。
「エクちゃんは、ほんとに美味しそうに御飯食べるねー」
「そう、じゃなくて、実際すごく美味しいんだもん! お姉ちゃんの手料理なら、いくらでも食べられちゃう!」
ご飯、実に三人前! エクちゃんというのは、私の愛称。名前はエクレール。お姉ちゃんは、マドレーヌ。ちなみに、私は十八歳で、お姉ちゃんは二十歳!
「ご飯食べたら、お風呂入りましょ」
「うん!」
お姉ちゃんとお風呂! いつも一緒に入ってるけど、いつでもドキドキしちゃう!
◆ ◆ ◆ 「お客さん、痒いところはないですか~?」「ないよー。すごく気持ちいい~」
狼の姿になって、体中をシャンプーでわしゃわしゃしてもらっている。
私たち、こうしないと完全にきれいにならないからね!
だからシャンプーの消費量が多くて、以前、そんなに何に使ってるのかと、シャルちゃんに問われて困ったことがあったっけ。
「はーい、流すねー」
シャワーが、勢いよく体にかかる。うー! 気持ちいい~!
「今度は、お姉ちゃんの番ね!」
勢いよく飛沫を飛ばして、人の姿に変化。逆にお姉ちゃんは狼に変化。
「あー……。お姉ちゃんの体~」
うっとりしながら、シャンプーがけ。
「ふふ。ほんとにお姉ちゃんっ子ね」
「お姉ちゃんほど素敵な人、ほかにいないもの」
夢心地で、わしゃわしゃ。
「かけるよー」
名残惜しいシャンプータイムを終えて、シャワーで流し終わると、お姉ちゃんも飛沫を飛ばす。
そして、今度は人の姿で湯船に。
お姉ちゃん、きれいだなあ。今は入浴中につきまとめてるけど、黒のウェービーロング、慎ましいお胸。スリムな体。はあ~……うっとり。
ゆっくり浸かってから、湯上がり~。
まずは、私からドライヤーを使わせてもらうのが、いつもの順番。私、髪短いからね。
鏡に映る私は、黒髪ショートで、お胸は真っ平ら。体型も、食べる割にスレンダー。でも、お姉ちゃんはそんな私のスタイルをきれいだと褒めてくくれるので、全くコンプレックスにならない。
手早く髪を乾かし、お姉ちゃんにバトンタッチするのでした。
◆ ◆ ◆ 「お姉ちゃん、何やってるの?」ダブルベッドに腰掛けて、何かスカートを縫っている?
「うふふ。あのね……」
こしょこしょ耳打ち。
「えー! 私もやりたい!」
自分のキュロットスカートを引っ張り出して、私も針を通すのでした。
うふふ。明日が楽しみ!
本日も、まったりと営業中。レジ打ちしてると、シャルちゃんとショコラちゃんが、入店してきました。「いらっしゃいませー!」 お姉ちゃんと一緒に、ご挨拶。 レジを打ち終わると、お客さんが帰っていき、四人きりの空間になります。「二人共、いつもの?」 さっそく、オーダーを取りに行く。「うん」「りょうかーい。なんか、ずいぶん幸せオーラが漂ってるね? 匂いでも、すっごく感じる」 お姉ちゃんにオーダーを伝え、ほかにお客さんがいないのをいいことに、おしゃべり。 すると彼女ら、なにやらもじもじとして、照れくさそう。「ショコラから言ってよ」「えー? 恥ずかしいよ~」「じゃあ、一緒に」 何を言い淀んでいるのだろう? 狼耳を、ピンと立てる。「私たち、正式にお付き合いすることにしましたの」「うちら、正式にお付き合い始めたんよ」 頬を赤らめ、うつむいてそう言う二人。「え! つまりそれって……」「うん、恋人同士。うち、もう、嬉しくって……。で、さっそくデートってわけ」 ショコラちゃん、顔が真っ赤だ。「うわ、うわ、おめでとー! 今日はおごりでいいよ! ね、お姉ちゃん?」「ええ。おめでとう」「ふふ、ありがとう」 はにかむショコラちゃん。「ちなみに、この話、他の人には?」 今度は、寂しそうに首を横に振る二人。「神様は、お認めになっていない関係だから……。みんなに話すの、怖くて」「そんなわけで、しばらくエクレールさんとマドレーヌさん以外には、内緒の関係にしようかと」 以前、神父様に猛抗議したことを思い出す。「そっかー。いつか、みんなに言える日が来るといいね」「そうですわね。そう願いたいものです」 お茶が入ったので、クッキーとともに、二人のもとへ運ぶ。「付き合ったきっかけは、なんだったの?」「んー……。なんか、話の流れでね。自然と」 ほほー。「あ、あまり幸せカップルの会話にお邪魔するの、よくないかな。何か用があれば、呼んでね」「気遣い、ありがとう」 お姉ちゃんとともに、それは幸せな表情で会話する二人を、こちらも笑顔で眺める。 ショコラちゃん、恋が叶ってよかったね! ◆ ◆ ◆ 「お姉ちゃん、あとで、宝石店行っていい?」 街での買い出しの最中、提案する。「宝石? いいけど」「やった! お姉ちゃん、大好き!
ちくたくちくたく。 うう……。針の音が気になって、眠れない……。 久しぶりに、この部屋の時計に電池入れたけど、こんなに針の音ってうるさかったっけ。 ちくたくちくたく。 う~~~! 眠れない! 電池抜いちゃおう! ……。今度は、静かすぎる。ううう。お姉ちゃんがそばにいないだけで、こんなに寝付きが悪くなるなんて。お姉ちゃんの匂いがしないよう……。 なんだっけ、羊数えるといいのよね。 ひつじが一匹……。羊が二匹……。ラムステーキが三個……。 お腹空いた。きちんと晩ご飯、食べたのに。 台所行こう。 作るなら、サンドイッチかな。 ピーナッツバター塗って……。いただきます。 お姉ちゃんのいない食卓は、寂しいな。 ごちそうさま。 また、歯磨きしなきゃ……。 お姉ちゃん、どんな様子かな? そっと、寝室のドアを開ける。「こほっ」 少し咳き込んでるけど、お薬が効いたのかな。今朝ほど酷くないや。 いつまでもこうして見ていたいけど、私もいい加減寝なきゃな。 ……寝れるといいけど。 ◆ ◆ ◆ あー、少しは眠れたのかな。寝不足気味だけど。今、何時……?「えっ!?」 十一時!? 完全に寝坊した! ……って、時計の電池、抜いてたんだった。 雀が鳴いてるから、まだ早朝? お姉ちゃんは……。 まだ寝てる。 咳も、さらに若干軽くなった? とりあえず、お姉ちゃんが起きたときのために、オートミールを作っておこう。 ! 足音!「お姉ちゃん、おはよう!」「おは、こほ、よう。トイレ行くね」 元気ないなあ。当たり前だけど。「お姉ちゃん、一緒にご飯食べよ!」 薬を飲みに来たお姉ちゃんに、提案。「ダメよ。ほん、まだうつしちゃうから。これ、温めたら寝室で食べるね」「ああ、私が持ってくから、お姉ちゃんは寝てて」「ありがとう。じゃあ、横になってるね」 一緒に食事できないの、切ないなあ。 ともかくも、オートミールのミルク粥を、お姉ちゃんの下へ。「ありがとう」 もそもそと食べる、お姉ちゃん。あんまり美味しいもんでもないだろうけど、病人食といったら、これだからね。「エクちゃん。うつすといけないから、出てたほうがいいよ」 うう……。食事姿を見ることも叶わず。「何かあったら、呼んでね?」「うん、ありがとう」
今日も、お姉ちゃんとお仕事を終えて、ご飯をもぐもぐ。「えへへ~」「どうしたの? 食事中に、にやにやして」「こうして、お姉ちゃんとずっと一緒なの、嬉しいなあって思って」 そう言って、さらに顔を緩ませる。 思えば私、何をするにもお姉ちゃんと一緒だったなあ。 ◆ ◆ ◆ 「おつかい、いってきまーす」「まってー! エクもいく~!」 ちっちゃい頃、お買い物に行くおねえちゃんにちょこちょこついて行ったり。「おねーちゃん、いっしょのベッドでねよー!」「いいよー」 もちろん、寝るときも一緒。結局、お父さんたちも諦めて、ダブルベッドにしてくれたのよね。「おねーちゃんと、おなじかみがたにしてみたの! おそろいだね!」 今でこそ違う髪型だけど、服も髪も同じにしてみたり。「おトイレ、おねーちゃんといっしょにはいる!」「それはちょっと……」 こんな事を言って、困らせたこともあったっけ。「おねーちゃん、おふろはいろ!」 もちろん、お風呂も小さい時からずっと一緒。「おお~~~~~~ん……!」「おお~~~~~~ん……!」 お父さんたちや村の人には内緒で、狼姿で丘の上で満月に吠えてみたり。 遠くから、遠吠えが帰ってきたのは驚いたな。狼なのか、お仲間だったのか。 帰ったら、こってりしかられたっけ。私が言い出したことなのに、お姉ちゃん必死でかばってくれて、かばい合いになった結果、お父さんたちが逆に折れちゃったね。 お姉ちゃんが学校に上がると、私も行きたいと駄々をこねて、さんざん三人を困らせたり。 この村は分校だから、七年間ずーっとお姉ちゃんと一緒だったのはいいけれど、お姉ちゃんが卒業しちゃうと、今度は私のやる気がだだ下がりになっちゃって。 私とお姉ちゃんが十八歳と二十歳になって間もない頃、神様が意地悪にもお父さんとお母さんを連れて行ってしまった。 とてもとても悲しかったし、これからどうしようって悩んだけど、お姉ちゃんが「力を合わせて生きていきましょう。エクちゃんは、私が守ってあげるから」と言ってくれて、随分持ち直したっけ。 二人が遺してくれたこのカフェが、四人の思い出。この店を守っていこうと、お姉ちゃんと誓いあったのです。 ◆ ◆ ◆ (お姉ちゃん、ほんときれいだなあ……) 入浴中、お姉ちゃんの裸体に見惚れる。 お姉ちゃ
どうしてこうなったの……。 戻ってくると、シャルロットちゃんがそっぽを向いてツン! 一方、ショコラちゃんはえらく落ち込んで泣きそうになってるし。「ちょっと、何があったの!?」 尋常ならざる様子に驚き、思わず狼耳としっぽがぴょっこり出てしまったので、慌てて人モードに戻る。「うちが悪いのぉ……」 そう言うと、こらえていたものが吹き出してしまったのか、わんわん泣き出してしまう。 これではなんでこうなったか聞き出せないだろうと、シャルロットちゃんに水を向けた。「説明してよ、わけわかんないよ。あんなに楽しそうだったのに」「……ショコラが、街に行かないで、なんて言うからいけないのよ」 お姉ちゃんと顔を見合わせ、揃って首を傾げる。「えーと……意味分かんないよ、それじゃ。もっと、順を追って説明して」 シャルロットちゃんの渋々とした説明によると、将来の夢についての語り合いになり、「村で一緒に暮らし続けたい」と言うショコラちゃんに対し、「私は、都会へ出るの!」と言い争い……というか、彼女の性格とこの状況だから、きっと一方的なきつい言い方をしたのだろう。そんなことがわかった。「シャルロットちゃん、この村、嫌いなの?」「嫌いではないけれど……私は、都会で華やかな暮らしがしたいの! 村長は兄様が継げばいいのだし!」 ふむう……。「ショコラちゃん、シャルロットちゃんと一緒に都会に出るっていう選択肢はない?」 背中を擦って、慰めながら問うと、少し落ち着いたのか、とつとつと答える。「うち、この村が好きだし、うちが街に行っちゃうと、家業を継ぐ人がいなくなっちゃうから……」 困った。二律背反。「とりあえず、謝った方がいいよ、シャルロットっちゃん」 まだぐずついているショコラちゃんを困ったように見て、「悪かったわ。きつく言い過ぎた」と、頭を下げる。「ショコラちゃんも、とりあえず、この場はこれでいい?」 まだ目尻を拭いながら、「うん」と返す。「とりあえず、お茶でも飲んで、落ち着きましょう」 お茶を差し出すと、二人が飲んでくれる。やっぱり、こういうときはとりあえず一服だよね! 鳥の声を聴きながら無言で過ごしていると、不意にお腹の音が鳴ってしまう。時計を見ると、もう一時だ。「お腹空いちゃった! ご飯にしましょ!」 ぽん、と手