二枚のニップレスが、ぺたりと床に落ちた。個室は、突然音を消されたように静まり返った。みんな、見るべきか目をそらすべきか分からずにいた。蒼佑は眉をひそめた。普段は控えめな私が、こんな大胆なことをするとは思っていなかったらしい。「ニップレス二枚くらいで、そこまでするか?普段から自分のものにはうるさいけど、そんな安物まで惜しむとは思わなかった」蒼佑は、自分が悪いとは少しも思っていなかった。ただ私がけちで、物を貸したくないだけだと思っていた。夏希は蒼佑の肩を叩くと、服の中に手を入れ、ニップレスを剥がして私に差し出した。「はい、美緒さん。蒼佑が悪かった。代わりに謝るよ。あたしは別に貼らなくてよかったのに、こいつがトイレの前に立って、貼るまで出さないって言うからさ」「お前ら、後ろ向け!」蒼佑が仲間たちを怒鳴りつけた。次の瞬間には自分の上着を脱ぎ、夏希の体をしっかり包んでいた。「頼むから、少しは普通の女らしくしてくれないか?」夏希は不満そうに口を尖らせた。「普通の女って、どんなの?」彼女は私をちらりと見ると、汚いものでも見たように鼻を鳴らした。「ああいうのなら、あたしのことは男だと思ってて」蒼佑の態度からは、ほかの女を守り、独占したいという気持ちが透けて見えた。急に、何もかもがどうでもよくなった。私はソファに置かれていた蒼佑のショルダーバッグを手に取り、中身を床にぶちまけた。夏希のために用意したアレルギー薬、携帯扇風機、タンポンが次々と転がった。一方、今朝、風邪薬を持ってきてほしいと何度も頼んだのに、蒼佑は今まで一度も思い出さなかった。「そこまで物忘れがひどいなら、普通かどうか以前の問題ね。早めに病院で診てもらったら?今からそんな調子じゃ、老後は認知症まっしぐらよ」私はニップレスを蒼佑のバッグに押し込み、それを彼の顔に投げつけて歩き出した。「人が使ったものなんて気持ち悪いから、あげる。これからは自分のバッグから出してあげて。二度と私のバッグを勝手に開けないで」今日から蒼佑のバッグには、夏希用のニップレスまで加わるのだろう。店を出たところで、蒼佑が追いつき、私の腕をつかんだ。「いったい何をそんなに怒ってるんだよ。夏希が忘れっぽくて、細かいことを気にしない奴だって知ってるだろ?」私が黙
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