Todos los capítulos de 南風の吹く夕暮れに、さよなら: Capítulo 11

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第11話

洗面所から戻ってきた千夏が、机の前でぼんやりしている私を見て、どうしたのかと聞いた。「なんでもない」便箋をそろえて木箱に戻し、蓋を閉めた。その夜、ベッドに横になっていると、スマホが震えた。航からだった。【明日は冷えるみたいだから、暖かくしてね】【うん】そう返した。スマホを枕元に置き、寝返りを打った。一瞬、不思議な気分になった。ずっと前に読んだ本を、もう一度手に取ったような。最後のページを閉じる頃には、結末はとうにわかっている。もう、何も覆らない。……やがて、私たちは大学を卒業した。航は建築設計事務所に入り、私は出版社で文芸編集の仕事に就いた。凪瀬の古い通りにある家で、2人で暮らすようになった。古い家で、木の階段は踏むときしんだけれど、窓からは大きなキンモクセイが見えた。秋には、部屋いっぱいに甘い香りが満ちた。たまに帰省すると、恵理さんに会うこともあった。年を取り、髪は半分以上白くなったけれど、元気にしていた。仕事はどう、体は大丈夫、と笑って尋ねては、私の手をぽんとたたいた。「元気なら、それでいいのよ」怜司がどうしているかは、一度も聞かなかった。知るのが怖いのではない。本当に、知りたいと思わなくなっていた。何年かたった頃、実家で古い物を整理していて、高校の卒業写真を見つけた。裏返すと、高校3年のときに彼が書いた言葉があった。【人と争わず世に馴染み、時に合わせてしなやかに生きる】あの頃は意味がわからず、彼に尋ねることもしなかった。今、読み返してみて、ふと腑に落ちた。しばらく眺めてから、写真をアルバムに挟み直し、閉じた。窓の外ではキンモクセイが咲いていた。とても、いい匂いだった。遠い日の午後を思い出した。怜司は教室の前の廊下に立ち、顔の片側だけに午後の日差しを受けていた。こちらを振り向いて、何も言わずに私を見た。あのまなざしは種のように、何年も私の心に埋まっていた。やがて芽を出し、葉を広げ、花を咲かせた。そして、散った。今、あの土には別の草木が育っている。彼にも負けないものが。違う。誰と比べても、引けを取らないものが。あの手紙の箱は、ずっと取ってある。古い本棚のいちばん奥にしまっていたものを、その後、引っ越しのときにもう一度見つけた。蓋を開け、何通か適当に取り出して
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