廉太が私の不在に気づいたのは、それから3時間後だ。送られてきたメッセージの内容は、ひどく冷たい。【どこほっつき歩いてるんだ?入口の売店で飲み物を買ってきてって言っただろ?また道に迷ったのか?】用があるときにしか、私の存在を思い出してくれない。これが何度目なのか、もう覚えていない。私は返事をせず、そのまま手元の仕事を続けた。ちょうど病棟の回診から戻ってきた同僚が、私を見て不思議そうに首をかしげた。「有休をまとめて取って、加久間先生と西内先生と遊びに行ってたんじゃないの?どうしてこんなに早く戻ってきたの?」カルテを書いていた手が止まった。廉太とアリスは息の合った連携で難易度の高い救急手術を1件こなせば、それだけで1週間の特別休暇がもらえる。なのに私は、二人と遊びに行くために、大切な有休を切り崩さなければならない。心待ちにしていた旅行の間、自分が透明人間になったように感じた。それからさらに3時間ほど経った頃、アリスが大きなぬいぐるみを抱えて医局までやってきた。いたずらっぽくウインクして、私に言った。「若嶋先生、これ、私と加久間先生がカップルのふりをしてゲットした景品なんだよ。二人で30分もハグし合ったんだから、もうくたくた!でも、大事な親友を喜ばせるためなら、そんなの平気だよ」さっき、私もあのハグゲームに参加しようと提案した。けれど廉太は、そっけなく「子どもっぽい」と言っただけだった。だから私は、それ以上言わなかった。なのに、アリスが参加したいと言えば、彼はあっさり彼女とカップルのふりをしてやった。本当のカップルは、彼と私なのに。胸の奥に何かが詰まっているみたいで、なんとも言えない息苦しさがこみ上げてきた。私が受け取らずにいると、廉太はしぶしぶぬいぐるみを私の腕に押しつけた。「さっき何も言わずにいなくなって、西内先生だって若嶋先生のこと心配してたんだぞ。何をそんなに不機嫌そうな顔をしてるんだ?」その瞬間、周りにいる同僚たちが、一斉に私へ蔑むような視線を向けた。アリスは振り返って廉太をひと睨みすると、今度は私をなだめるような声をかけた。「いつも言い方きついんだから、気にしないで。若嶋先生、写真のこと、まだ気にしてる
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