指先に力が入らず、手からこぼれ落ちた札が風にさらわれた。無意識のうちに、僕は言うことを聞かない脚を引きずるようにして、飛ばされたお札を追いかけていた。周囲の通行人は、まるで化け物でも見るかのような冷たい目を向けてきた。だが、そんなことはどうでもよかった。この金を失えば、ずっと前から計算してようやく買えるはずだった薬の代金がパーになってしまう。風にさらされたお札の行方にすべての神経を集中させていたため、通行人の心無い罵声すら耳に入らない。しかし、周囲の嫌悪に満ちた視線に晒され、紗由里の顔は極限まで険しくなった。耐えきれなくなった彼女の怒号が響き渡る。「朔也!同情してほしいからって、そんな惨めな姿を晒して恥ずかしくないの?家を追い出されて、少しの間よその家に預けられただけじゃない。あっちの暮らしだって悪くなかったはずなのに、わざとそんな吐き気のするような格好をして、誰への当てつけのつもり?」聞き慣れた声が鉄槌のように心を打ち据え、胸が激しく痛む。彼女が吐き捨てたその言葉は、僕にとっては、二度と思い出したくない地獄の始まりだったのだ。喉の奥から込み上げる苦味を飲み込み、ただ立ち止まって少しだけ力を振り絞り、再び歩き出そうとした。僕の歩き方があまりにも異様だったためか、紗由里の表情が僅かに和らぎ、ようやく何かの異変に気づいたようだった。焦ったように大股で近づき、何かを問い詰めようと口を開きかけたその時、突然悠真が現れ、大げさに口元を押さえて驚いたような声を上げた。「あ、兄さん。病院でALSの診断書を偽造しただけじゃ足りなくて、とうとう病人のフリを実行し始めたの?」そう言うと、彼は僕のカルテを紗由里に渡し、涙ぐみながら口を開いた。「姉さん、分かってるんだ。兄さんがこんなことをするのは、早く家に帰りたいからだって。僕が家族の絆を壊しちゃったんだよね。予定を早めて、僕を海外に行かせてよ!」カルテを凝視していた紗由里は、悠真の言葉に煽られるように拳を震わせ、ギリギリと歯を食いしばった。「危うく騙されるところだった。朔也、あんたはこの数年間、嘘のつき方しか学ばなかったわけ?よくもまあ仮病まで覚えたなんてね!家に帰る前に、その仮病のせいで本当にくたばらないように気をつけることね!」彼女はカルテを力任せに
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