――魔族は敵である。絶対に殺すべき敵だ。 少なくとも、ソフィア・ストレイルはそう教わってきた。 魔族の証たる角を持つ者は斬れ。牙を剥く者は斬れ。人に害を成す者は斬れ。 そこに迷いなど必要ない。何故なら、聖騎士とは魔族を斬り裂く聖剣であり、人類を守る聖盾なのだから。「――遅いです」 王都中央訓練場。 十人の聖騎士が、同時に地面へ転がった。「ぐぁっ!?」「な、何だ今の動きは……!」「見えなかったぞ!?」 悲鳴と困惑があちこちから上がる。 木剣を握った若き騎士たちは、皆、王国の聖騎士団でも精鋭たちだった。魔族との戦場を生き抜き、勲章を持ち、酒場で語れば周囲から拍手される程度には強い。 だが、その若き獅子たる十人はたった一人の少女に、一分も持たなかった。 白銀の髪をセミロングにした少女――ソフィア・ストレイルは、乱れた息一つ吐かず、手にした木剣を下ろす。 倒された若き騎士たちはその所作の美しさに、思わず息を吞む。「これで終わりですか?」 その言葉に、訓練場が静まり返った。 ソフィアに悪気はない。ただ、純粋に確認しただけである。 だが、倒れている騎士たちからすれば、煽られているようにしか聞こえなかった。「言い方言い方。ソフィアちゃんや、もう少し言い方を考えなさいな」 訓練場の端から、呆れたような声が飛ぶ。 声の主は、聖騎士団副団長ガルド・グランベーズ。長い黒髪を後ろで束ねた、少しちゃらんぽらんそうな印象の男性騎士である。「申し訳ありません。では、言い換えます」 ソフィアは少し考えた後、倒れている騎士たちへ向き直った。「続けますか? まだ動ける方から順番に、もう一度倒します」「言い換えた結果、悪化しているっつーの」「え?」 ソフィアは小さく目を見開いた。どうやら本当に分かっていないらしい。 その様子を見て、ガルドは深いため息をついた。「なんつーか……。お前さん、剣以外のことになると本当に不器用だな」「不器用? 何のことでしょうか? 私は常に手を抜かず、物事に向き合っているだけです」「それが不器用なんだっつーの」 周囲の騎士たちは何も言えなかった。 目の前の少女はまだ十六歳。 しかし、戦場において彼女の名を知らぬ者はいない。 ――銀閃光のソフィア。 魔族との戦争において、幾度も最前線を切り
Last Updated : 2026-09-30 Read more