悠は唇をきゅっと結び、少し眉を寄せていた。機嫌が悪いときにいつも見せる表情だった。以前なら、悠の顔色をうかがって、何とか機嫌を直してもらおうとしていた。でも今は、気づかないふりをしてうつむいた。すると、悠がこちらへ歩み寄ってきた。「ミルク、作ったよ」そう言って哺乳瓶に手を当てた。「うん、ちょうどいいよ」私は哺乳瓶を受け取り、改まった口調で「ありがとう」と礼を言った。悠は一瞬、戸惑ったようだった。「夏帆、俺たち夫婦なんだから、そこまで他人行儀にしなくてもいいだろ」悠が私と安奈を病院から連れ帰って以来、私はずっとこんなふうに距離を置いていた。少し間を置いて、悠が言った。「……もういいよ。二人でゆっくり話してて」そう言って、悠は背を向けて部屋を出ていった。私は安奈をあやしながらミルクを飲ませた。少し飲んだところで、安奈は眠そうに目を閉じた。遥もさっきのやり取りで気まずくなったのか、それ以上は深く聞かず、早まったことはしないようにとだけ言って帰っていった。そのあと、ベビーシッターが安奈を連れていき、寝かしつけてくれた。午後、家政婦が軽い食事を用意してくれたとき、悠が私の向かいに座り、突然こんなことを聞いてきた。「……俺、これでも頑張ってるつもりなんだけど。それでもまだ足りない?」ヨーロッパから帰ってきてから、悠は確かに安奈の世話もよくしてくれたし、私のことも何かと気にかけてくれていた。私は首を横に振った。「ううん、そんなことないよ。十分よくしてくれてる」「でも、最近ずっと俺のこと避けてるよな」私は少し気まずくなった。さっきあんなことを言ったうえに、普段からあれだけ悠を避けていたのだから、気づかれても仕方がなかった。何と言ってごまかそうか迷っていると、悠がまた口を開いた。「誕生日のこと、わざと忘れたわけじゃないんだ。それに、安奈のことだって、ちゃんと大切に思ってる」私はもう、何と返せばいいのかわからなかった。去年の私の誕生日、悠は仕事の付き合いだと言って出かけ、私は家政婦が用意してくれた夕食を一人で食べた。その夜、日付が変わる少し前、悠の友人のSNSで美里の誕生日を祝う投稿を見つけた。写真には悠の後ろ姿も写っていた。私は思わず、以前見た「YY」というアカウン
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