私はスマホを取り出し、かけうどんを注文した。それこそが、私の好みに合う料理だ。私がいつまでたっても動かないのを見て、弘也が顔を上げ、こちらを見た。「どうした?食べないのか?まだお腹が痛む?」私は首を横に振り、ダブルチーズバーガーを彼の目の前に押しやった。チーズと肉の脂がぎらぎらと輝き、いかにも食欲をそそりそうな一品だ。弘也は一瞬きょとんとしたが、すぐに何かを思い出したように、申し訳なさそうな顔で私を見た。「ごめん、夢子。また脂っこいものを頼んじゃった」これで何度目の謝罪になるのか、もう数えきれない。仕事ぶりは几帳面で知られる弁護士の弘也が、食べ物を選ぶことに限っては、呆れるほど忘れっぽくなる。もしかしたら、忘れっぽいわけではないのかもしれない。ただ、心のどこかで、私のことをずっと無視し続けてきたのだ。元カノ・斎村真礼(さいむら まあや)の好きなものを、無意識のうちに選んでしまうのだろう。二人が別れてから、もう4年も経つというのに。彼と付き合っているのは、私だというのに。私は彼を見つめ、落ち着いた声で言った。「何度も何度も言ったよね」それなのに、一度だって覚えていてくれなかった。その一方で、真礼に関することは、弘也は何年経っても忘れずにいる。真礼は生理痛がひどかった。だから私が生理になるたび、弘也はいつも、カイロと生理痛の薬を用意してくれた。私には、生理痛なんてないというのに。真礼は自分でフードデリバリーを頼むのが好きではなかった。だから弘也はいつも、気を利かせて私の分まで頼んでくれているのだ。最初の頃、私はその気遣いにひどく感動した。これこそ彼が私を愛している証拠なのだと思った。けれど、あとになって気づいた。その細やかな気遣いは、もともと真礼が彼に教え込んだものだったのだ。彼が私にしてくれることは、実のところ、真礼にしてあげていたことだった。二人が別れたあとも、その習慣は弘也の中にずっと残っていた。そして今度は、私に向けられるようになった。そんな何気ない小さなことの一つひとつが、かつて彼と真礼が愛し合っていた証拠だった。私はただ、お下がりを拾い集めただけの存在に過ぎなかった。それなのに、愚かな私は、弘也の細やかな気遣いも優しさも、私だけのものだと思い込んで
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