アエリアは震える指で籠から桃を出した。倉番が受け取る。 桃の皮に、指の跡が少しついていた。強く握ったのだろう。明日の祭りへは回せない。「その桃は、台所へ」「はい」 パルマが指示すると、カティが小さく言った。「それ、カティのだった?」「もう違うわ」 パルマは娘の方を見た。「カティの分は、別に出すからね」 カティは頷く。けれど、口元は固いままだった。 フェルナンがようやくパルマへ向き直る。「君は、夫に捨てられた人に、桃ひとつ譲れないのか」 その言葉で、パルマは夫をあらためてよく見た。 五年暮らした男だった。 人当たりがよく、領民に好かれ、困っている者の話を聞くのがうまい。 子供が生まれた時には、泣いて喜んだ。カティを抱く手はぎこちなかったが、嬉しそうだった。 ロンが熱を出した夜は、寝ずに医師を待った。 なのに、その男が今、娘の言葉を消し、息子の怯えを見ず、外の女の籠を守っている。「……桃ひとつのことではありませんよ」 パルマは言った。「その桃は、カティがずっと楽しみにしていたものです。ロンも明日食べます。領地の子供たちにも配ります。市場に出せば、冬の薪代にもなります」「……また用意すればいいだろう?」 フェルナンは事もなげに言う。 その時、パルマの中で、何かが終わった。彼に対してかろうじて持っていた、最後の結び目がほどけた。 そしてもう、ほどけたものを結び直す気がなくなった。「……もう、うんざりです」 パルマははっきりと言う。フェルナンが目を瞬かせる。「パルマ?」「アエリアさん」 パルマは、今度はアエリアを見た。「あなたが夫に置いていかれたのは、一月前でしたね」 アエリアの唇が震えた。「今、その話を……?」「ええ、今します」 パルマは倉番へ目を向けた。「この箱を閉じて。祭り用の桃は、奥の冷えた部屋へ移してちょうだい。鍵は私が持ちます」「はい、奥様」「それから、アエリアさんの籠を確認して」「パルマ!」 フェルナンが声を上げた。カティが大声に乳母のスカートを握る。ロンは乳母の肩に顔を埋めたままだ。「籠を」 倉番がアエリアの籠を受け取る。 中には、桃のほかに、布に包まれた干し葡萄が入っていた。小さな袋。昨日、子供たちの菓子に回すため、台所から倉へ戻したものだ。 アエリアが息をのむ。「そ
Última actualización : 2026-10-17 Leer más