グループチャットの通知を切った時、スマホの画面に新しいメッセージが表示された。直樹からだった。【今週末、新居に連れていけなくなった。急用ができたんだ】私は眉をひそめた。【そんなに急ぎの用事なの?せっかく休みを調整したのに。大事な話があるんだけど】だが直樹から返事は来なかった。グループチャットを覗くと、直樹は相変わらず彩香と楽しそうにやり取りしていた。私に返事をする暇だけがないらしい。これ以上聞いても惨めになるだけだと思い、私はスマホを置いてパソコンを開き、退職届を書き始めた。もう疲れてしまった。しばらく仕事から離れて、ゆっくり休みたかった。翌日、私は会社に退職の手続きをしに行った。副社長には何度も引き止められたが、最終的には半月後の退職を渋々認めてもらえた。本当はグループチャットで二人にも報告するつもりだった。けれど、スマホを開いた途端、彩香のSNSの投稿が目に飛び込んできた。【最近仕事ばっかりで忙しい私を、息抜きに連れ出してくれる人がいるんだって】投稿には空港の位置情報が付いていて、二枚の航空券の写真が添えられていた。行き先は私が二人を誘ったあの高原の街だった。写真を拡大してみると、一枚には渡辺彩香、もう一枚には松本直樹の名前がはっきりと印字されていた。直樹が言っていた急用とは、彩香と二人きりで旅行に行くことだったのだ。私はグループチャットで二人にメッセージを送った。【二人で旅行に行ったの?どうして教えてくれなかったの?】予想どおり、返事はなかった。続けて、直樹に個別でメッセージを送った。【なんで彩香と二人きりで旅行に行ったの?】それにも返事はなかった。ようやく直樹がグループチャットに返信してきたのは、仕事が終わる頃だった。【今飛行機を降りたところ。急に決まったんだよ。最近仕事が忙しそうだったから、誘わなかっただけ】いかにも面倒くさそうな返事だった。そのすぐ後に、彩香がクスクス笑うスタンプを送ってきた。帰宅すると、大家さんが入居希望者を連れて部屋の内見をしたいと訪ねてきた。私の姿を見ると、大家さんはにこにこしながら言った。「田中さん、おめでとう!今回の退去は、彼氏さんと新居に引っ越すからなんでしょ?そういえば、前に来ていたお友達、結婚の話をしたらあんまり嬉しそう
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