幼馴染の、七度目の婚約破棄幼なじみが初恋の女のために七度目の結婚式延期を決めたそのとき、私・宮本菜々(みやもと なな)はふっと、もうこんなのくだらないと感じてしまった。
病院に駆け込んで山田陽介(やまだ ようすけ)を見つけ、最後の確認をした。
まだ私と結婚する気があるのかって。
彼はベッドに横たわる永井美桜(ながい みお)に、気のない手つきでリンゴの皮を剥いていた。
「菜々、もう子どもじゃない。わきまえろ。結婚式なんていつでもできる。けど、美桜は病気だ、ここは手を抜けない」
皮むきナイフが彼の指先でカリカリと小さな音を立てる。
だが私の耳には耳をつんざくほど響いていた。
「じゃあ、花婿を変えるだけよ!」
彼の手が一瞬止まり、すぐに笑ってみせた。
「好きにしろ!」