インテリアデザイナーはmemento Moriをモチーフにした部屋をどう提案しますか？

提案の骨子を素早くまとめると、印象・素材・空間配置の三本立てで考えている。私はまず視覚の中で目を引きすぎない弱めのモチーフを選び、次にそれを支える素材選びで説得力を出す。たとえば、鉄のパティナや煤（すす）を帯びた木材、硝子に入った微細な砂時計といった具合だ。アクセントに生花ではなく乾燥植物や種子を使うと、生命のはかなさが直接的すぎずに伝わる。

空間設計の具体案としては、対話が生まれる視線の焦点をいくつか設定する。入口から正面に一つ、サイドに一つ、そして人がじっとできるこぢんまりした場所に一つ。これらを物語の章として配置し、色のトーンを段階的に変えることで動線に物語性を持たせる。照明は局所的に柔らかくして、陰影が形を強調するようにするのが効果的だ。

装飾を“寓意”として成立させるには、歴史やゲーム的ビジュアルからの借用も活かせる。私は制作でしばしば'ダークソウル'の朽ちた美学を参照し、荒廃と残存が同居する見せ方を参考にする。ただし模倣は禁物で、最終的には居住者のパーソナルな物語と結びつけることが成功の鍵だと考えている。

空間に物語を宿らせるとき、象徴をただ並べるだけでは安直になると考えている。私はまずクライアントの“死”に対する受け止め方を聞き取り、そこから素材と色彩のパレットを決める。錆びた金属や黒檀、古い紙の黄味、石灰岩のざらつきといった素朴な質感を主軸にして、モチーフはさりげなく配置する。例えば、棚の縁に小さな頭蓋骨を置くかわりに、経年変化したブロンズの小彫刻や時間経過を示す書物の背表紙を見せることで、鑑賞者が気づく余地を残す設計にする。こうした控えめな手法は、空間に深さを与えつつ押しつけがましさを避ける効果がある。

また、動線と体験の連続性を重視する。我が家の小さなプロジェクトでは、入り口から奥へ進むにつれて素材がより素朴になり、最奥のコーナーにひとつの厳かなオブジェを置いた。視線の移り変わりを意図してライトを段階的に落とし、触れることでわかるテクスチャーをあえて残すと、訪れた人は自分のペースで意味を見つけられる。文学的な余韻を狙うなら、'薔薇の名前'のように知識と死の匂いが混ざる世界観を参照することもあるが、模倣ではなく解釈を優先している。

最終的には、機能性と倫理性のバランスが肝心だ。日常の居心地を損なわず、かつ人生の有限性を思い出させる。それが私の提案するmemento moriの扱い方であり、強いメッセージではなく、静かな共鳴を生むことを目指している。

ある依頼で、遺される時間の重みを穏やかに表現してほしいと頼まれたことがある。そこで私は日常家具の選び方から見直した。布張りは経年変化が美しく出るリネンを選び、小さな引き出しには手書き風のラベルを付けて、過去の痕跡が自然に滲み出るように工夫した。アクセントとして用いるオブジェは、大げさな骸骨モチーフではなく、欠けた陶器の破片や古い地図、手触りのある相貌を残した石を選んだ。

色は限定して穏やかなトーンで統一し、床材の経年によるムラを生かす配置にした。その結果、空間は静かな啓示を孕みつつも日常生活に寄り添う形となった。香りや音の演出は使わなかったが、代わりに小さな書棚に選書を並べ、来訪者が触れることで意味を発見できるようにした。

このプロセスでよく引き合いに出す映像作品は'パンズ・ラビリンス'だ。そこから学んだのは、幻想や象徴を過度に説明せず、観る側の想像力に余白を残すことの重要性だ。完成した空間は、訪れる人が自分なりの問いを持ち帰るような、静かな余韻を残した。