もう彼に四度目のチャンスは与えない夫である松本悠人(まつもと ゆうと)が浮気から家庭に戻る条件として、私は彼に「あと三回だけ」の猶予を与えた。
浮気相手とキッパリ別れるための、最後のチャンスを。
だが彼は、そのわずかな時間さえ惜しむかのように、あの女と夕食を共にし、手作り体験デートを楽しみ、挙句の果てには夜通しで付き添っていた。
そして戻ってきた後、彼はあの女にまつわるものを全て捨て去り、改めて私の手を取り、こう言った。
「信じてくれ、美咲。もう二度と裏切らない」
私が車で一人の若い娘と衝突した、あの日までは。
女の子は泣きながら電話で助けを求めた。
しかしそこから聞こえてきたのは、悠人の友人の声だった。
「悠人、行くのは止めた方がいいぞ。三回の猶予はもうゼロだろ?今回は確実に離婚沙汰になる」
すぐに、悠人の余裕しゃくしゃくとした声が聞こえてきた。
「美咲(みさき)は孤児だ。生涯誰にも愛されなかった寂しい女。俺よりよっぽど離婚を恐れているさ。
ちゃんと口止めしておけ。これで本当に最後だ」
私は血の海に倒れたまま、全身が凍りついた。
目の前で泣き崩れていたこの女こそ、彼が大事に守っていた愛人、小林由奈(こばやし ゆな)だった。
二十分後、かつて「必ず家庭に戻る」と誓った悠人が、慌ただしく病院へ駆け込んできた。