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『澪《れい》…澪は絶対に人間の前に姿を出しちゃいけないよ』
『どーして?おかあさま』
『それは、ウチ達が神様だからよ。だから決して人間に姿を見せたらウチ達やその人間にも不幸が降り掛かってしまう。それを避けるためなのよ』
『ふーん』
『今はわからなくていい、だから大人になったらわかるかもね。だって、うちのれいは凄いんだから』
なんて…昔お母様に言われたことを不意に思い出した。 あの後なんて言ってたんだっけな。今はもう覚えてない。
だって凄い小さい時だったんだから。 でも、どうしてだろ。 お母様が亡くなった後もこの約束というか契というか…それをずっと守り続けている。
だからこそ、人間がどんなものかなんて今はわかるけれど触れることも見ることも出来ない。 なんせ、神は人間と触れてしまったら
夜
この暗い暗い夜の帳が降りている中、本来なら誰も居ないと思うはずなのだが。
今は、こんなにも明るくなっていてとても信じられないけれど昔はほんと辺り一帯が暗くなって提灯の灯りがないと山の闇に飲まれてしまうことが多かったのだが……
この、奇っ怪な建物が乱立したこの土地を見て驚きというものが隠せないが今ではもう慣れてしまったものの。
夜のこの暗い闇の中を歩き回る人間たちとそれを照らし出す無数の光がとても当たり前になっているのがほんとに今でも驚きだ。
昔では到底考えることが出来なかったが人々の成長によって生まれたそれらはほんとに凄いと私は今でも思う。それに、人間同士の大きな争いの後瞬く間にこんなものが出てきたのだから。
ほんとに凄いなとつくづく思う。 そんな事で驚くのも束の間。もっともっと大きい物も出てきたり、電車と呼ばれる箱のものが人を乗せて動く場面を目撃したり、はたまた空には鳥のような……人間曰く飛行機と呼ばれるものが飛んでいたりと……
ほんとにここ最近でこんなにも発展したりしている様子を見てほんとに人間はおもしろいんだなぁってわかる。
ウチが神様になってからかれこれ千年以上経ったけれど……
人間達こんな目まぐるしく動くんだなぁ…… ほんとに知らなかった。なんて、こういう風に思ってるけど。
ウチはどーして人間が作った高層ビル?の上にいるかと言うと…「ウチが住んでいた山はここだったから!!」
なんて……悲しいことを言ってしまった。 だって、誰にも聞こえないし誰にも知覚出来ないのに…… トホホ……自分で言って、すごい悲しくなる……
まあ、この近くはすごい大きい山だったからその分土地神様沢山いたんだけどね。 気づいたらウチだけになってしまって…… 一人ぼっちになってしまったんだ。考えてみたらウチって狼の土地神だから、その分霊力が強い。だから消えることなくまだ現界し続けるのか……
そう思ったらなんだか悲しくなるけど……
まあでも、一人ぼっちでこうやってビルの下にいる人間達をこうして見るのも悪くない。それがウチの今の楽しみなのだから。
「それにしても不思議に思うよねぇ、だってウチは誰にも見られないし聞こえないんだから大声とか出してもバレないんだから」
「え?聞こえて……ますよ?」
ん?「気のせいだよねぇ、そんなそんな声が聞こえるなんて……」
「いやだから、聞こえてますって」
やっぱり…声が聞こえたような…… 気の、せ…い、だよね? とりあえず気のせいってことにしよう。うん、そうしよう。
「んー」
「どうしたんですか?」
やっぱり声がする。 お、同じ……神様なのかなー……(震え) いや、そもそもだけどこの近くにウチ以外神様なんていないし……じゃあやっぱり……
いやいや!!人間であっても
このウチを知覚出来る事なんて…… でもでもやっぱりそんな事ないと思いながら振り返ってみると…… 「ま、ま、まさか……このウチを知覚出来るがいるわけ……」「いやいや、居るじゃないですかここに」
自分に指をさし、ほらほらと訴えかける。 えーっと……え?
「えーっと、聞こえる?」
「え」
「え?」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!」
ウチは過去一驚いてしまった。
こんな……こんなことってある?!?!
人間に?!しかも、なんか、可愛い感じの女の子に知覚されることなんて……
今まで絶対なかったのに!!
どぉぉぉしてぇぇてぇぇ?!?!?!
「ちょっ、落ち着いてください!!」
「落ち着けるどころの問題じゃないんだよぉぉぉぉぉぉ!!」
だって!!ウチ人間に知覚されたら神様に怒られるちゃうか消えちゃうんだよ?!それか人間になるのか…… 人間になるのはそれはそれでいいかもだけど!!なんか……その……
千年以上守り続けてたウチの……ウチのあいでんてぃてぃがぁぁぁぁあ!!!!
一瞬にして……崩れ去っていくよぉぉぉぉ!!
「と、とにかく……深呼吸……しましょ?」
「そ、そうだね……」
すぅ……はぁ……すぅ……はぁ…… いや、これ落ち着ける状況か? そもそもだけど、なんでウチが落ち着いてないって事も分かったんだ?それもそれで可笑しいけど……
でも、もしかして……「ウチ……ウチじゃない私の声って…もしかしてダダ漏れだった……?」
「えっと……その……」
「正直に言って」
「は、はいっ!!その……えと、その通りです……」
「嘘ぉぉぉぉぉん!!」
なんというか、気を落とすというか自分の情けなさが招いたこの事実…… なんて言えばいいのだろうか……「えーっと……その、どっから話せばいいんだろうか……」
「は、はいっ……そうですよね……えっと……その、それでは……あなたは……神様ですか?」
「ん?そうだけど……あなたはどうして私が見えるの?」
「それは……」
初対面の人に何聞いてんだろ…… 何か事情があるのかな? それかウチに何か要因があるのだろうか?「それよりも、どうして私のことが分かったの?」
「それは……その、私が……」
「おーい、葵ー、そっち交渉終わったか?」
え?もしかして……まだいるの?! しかもこの感じ…… 凄い神力を感じる…… いや、それだけじゃない…… この子もかなり
「ん?あ、あぁ……えっと……言ってなかったか……」
「うん……?」
「私は……ほんとは、天才陰陽師の一家の末裔で生まれつき神様しか見ることの出来ない、西園寺葵っていうちっぽけな人間ですよっ」
「そう……なんだ」
天才陰陽師……西園寺……か。
そういえば、千年前に聞いたことがある…… 西園寺、宮野、寺田、そして安倍。 この4人がウチを霊と思い祓いに来たのは覚えてるなぁ……「それで...その、私が来た理由なんですけどっ、あなたを迎えに来たんですよ。澪《れい》さん」
「私の……名前を……」
それよりも…今、迎えに来たって言った? ウチを? なんのために?それに、なんでウチがここにいたことが分かったのかってことが気になるところなんだけれど……
それだけ、あの子がウチの事調べてた…ってことなのかな。「私の誘い、乗りませんか?」
「……私は、ここを守らなきゃいけない。ただここにいるだけでもこの土地の守り神としての覚悟があるから、その誘いは……」
「そうですか………」
「ごめんね、あおい……ちゃんだっけほんとにごめんね」
「い、いえ……いいんですよ…でも、私諦めないから…」
「え……?」
「私絶対!!あなたを迎えに行きます……それで必ず…私と一緒に暮らしてもらいますから!!」
と言い、葵と言われていた子はウチの前から居なくなった。
「不思議な子だったなぁ……」
でも、ウチの姿……見られてたんだ……
嬉しいのか…わからないけれど、それでもこうやって人と会えたのは嬉しい事なのかな。「でも…近いうちにウチは消えるからな……その間にここの土地神として役目果たさないと……」
あの子と出会えること…… 多分無いかもしれないけれど、消えるまでの役目を果たすまでとりあえず集中しようと思った。だけど、ほんとにこの先。
葵と名乗る子と一緒になる日が来ることがあるなんて神様というのは分からないなぁって思ったのは言うまでもない。to be continued
落ちていく。 落ちていく。 落ちていく。 どんどん。 どんどん。 どんどん…と。 暗い。 暗い。 暗い。 暗い。 闇の底に…… いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい…… 分からなくなるくらいまで。 闇のそこ。 深い、深い…… 闇の底へと…… 落ちていく所まで落ちていってるいる。 いや…… もう既に。 闇の底にいるのかも知らない。 だから。 私は、まだ落ちていく可能性がある。 それは分からないけれど。 でも……私は…… 私は…… あれ…… なんで……こんな事になってるんだっけ…… この感覚…… そういえば……前に…… そっか…… 思い出した…… これは…… 「へぇ、ここの神様ってほんとにいるんだ」 何かの道着を着ている紫髪の少女が鳥居の前でいきなりそんなことを言う……… この人……酷すぎる…… いや、ものすごく酷い。「何?あなたウチに用?」「用って程じゃないよ、ただ倒したくてさ。あんたを」「やめといたら?」「なんでさ、だって私はここら一体の神様を除霊してきたんだよ?」 除霊?除霊って言った?! 神様を除霊するほどって……この子相当……「へぇ、ならやってみるか?」 れいさ
ー数日後ー 「はぁ……はぁ……」 やばい……段々神力の維持が困難になってきた…… これは……ほんとにまずい…… この土地に神力を注ぎ込みすぎたか…… それとも……やっぱり、人間になるのか…神としての役割を終えて……死ぬのか…… どっちか、なんてわかるわけが無い。 実際、お母様がどうして死んじゃったのか……そんなの今になってもわかんない。 1000年生きてきたけれど手がかりすらない。し……ウチも見つけようとしたけれど今となっては知らない子の方が多い。 もう、陰陽師や色んな妖怪との戦い、はたまた神の力を使い果たして消えてしまった子の方が多い。 だからこそ昔のことを知っていて尚且つ強大な力を持っている神として残っているのはもうウチしかいないし…… どうしようかな…… いやいや…そもそもそれどころの話じゃないだろう…… 今は自分の身体の心配をするべきだ。 こうして……今にでも死にそうな身体をしているのに何も出来ないだなんて…… 終わりもいい所だ…… 「もう…このまま…誰にも見つからずに…死ぬのかな……」 その方が、この土地にも迷惑をかけないし……ちゃんと力を使い果たして死んだ方が…… いいのかもしれない…… 「そう思ったはいいけど……」 眠気、怠さ、神力がどこかに持ってかれる感覚といい…… ほんとにこれ…… 並の神が耐えられるものなの……? 完全に…殺しに来てる気がするんだけど…… もう、耐えることすらできない気がする…… 詰みだ。 これは……詰んでしまった。 何も出来ずに
お前、もう時期死ぬぞ?』 やっぱり……カンナさんには気付かれてたか…… 神として、段々維持が出来なくなってしまっている。 それか、信仰心が既に失われていたから遅かれ早かれ死ぬということは確定していたのだろうか。 だから……姿が見られていた。 それだと合点がいく。 でも、それだとしてもだ。 私自身そんなに信仰力や神力が仮に失っていたとする。 それで姿が見られたのなら、やっぱり神力が弱まってたとしか考えられない。 葵ちゃんが凄い、って訳じゃないとウチが勝手に睨んでるだけだけど。 多分葵ちゃんの能力って神力を司るものを見ることが出来るんだと思う。 あの話の素振りだと、カンナさんが見れたのはそれだけ神力が弱かった何かに宿っていたから見れたんだと勝手に予想するけど…… 多分、元々そういうのを子供の頃から見れていた…いやカンナさんを見れていた。 そこからあっさりと契約にこぎつけたんだと思う 勝手な予想だけどね。「ふわぁぁぁ……眠い……あの警告を受けてから凄い眠いのが酷くなった気が」 神としてそろそろ限界が近いのか。 それとも、それだけ信仰心、神力が共に薄れてきているのか。 どっちとも考えられるからこそ厄介だ……「何とかして……起きないと……」 そうしないと、約束が叶えられない。 それに、陰陽師の約束は物凄く重いもの。 破ってしまったなら神だとしても、とてもえげつない事になるってことをお母様から聞いたことがあるから何とかして起きないと……「っと、澪さーん?」 ヤバい……声は聞こえるのに凄い眠気が来て…… 起きれる自信がない…… いや……違う…… 神力自体が失われている気がする、吸い取られてる感じもする…… 昨日は全然感じなかったのに…… これは……一体……「澪さん?!大丈夫?!」「ぇ……大丈夫……だい、じょうぶだよ〜」「もう!!全然ダメじゃん!!」 必死に心配してくれている なんでこんな…… 抜け殻みたいなうちの事……心配して…… もう…ほんとに優しすぎるよ…… でも、助けるって言ってもどうやって助けるんだろ? この子には能力があんまりないと思ったんだけど…… もしかして…この膨大な神力の正体って…… まさか……「回復……」 段々、力が戻ってきてる感じがする…… それに、葵ちゃ
「あなたは……誰」「お前と同じ、神だよ。元、だけどな」 そう言うと姿を現した。 黒くて全然見えないのは夜のせいか、それともモヤのせいか…… てか元神って……ということは…… 昨日居た、例の式神か……「残念だが、その内容を見ちまったのならお前をここで殺さないといけなくなるんだが…」 凄い殺気...…まだ姿が見えないのに只者じゃない感じがする……「そうか……」 なら、久しぶりに本気を出すしかないようだ…… この土地の人に手出しなんか絶対にさせない!! お母様から引き継いできたこの、素晴らしい土地を!!「ふはっ、どうやらやる気みたいだなぁ……いいぜぇ…...あたしも力を出せなくてうずうずしてたところなんだよ……!!」 と言うと、恐ろしい程凄い気迫が来た。 これは…… 1000年前も見たことがあるような…そんな感じの…… でもやっぱりこの式神、昨日居た感じからしてただ者じゃない…… 全盛期のウチより強いんじゃない? 辺りがピリついてる…… 凄い、多分普通の人じゃ立ってられないくらいのそんな圧がくる……「やばいかもなぁ…...でも…...!!」 手を下にかざし……陣が浮き出る。 そしてそこから、ウチの愛刀が出る。 その名もムラサメ 天を切り裂き、英気を吸い取る。 聞こえは悪いがこの刀に切られたものは何がなんだろうと自身の力を吸い取られる。 それが例え……神だろうと...…!!「その刀、ムラサメだろ?」「へぇ、知ってるんだ」「そりゃあ、1000年前の決戦の噂…...知ってるからなぁ。まさか、ホンモノにお会い出来るとは!!」「てことは……ウチの実力知ってるわけか」「ご名答」 再び圧が増す…… やっぱり……これは……「最強に…...近い
「ふぁぁ……眠い……」 神様の夜は早い…だなんて何言ってんだって思うけど実際七時に起きてるのだからしょうがないだろう。 それにしてもやっぱり人の往来は激しいなぁ… いつ見ても驚く程だよ。 なんせ昔じゃ考えられないものばかりなんだからずっと驚きっぱなしだ。 この土地の人の話を聞くと近いうちにあの小さい鉄の塊がウチたちみたいに空を飛ぶみたいだ。 ほんとかどうかは分からないけど、もしそれが現実になったらとんでもない事だ。 多分、ウチだけじゃなくて神様達みんな驚くと思う。 それだけ人間達はほんとにすごいのだ。 こんな短期間でものすごく成長出来るのだから驚きが隠せないよ。「人間って凄いなぁ」「そうだよねぇ」 と言った方の隣を見てみると……「ん?」「ん?」「えぇ?!な、なんでここに?!」「そ、そんな驚くことある?!」 いや、驚くよ。 だって昨日会ったばっかの子がこうしてまた来てるんだから。 それに、ほんとに来るだなんて思わなかったし。「来ちゃ…ダメでしたか?」「いやダメってわけじゃないけど、どうしてウチ……じゃなかった私なんかに会いに来たの?」「だって…どうしても会いたかったんだもん……」「?!」 何この子……凄い健気だ…… それに、こんなウチなんかの為に昨日言った約束を覚えてくれたなんて……約束……約束か…… いや待って、約束ってさ陰陽師にとってそういうのは重いもの……縛りとかになるんじゃ…… そんな事無いのかな? いや、特にこの子の家がどの家系によるけど…もしかしたら約束によって、縛られるんじゃないと思う…… そうだったら…… ここに来られないよう結界を張るしかないかもしれない……「ねぇ……葵ちゃんって……どこの陰陽師の子なの?」
『澪《れい》…澪は絶対に人間の前に姿を出しちゃいけないよ』『どーして?おかあさま』『それは、ウチ達が神様だからよ。だから決して人間に姿を見せたらウチ達やその人間にも不幸が降り掛かってしまう。それを避けるためなのよ』『ふーん』『今はわからなくていい、だから大人になったらわかるかもね。だって、うちのれいは凄いんだから』 なんて…昔お母様に言われたことを不意に思い出した。 あの後なんて言ってたんだっけな。 今はもう覚えてない。 だって凄い小さい時だったんだから。 でも、どうしてだろ。 お母様が亡くなった後もこの約束というか契というか… それをずっと守り続けている。 だからこそ、人間がどんなものかなんて今はわかるけれど触れることも見ることも出来ない。 なんせ、神は人間と触れてしまったら消えてしまうのだから。 夜 この暗い暗い夜の帳が降りている中、本来なら誰も居ないと思うはずなのだが。 今は、こんなにも明るくなっていてとても信じられないけれど昔はほんと辺り一帯が暗くなって提灯の灯りがないと山の闇に飲まれてしまうことが多かったのだが…… この、奇っ怪な建物が乱立したこの土地を見て驚きというものが隠せないが今ではもう慣れてしまったものの。 夜のこの暗い闇の中を歩き回る人間たちとそれを照らし出す無数の光がとても当たり前になっているのがほんとに今でも驚きだ。 昔では到底考えることが出来なかったが人々の成長によって生まれたそれらはほんとに凄いと私は今でも思う。 それに、人間同士の大きな争いの後瞬く間にこんなものが出てきたのだから。 ほんとに凄いなとつくづく思う。 そんな事で驚くのも束の間。 もっともっと大きい物も出てきたり、電車と呼ばれる箱のものが人を乗せて動く場面を目撃したり、はたまた空には鳥のような…&hel