妊娠中の私に酒を強いた夫、もう二度と愛さない妊娠3ヶ月の私に、夫の黒崎翔吾(くろさき しょうご)は言った。彼の秘書・白石蛍(しらいし ほたる)の代わりにお酒を飲んでやれ、と。
「蛍は体が弱いんだ。お酒なんて飲めるわけないだろ。お前がちょっと代わってやれよ」
「もう酔っているから飲めない」と断ろうとした時、翔吾は無理やり私の手にクラスを握らせた。
「お前がどれだけ飲めるか、俺が一番よく知ってるんだ。嫌そうな顔しないで、全部飲め!」
そう言うと、翔吾は取引先の人たちに自慢げに話し始めた。
「うちの妻は、昔は女一人でビジネスの世界で戦ってきました。その武器は、お客さんといくら飲んでも酔わない体を持っていることです。さあ皆さん、どんどん飲ませちゃってください!」
すぐに周りから不快な合いの手が飛んできた。見渡せば、蛍が翔吾の後ろに隠れて怯えたようにすすり泣きしている姿が目に入った。
「社長、こんなの怖いです。もう帰りたいですよ……」
私が口をはさむよりも先に、翔吾は心配そうに彼女を先に帰らせた。酒のことしか考えていないような男たちの中に、私を置き去りにした。
私は力なく笑い、グラスの中身を一気に飲み干した。
何年もこんなことを耐えてきたのに、返ってくるのは屈辱だけ。
こんな結婚生活、もう終わりにしよう。