戦争や抑圧をテーマにした作品のサウンドトラックは、感情の奥行きを表現するのに秀でたものが多いですね。'シンドラーのリスト'のイタ・パールマンによるヴァイオリン演奏は、ユダヤ人迫害の悲劇を音で描き切っています。特に『Theme from Schindler\'s List』では、弦楽器の震えがまるで人間の慟哭のように聞こえてきます。
もう一つ注目したいのが『パイレーツ・オブ・カリビアン』の裏側にある音楽。海賊たちが植民地支配に抵抗する物語ですが、クラウス・バデルトの作曲した『He\'s a Pirate』は、自由を求めて戦う者たちのエネルギーを圧倒的なブラスセクションで表現しています。低音部のうねりが屈服と反抗の狭間を的確に表現しているんです。
メロディと感情の結びつきを想像すると、まず求めるのは“真実味”だ。かけおちの物語は逃避と約束、そして罪悪感や歓びが同居する微妙な心の地図だから、音楽が嘘をついてはいけない。僕は静かなモチーフから始めて、距離を縮めるにつれて少しずつ音像を厚くしていく作り方が好きだ。ピアノやアコースティックギターの素朴なフレーズが主役を支え、ストリングスや控えめなエレクトロニクスが情緒の波を描く。重要なのは反復するテーマが登場人物の決断とともに変化すること。これによって観客は音の変化で二人の関係性の進展を感じられる。
鳴り物が多すぎるのは避けたい。旅の場面では足音やエンジン音などの環境音をうまく取り入れて、音楽と現実音が溶け合う瞬間を作ると効果的だ。歌ものを入れるなら、歌詞が説明的にならないこと。断片的なフレーズや言葉の繰り返しが、場面の空気を壊さずにキャラクターの心情を補完してくれる。
最後に、沈黙の扱いが肝心だと考えている。大きなクライマックスの直前や余韻を残したいシーンでは音を引くことが、音楽の説得力を何倍にもする。『Eternal Sunshine of the Spotless Mind』のような、繊細で矛盾した感情を音で表現する映画が好きなら、この方向性はかなり有効だと感じる。