『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で素子がデータの海に溶けていくシーンは、記憶の喪失を詩的に表現していた。技術が人間性を侵食するテーマと重なり、過去を「消去」する行為そのものがアイデンティティの危機として描かれる。
『時をかける少女』のヒロインがタイムリープで過去を書き換えるたびに薄れていく記憶も秀逸だ。ピアノの鍵盤を押すように少しずつ失われていく描写が、儚さと切なさを際立たせている。特に他人の記憶にしか存在しなくなったエピソードの積み重ねが、存在証明の不確かさを浮き彫りにする。