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月明かりに映る想い

月明かりに映る想い

By:  リトルチェリーCompleted
Language: Japanese
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日高璃奈(ひだか りな)が十年も愛し続けた男・藍沢翔(あいざわ しょう)に子供ができた。それを知ったのは、よりによって彼女が最後だった。 彼女は個室の外に立ち、男が満面の笑みを浮かべながら腕の中の赤ん坊をあやし、親しげな口調で仲の良い友人たちに念を押している様子を見ていた。 「俺と真琴に子供ができたことは、しばらく内緒にしておいてくれ。じゃないと、璃奈が知ったら、きっとまた騒ぎ出すから」 彼女は彼を十年も想い続け、留学前に告白した。 彼はあの時、「帰国したら、付き合うよ」と言ったのに。 しかし、現実はあまりにも滑稽だった。 今回、彼女は騒ぎ立てることも、ましてや問い詰めることもしなかった。 なぜなら、彼女はすでに翔のことを完全に諦める決意をしていたからだ。

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Chapter 1

第1話

日高璃奈(ひだか りな)が十年も愛し続けた男・藍沢翔(あいざわ しょう)に子供ができた。それを知ったのは、よりによって彼女が最後だった。

彼女は個室の外に立ち、男が満面の笑みを浮かべながら腕の中の赤ん坊をあやし、親しげな口調で仲の良い友人たちに念を押している様子を見ていた。

「俺と真琴に子供ができたことは、しばらく内緒にしておいてくれ。じゃないと、璃奈が知ったら、きっとまた騒ぎ出すから」

彼女は彼を十年も想い続け、留学前に告白した。

彼はあの時、「帰国したら、付き合うよ」と言ったのに。

しかし、現実はあまりにも滑稽だった。

今回、彼女は騒ぎ立てることも、ましてや問い詰めることもしなかった。

なぜなら、彼女はすでに翔のことを完全に諦める決意をしていたからだ。

……

「翔さん、子供のお披露目会を盛大に開いて、璃奈さんの耳に入っても平気なんですか?」

翔は、ベビーカーの中で眠る赤ちゃんを見つめ、璃奈が見たことのない優しい眼差しを向ける。

「俺の大事な子供のお披露目会だ、盛大にやるに決まってるだろ。

安心しろ、もう手を回して、情報が漏れないようにしてる。彼女にはバレないはずだ。

まあ、万が一、彼女にバレたとしてもどうってことないさ。ちょうどいい機会だから、はっきり話をするつもりだ。今、彼女に隠しているのは、彼女が戻ってきて、俺が丹精込めて準備したお披露目会を邪魔されるのが心配なだけなんだ。

知ってるだろ、璃奈は昔からまるで遠慮を知らないからな、お嬢様らしさなんて微塵もないんだ」

璃奈は個室のドアの外に立ち、ドアの隙間から聞こえてくるはっきりとした会話を聞きながら、全身が凍り付くような感覚に襲われた。

翔は……私のこと、嫌っているのかな?

でも、あの人ーーあのとき確かに、私に好意があるって言ってくれたよね?

もし数日前に「会いたい」と電話をかけてこなかったら、私はわざわざ休暇を取って帰国なんてしなかったのに。

彼女は元々、翔にサプライズを仕掛けたかったのだ。

しかし、サプライズは驚愕に変わり、翔の本音を聞かされることになった。

ドアの外に璃奈がいることに誰も気づかず、個室内の会話は依然として続いていた。

「自分の義妹の璃奈に長年一方的に好かれて、翔さんはさぞ苦悩なさったことでしょう。でも、今はやっと相手の束縛から解放されて、人生の歩みを加速させることができるんですから。

でも、翔さん、来月の結婚式のことも伏せておくんですか? それは璃奈さんに申し訳なくないですか?」

翔はベビーカーの中の子供にキスをする。

「その時になってから考えるさ、しかるべきタイミングで璃奈にちゃんと話すつもりだ。

何があっても、真琴を悲しませるようなことはしない」

その時、秋野真琴(あきの まこと)が哺乳瓶を持って個室の休憩室から出てきた。

「翔、私のことは気にしないで。璃奈はまだ子供なだけだから、分かってないだけよ。もう少し大人になれば、きっと自分で理解してくれると信じてるわ」

すかさず誰かがへつらうように言った。

「やっぱり奥さんは心が広くて物分かりが良い。翔さんが奥さんにぞっこんなのも当然だ。もし俺が奥さんみたいな女性を娶ったら、毎日大事にして可愛がるだろうな」

「その通りだ。璃奈さんは奥さんと親友なのに、どうして奥さんの美点を見習わなかったんだろう。もう二十歳を過ぎているのに、まるで手に負えない子供みたいで本当に嫌になる」

たちまち、個室内は哄笑に包まれた。

ドアの外にいた璃奈の心臓は、激しく収縮し、鼓動が止まりそうになる。

彼らの言う通りだ。彼女と真琴は十年来の親友だ。

璃奈は留学前に、真琴に翔のことをしっかり見守ってくれるよう、わざわざ頼んだ。

当時、真琴は快く引き受け、「必ず璃奈の好きな人を守る」と胸を張って約束した。

しかし、一年以上が過ぎ、彼らにはすでに娘が生まれていた。

まさか、テレビでよく見る親友が恋人を奪うというドロドロの展開が、自分の身に降りかかるとは、璃奈は夢にも思わなかった。

個室の中で抱き合い、幸せそうな家族の姿を見て、璃奈ははっと我に返った。

彼女は感電したかのようにドアノブから手を引っ込めた。

今、このドアを開けたところで何になるのだろうか?

今の彼女には、翔と真琴を問い詰める資格すらないのだ!

なぜなら、彼女と翔は正式に付き合ったことなど一度もないからだ。

留学前、翔は口頭で彼女に約束した。

「二年後、君が帰国した時に、まだ俺のことが好きだったら、一緒にいよう」

だから、翔と真琴が結婚しようが子供を産もうが、それは彼らの自由だ。

璃奈はスマホを取り出し、LINEを開くと、一番上に表示された翔のアイコンが目に飛び込んできた。

先週、翔から「会いたい」というメッセージが送られてきて以来、彼は璃奈に一切連絡を取っていない。

璃奈がどんなメッセージを送っても、彼は一言も返信しなかった。

今日まで、璃奈は彼が仕事で忙しいだけだと思っていた。

今となっては、仕事で忙しいのではなく、自分の子供のお披露目会の準備で忙しかっただけなのだ。
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