あのシーンは単なるアクションではなく、社会への反抗と自己解放の象徴として深く刻み込まれる。パロディ化されがちな「自己破壊」テーマを、ここまで美学に昇華させた演出は他にない。エドワード・ノートンの茫然とした表情と、ピクシーズの『Where Is My Mind?』が妙にマッチしていて、狂気と悟りの境界線が溶けていく。
面白いのは、彼が獄中で『貧乏人のための経済学』を読んでいる細部。80年代の強欲が転落した先に、皮肉にもリーマンショック後の現実が待っていたという予言的要素。オリバー・ストーン監督の社会批評が、キャラクターの末路に込められている。株式相場のチャートが映し出す『Greed is good』の文字のフェードアウトが、時代の終わりを告げる演出として効いている。