『ゴルゴ13』の主人公デューク東郷は、まさに私利私欲の塊のような存在だ。彼は高額な報酬のためにのみ動くプロフェッショナルで、依頼人の政治的立場や倫理的問題には一切関心を示さない。
面白いのは、彼の冷酷無比なスタンスが逆に清々しく感じられるところ。世の中の建前や偽善を剥ぎ取った、赤裸々な欲望の美学がある。特に冷戦時代のエピソードでは、東西両陣営から同時に依頼を受けて双方を欺くなど、
利己主義の極致を見せつける。
それでいて読者が彼を嫌悪しないのは、卓越した能力と一貫した姿勢によるのだろう。欲望に忠実な生き方にも、ある種の美学を見出せる好例だ。