聴覚に訴える表現が強烈な作品といえば、'ザ・ブック・シーフ'の終盤が忘れられない。主人公の運命が決まる場面で、ナレーターの息遣いまでが緊張感を増幅させる。
オーディオブックならではの体験は、音楽と効果音の使い方にある。'世界の終りとハードボイルドワンダーランド'のラストシーンでは、電子音がゆっくりと消えていく様子が「喪失」を物理的に感じさせた。文字では伝わりきらないタイミングの妙が、耳から直接脳に染み込む。
最近再発見したのは'Flowers for Algernon'の朗読。進行性の病気を患う主人公の思考が崩れていく描写が、声優の演技でより生々しく。最後の日記の朗読速度が徐々に遅くなる演出は、聴いているこちらまで呼吸が苦しくなった。