音色から入るなら、僕はまずイントロの持つ“呼吸”を聴いてほしい。
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harua'のサウンドトラックの中で真っ先に注目してほしいのは、メインテーマに当たるあの曲だ。柔らかなピアノのフレーズが繰り返される中で、徐々に弦が重なり、やがて金管が短く顔を出す──その展開は物語の核をそのまま音で表現しているように感じる。旋律自体は一度聴けば忘れにくく、作品随一のモチーフとして各章で変奏されるため、アルバム通して聴くと“再発見”の楽しさが何度も襲ってくる。編曲の巧みさやダイナミクスの付け方が好きな人には特に刺さるはずだ。
次におすすめしたいのは、場面音楽的な短いインスト曲だ。自然音や電子的な残響を織り交ぜたこのタイプのトラックは、ただの効果音ではなく情感を直接揺さぶる役割を担っている。個人的にはそこにこそ作曲家の繊細な観察眼が見えると思っている。たとえば、あるキャラクターの回想シーンで用いられる短いハープのモチーフは、その後の主要テーマの一部として回帰することで、聴くたびに胸の中で線が繋がる感覚を与えてくれる。
最後に、エンディングに流れるミニマルなピアノ曲も外せない。シンプルな和音進行だけで余韻を残す設計は、余白を愛するリスナーにとって宝物だ。リズムや装飾音に頼らずとも感情を呼び起こす力がある。その意味で、このサントラは“大きな期待感を抱かせる主題曲”と“語られない部分を音で補う短い挿曲”が理想的なバランスで共存していて、繰り返し聴くほど味が出るタイプだと断言できる。聴き込みながら、各トラックが物語のどの瞬間と呼応しているかを追うのがとても楽しいよ。