『僧侶たるもの、女人との接触を避け、生涯独身であるべし』をモットーに生きてきた好野健(未剃髪)が自分の家の寺、萩野寺の経営難で突然元同級生の美少女(タケルは女に疎くて美女かどうかの区別がつかない)と婚約することになる。同棲する事になっても当初は『欲情しない』と言い切っていた。二人の距離は縮まるが、当然二人の間に壁も‼どうなっていくの、二人の生活はうまくいくの?
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それが俺、好野健(タケル)のモットーだ。
今朝も精進料理を食べる。
のが理想なのに何で…
「今日は精のつくように朝からニンニク入りのカレーよ!」
と母、美子(ヨシコ)は言う。
「精進料理といつも言ってるでしょう?」
と俺が言うと、横から父、康二(コウジ)が
「お前は自分のモットーを他人に押し付け過ぎだ。そしてなぜ自分が存在するのかを考えなさい」
うーむ、これでも俺の師匠だし、考えてみよう。宇宙規模の命題だな。
父が突然言い出した。
「Q1.何故お前は母親がいるんだ?」
はぁ?命題のヒントなら要らない。
「Q2.何故お前には姉妹が3人もいるんだ?」
…なんか読めてきた。
「親父…俺は僧侶は絶対だと思っていた。モットーとしていることを守っているもんだと思っていた。違うと言いたいんだな?」
「正解だ。少しは世界が広がったみたいだな。タケル」
「なんか、気が抜けた感じだ。ご馳走様」
うちは代々寺。稼ぎは檀家さんの思いやりでできている。
代々ってどのくらいだろう?うーん、江戸末期に建て直したって聞いたな。
だからか、所々モダンな感じもする。敷地内に自宅もあるし。門からは見えないけど。
それにしても、今朝のやり取りはちょっと腹の虫が~‼
空腹ではないが、腹が立つ‼
もーなんか、どうでもいい感じだ。家を継ぐからと言っても剃髪済みではないが、茶髪にでもしたい感じ?
俺はかなり遅くにやってきた反抗期というような様相で自分の見た目を変えようとした。
茶髪は無理だな。という結論にすぐに至り、結果ピアスで終わった。
翌日の親父は怒髪天。髪ないけど。
「檀家さんを迎えたりするのに、ピアスなど!」とかなりのお怒りだった。
開けてしまったものは仕様がない。そこは諦めてもらおう。
ピアスに袈裟という風体で僧侶の務めを果たすことにした。
「ここは、萩野寺ですか?」
寺の門の前の女性に尋ねれた。
(そうだよな。門の文字はもう読めないくらい古びてるしな…)
「えーと、ここではなんですから、中へ案内します」
「お前の案内はなんかいかがわしい‼申し訳ありません、愚息が。渡辺様ですね?こちらへどうぞ」
俺は真面目なのに…。見た目で人を判断するとは。
ん?渡辺?
「渡辺飛鳥か?」
「呼び捨てとは何事か⁈タケル!」
「俺が中学の時の同級生」
向こうの方がビックリだろう。同級生が僧侶やってて、ピアス…。
「中学の同窓会にも来なかったからわかんなかったけど、僧侶さんなんだね」
この頭で同窓会はナイワー。
どうしたものか?私が手配した業者とは明らかに違う集団が別棟を検査している。それをタケルが仕切った。集団をまとめているのは、別の紳士だが。検査をしているのはタケルと同年代か?人海戦術?しかし使っている機材は専門的な物ばかりだ。「どうした?親父?」「いや、あの集団はなんだ?」「親父にも内緒ー」内緒?タケルに秘密事を作られた。いや、自業自得と言えばそれまでだが。今日、別の業者も手配してあるのだが…。「タケル、今日は別の業者も手配済みだったんだが?」「あー、それキャンセルで」自分でこれだけの人数と機材などを揃えたというのか?「親父が手配した業者じゃ信用できないからな。おちおち風呂も入れない」言われたもんだな。しかし、まさか息子にここまで言われるとは‼「僧侶としては尊敬に当たっても、覗きとか盗聴に盗撮はなぁ…。僧侶としてもどうなんだろう?」親父は思う。俺の威厳はどこに行ったのか?威厳?沽券?『そういえば、最近のタケルさんって前みたいに凝り固まった感じじゃなくなったね。いい傾向』と、学生集団を見てると、飛鳥からメールが届いた。そう言えばそうだなぁ。俺のモットーからは遠ざかってるな。少なくとも、恥ずかしながらも飛鳥を求めて必死になってる。やっぱカラダの関係になりたいという欲望、煩悩が俺を支配しているなぁ。そこんとこは僧侶としてどうなんだろう?いいのか?親父的にはOKだろうな。なにしろうちは子沢山だ。今のところ4人きょうだい。今後増える可能性も考え得る。学生には紳士な教授が『盗聴器・及び盗撮器を見つけたら単位を倍出す』と、言った。学生は目の色を変えて取り組んでいる。今日大学に行って、今日いきなり訪問だから学生が逆に仕掛けていくということはないと考えられる。工学部の教授は「タイムリミットは5時半だ。その後は撤収。頑張れよー」との言葉だ。「俺、盗聴器発見しました‼教授、調べてください‼」という学生の声。「うーん、これはダミーだね。よくできてるけど違うよ。近くに本物あるんじゃない?頑張って」(見て分かるんかい!教授も参加してほしい‼)「俺も見つけた」「俺も」「俺も」「忙しいなぁ。一応チェックするけどさぁ。あ、これもダミー」(ダミーが多くないか?)素人が発見したつもりになるように仕向けてる?教授曰く「ダミー持ってきたら、
まさかタケルさんがこんなに女子大生人気があるとは思わなかった。剃髪前にここに来てたら……イヤー!実際来なかったからいいの‼剃髪後でもこれだもんなぁ…。「で、タケルさんがソロで女子大生に人気ってのはわかった?それで私と会話するのよ?そうすると『どういう関係なの?』とかそういう話が囁かれ始めるの!」「どういう関係も、……夫婦だけど?」タケルさんは私の腰を引き寄せた。「そのために飛鳥には指輪してもらってるわけだし。変なのに言い寄られてないだろうな?」「私は大丈夫よ!」その時、研究室の奥の方から咳払いが聞こえた。「教授?!」「あ、いつもうちの飛鳥がお世話になっています。私は飛鳥さんの夫で萩野寺で僧侶をしています好野健と申します」そう言い、脱帽した。「僧侶さんか、剃髪済みなんだね。それで今日は帽子を?」「はい。ここに来るにあたって悪目立ちをすることは本意ではないので」「夫ということだけど、飛鳥さんは苗字も変わっていないし、事実婚というやつかな?」「教授には黙っていて申し訳ありませんでした!」「構わないよ。手続き面倒だもんねー。籍いれてからがまた手続き三昧で大変だろうけど頑張って。卒論も」「卒論は頑張りますよ、それは。卒論のために卒業必要単位はきっちり3年には取ってます」「それは頼もしい。タケル君も好青年で安心だ」「飛鳥、とりあえず会えてよかった。親父も俺が死にそうな時に盗聴器仕掛けるとかしないだろうし。一応業者当たろうかな?」「教授、あの…私事なんですが、私とタケルさんの別棟を新築したんですけど業者さんが盗聴器やら盗撮器やらを仕掛けていったんですよ。そういうの除去してくださる業者さんに知り合いいらっしゃいませんか?」「盗聴器とかの依頼をするのは私の父です。二人の寝室をのぞいたりもしています」「業者というか、工学部の学生に研修という名目でやらせるの楽しそうだね。早速工学部の知り合いの教授に連絡してみるよ。あ、それ犯罪だからあんまり他言しない方がいいよ」「ありがとうございます!」俺と飛鳥は2人で顔を見合わせた。「OKでた。早速今から作業をお願いしようか?場所は萩野寺の別棟だね?今日の午後の研修まるまる使ってやってくれるってさ」「私は家にいた方がいいですね。では、これで失礼します。飛鳥はあとでなー。教授、飛鳥の事よろしくお願いしま
「特に問題はないですよ。普段の行いがいいんですね。やはり僧侶の方は徳が高い」「もう、帰っていいですか?」「うーん、頭打ってるでしょ?あとからってのがあるので一日入院です」やってしまった……。飛鳥に戻るって約束したのにな。俺だって今晩楽しみにしてたのに、残念だ……。飛鳥はうまくできてるかなぁ? 病室でのこと 飛鳥がその日のうちに見舞いに来た。「タケルさん!大丈夫?」「飛鳥‼悪い!戻るって約束したのにこのザマだ」「無事でよかった。1泊入院したら戻れることになってる。2階はうまくいったか?大丈夫よ。タケルさんにケガをさせたってのもあるみたいで大きな動きも小さな動きもなかったわ」「お前は男に口説かれなかったのか?」「それはホラ、私にはコレがあるでしょ?」と飛鳥は得意げに左手薬指の指輪を見せた。「おぉ、兄ちゃん。若いのにこんなきれいな嫁さんがいるのかい?うちのと交換してもらいたいなぁ」「こいつは俺のです。お断りします。交換しませんよ」「おい、きっぱり断った。いいねぇ。若いねぇ」「タケルさん、私はもう帰るね。帰って明日の大学の用意もしなきゃ」足早に飛鳥は帰っていった。遠くで飛鳥が転倒するような音が聞こえて、ちょっと笑えた。それにしても…。入院が続くとここ(同じ病室)のオヤジ達に俺と飛鳥の事をいじられっぱなしだ。やれやれ。「おかえりなさい、タケルさん。見て、一日でお風呂場の施工が終わったの。ちゃんと見てたわよ。なんにも妙なことはしてなかった。鏡もほら、新しいものになったでしょ?」俺はなんだか忌々しい感じがした。「鏡は飛鳥が選んだのか?」「え?工務店任せ。ダメだった?」「そんなことはないが……なんだかなケガのせいか」「おかえり、タケル」と、親父。「ああ。今度は盗聴器とか盗撮器とかつけるなよ?そして覗くな!」「そう邪険にするな」「犯罪だからな。今度やったら親だろうと警察沙汰だからな」はぁ、やっとこさゆっくりと飛鳥と過ごせる。ん?飛鳥は?「飛鳥はどこに行った?」「今日は朝早くに出かけていったけど?」確か昨日大学の用意とか言ってたから、大学か?電話をかけてみるか?いやいや、邪魔をしてしまってはイカン。そう思いながらも飛鳥に電話していた。「飛鳥?今どこだ?」「え?大学…」「帰ってきて飛鳥に会いたかったのにいなか
俺は知り合いの電気屋に『部屋が盗聴もしくは盗撮されてるかもしれないから、だれか紹介してくれ』と頼むと、その日のうちに専門家を紹介してもらった。「佐藤と言います。お世話になります。お寺ですか?」「聞いてませんか?診てもらいたい部屋は母屋なので、こちらへどうぞ」「この部屋を診てください」と、俺は佐藤さんに言った。なにやら、いろいろと専門的な機械が出てきて診査が始まった。(お寺ですか?っていう言葉が怪しいが、まだ確信じゃないからなぁ)「あ、盗聴器ですよ。この意味もなくついている延長コード」(マジかよ、今までのも聞いて知ってんじゃん。何故見る?)「あ、この襖の取っ手。盗撮器ですね。レンズのところにガムテープでも貼っておきましょう」そうこうしながら、結構な数を回収した。「ありがとうございました。自分の私生活をのぞかれるのは嫌なので。ところで、ここへは何度目ですか?初めてきたわけではなさそうでしたので」「あなたは賢い。3度目ですよ。初めてきた時はお寺の方だったので。2度目はここへ盗撮器・盗聴器を仕掛けに来た時、依頼主はあなたの御父上ですよ。そして今日です。安心してください。私が仕掛けたものはすべて回収しました」「他にもあるということですか?何故それを除いてくれなかったのか?あなたの仕事は盗聴器・盗撮器の除去のはずだ」「私には見抜けなかった。というのが理由ですね。御父上の性格ならばあと2・3人はあたった方が賢明かと思います」やっとこさ、増築された。親父の趣味なのか?盗聴・盗撮には気をつけよう。「おお、出来たのか。どれ、わしも中を確認しよう」「お義父様!それはいけません。まるで工務店の方を信頼していないようですわ」「お、おお。わかった」ナイス、飛鳥。そんじゃ、俺らで昨日確認したように動こう。俺は2階。飛鳥は1階だな。昨日の晩のこと。俺らは盗聴や盗撮を避けるように筆談をした。もちろん、会話をしながら。「やっと私たちの部屋ができるのね!」 『どんな作戦でいくの?』「そうだな。こことは違ってまさに二人っきりって感じだよな」 『俺は2階を見て回る、飛鳥は1階でいいか?』「やだー、なんか緊張しちゃう」 『了解』「俺が全部解してやるよ!」 『じゃあ、明日はよろしく』「明日、移動かな?なんか楽しみになってきたー」「俺も」「おやすみなさい
人間手に入らないものほど欲しくなるものだと強く思う。今、飛鳥を抱くわけにはいかない。というか仕事中に煩悩まみれ。同じ部屋で寝ているから、拷問のようだ。たまにスヤスヤと寝息を立てやがってと思うときがある。ああ、せめて違う部屋ならなぁ。…きっと夜這いに行くだろう。少し前まで欲情しなかったのになぁ。そんなこと考えながら仕事中でいいのだろうか?そんなこと考えながら木魚を叩いているが?そんなこと考えながら読経しているが?「2泊できそうだよ!」と、飛鳥は元気に俺に言う。「大学、無理してないか?変な男に引っかからないか?」「心配性だなぁ。私にはコレがついてるもん!」と、左手の薬指の指輪を見せようとしたんだろう。はまってない……。「嘘…。ヤダ…。大学のどっかに落としたのかな?大学の事務局に落とし物で届いてないかな?」「おい、顔色悪いぞ。わかったから、それは明日考えよう。今日はゆっくり休め。やっぱり無理かけてるんだろ?俺は大丈夫だから」(本当は大丈夫じゃない。かなり溜まっている)こんな時でもしっかりのぞいている。飛鳥が具合悪いんだから出てきて、助けてくれてもいいものを!どうしよう。指輪…。大学で落とし物のとこにあるかなぁ?拾った人がいい人ならいいんだけど。最悪質屋とかに行ってしまったら…。明日バッグの中とかよく調べるけど。タケルさんみたいに私もピアスにすれば絶対なくさなかった。指輪にこだわったばっかりに…。「飛鳥ー、大丈夫か?まだ指輪の事考えて悶々として眠れないのか?仕方ないなぁ」と、タケルさんは掛け布団ごと私を抱きしめて一緒に眠ってくれた。「これならのぞかれても恥ずかしくないだろ?」「ありがとう。ぐっすり眠れる。私は抱き枕状態だね(笑)さっきまでタケルさんの言う通り悶々としてた」「この状況は俺が悶々とするんだからな、大人しく寝ろ!」小声で会話していたが、なんだか穏やかな気分になってよく眠れた。翌日から家族によるのぞきはなくなった。翌日の夜の二人の会話。のぞきがないなら、新婚旅行を無理しなくてもいいよなー。1泊でいい。飛鳥にその旨を伝えてみよう。「のぞきがないなら新婚旅行1泊でも俺は構わない。飛鳥が無理して時間作って顔色悪くしてる方が心配だ」「それなんだけど……カメラとかない?ものすごい羞恥プレイなんですけど」「部屋に
「タケル…いつになったら飛鳥さんと身も心も結ばれるんだ?父は心配だ」そんな心配よりものぞきをやめてくれ。「家族のみんなが心配していることだぞ?」「親父…心配はありがたいっちゃーありがたいけど、こう毎日二人の寝室をのぞかれてはできるもんもできねーよ。のぞきはやめてくれ」「いーや!やめない!」(マジかよ。のぞきの連中がいなくなるまで俺がどんなに我慢で苦しんでいることか)「あの…」夕食の食卓で飛鳥は恥じらいの顔で訴えた。「タケルさんと私の部屋を夜にのぞくのをやめていただけませんか?」(ナイス!飛鳥‼その顔は演技だな?)「飛鳥さん、私たち家族はあなたとタケルが身も心も結ばれて真の家族になるのを見届けたい」「でも…あの…恥ずかしい…」「飛鳥さん、気持ちはわかるのよ。私もそうだったもの」(おふくろー‼見られてたのか?おふくろの初夜with親父)「増築中の所ができたらそこに二人で住まおうぜ?それにしてもラストのおふくろの発言には驚かされた」「そうね。のぞかれながらでしょ?私はムリ。やめてね?」「俺も絶対無理。萎える。ところでさぁ、飛鳥は危険日とか手帳につける方?」「そういうのよくわかんない。婦人体温計の説明書に書いてそうだなぁ」俺は小声で「現時点で飛鳥が妊娠したら解決じゃねー?」と、小声で言った。「んなっ。大学ちゃんと卒業したいし。私だってまだまだ二人っきりを満喫したい」ラストにしたがって小声になっていったが。「そうだ!新婚旅行ってのはどうだ?ここだからのぞかれるんだよな。俺、絶対萎えるわー」俺は‘萎える’をわざと大声で言った。「大学があるから長期の旅行はムリよ?」「俺は2泊くらいしたい!」「うーん、時間作れるかな?そのくらいなら。国内ね。その間の仕事は?」「新婚旅行を邪魔する?わけないから、親父に丸投げー」「大学の単位があと卒論だけでよかった!」「そんじゃ、今日も遅くなったな。寝るか」飛鳥には「後でな」と、言った返しに「ゴメン!生理始まっちゃった」と、言われた。「おやすみなさーい」実に健全に夜は更けた。「おはよう、タケルさん」「あぁ、飛鳥おはよう」「タケルさん、髭もそうだけど、頭も髪が生えてきてますよ?」「髭剃りでいけるのか?飛鳥ー、あとでチェックしてくれ」「ラジャー」「おはようございます。うわぁ、今朝
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