僧侶はダメですか?

僧侶はダメですか?

last updateLast Updated : 2025-10-10
By:  satomiUpdated just now
Language: Japanese
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『僧侶たるもの、女人との接触を避け、生涯独身であるべし』をモットーに生きてきた好野健(未剃髪)が自分の家の寺、萩野寺の経営難で突然元同級生の美少女(タケルは女に疎くて美女かどうかの区別がつかない)と婚約することになる。同棲する事になっても当初は『欲情しない』と言い切っていた。二人の距離は縮まるが、当然二人の間に壁も‼どうなっていくの、二人の生活はうまくいくの?

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Chapter 1

1.僧侶の規範

『僧侶たるもの、女人との接触を避け、生涯独身であるべし』

それが俺、好野健(タケル)のモットーだ。

今朝も精進料理を食べる。

のが理想なのに何で…

「今日は精のつくように朝からニンニク入りのカレーよ!」

と母、美子(ヨシコ)は言う。

「精進料理といつも言ってるでしょう?」

と俺が言うと、横から父、康二(コウジ)が

「お前は自分のモットーを他人に押し付け過ぎだ。そしてなぜ自分が存在するのかを考えなさい」

うーむ、これでも俺の師匠だし、考えてみよう。宇宙規模の命題だな。

父が突然言い出した。

「Q1.何故お前は母親がいるんだ?」

はぁ?命題のヒントなら要らない。

「Q2.何故お前には姉妹が3人もいるんだ?」

…なんか読めてきた。

「親父…俺は僧侶は絶対だと思っていた。モットーとしていることを守っているもんだと思っていた。違うと言いたいんだな?」

「正解だ。少しは世界が広がったみたいだな。タケル」

「なんか、気が抜けた感じだ。ご馳走様」

うちは代々寺。稼ぎは檀家さんの思いやりでできている。

代々ってどのくらいだろう?うーん、江戸末期に建て直したって聞いたな。

だからか、所々モダンな感じもする。敷地内に自宅もあるし。門からは見えないけど。

それにしても、今朝のやり取りはちょっと腹の虫が~‼

空腹ではないが、腹が立つ‼

もーなんか、どうでもいい感じだ。家を継ぐからと言っても剃髪済みではないが、茶髪にでもしたい感じ?

俺はかなり遅くにやってきた反抗期というような様相で自分の見た目を変えようとした。

茶髪は無理だな。という結論にすぐに至り、結果ピアスで終わった。

翌日の親父は怒髪天。髪ないけど。

「檀家さんを迎えたりするのに、ピアスなど!」とかなりのお怒りだった。

開けてしまったものは仕様がない。そこは諦めてもらおう。

ピアスに袈裟という風体で僧侶の務めを果たすことにした。

「ここは、萩野寺ですか?」

寺の門の前の女性に尋ねれた。

(そうだよな。門の文字はもう読めないくらい古びてるしな…)

「えーと、ここではなんですから、中へ案内します」

「お前の案内はなんかいかがわしい‼申し訳ありません、愚息が。渡辺様ですね?こちらへどうぞ」

俺は真面目なのに…。見た目で人を判断するとは。

ん?渡辺?

「渡辺飛鳥か?」

「呼び捨てとは何事か⁈タケル!」

「俺が中学の時の同級生」

向こうの方がビックリだろう。同級生が僧侶やってて、ピアス…。

「中学の同窓会にも来なかったからわかんなかったけど、僧侶さんなんだね」

この頭で同窓会はナイワー。

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1.僧侶の規範
『僧侶たるもの、女人との接触を避け、生涯独身であるべし』それが俺、好野健(タケル)のモットーだ。今朝も精進料理を食べる。のが理想なのに何で…「今日は精のつくように朝からニンニク入りのカレーよ!」と母、美子(ヨシコ)は言う。「精進料理といつも言ってるでしょう?」と俺が言うと、横から父、康二(コウジ)が「お前は自分のモットーを他人に押し付け過ぎだ。そしてなぜ自分が存在するのかを考えなさい」うーむ、これでも俺の師匠だし、考えてみよう。宇宙規模の命題だな。父が突然言い出した。「Q1.何故お前は母親がいるんだ?」はぁ?命題のヒントなら要らない。「Q2.何故お前には姉妹が3人もいるんだ?」…なんか読めてきた。「親父…俺は僧侶は絶対だと思っていた。モットーとしていることを守っているもんだと思っていた。違うと言いたいんだな?」「正解だ。少しは世界が広がったみたいだな。タケル」「なんか、気が抜けた感じだ。ご馳走様」うちは代々寺。稼ぎは檀家さんの思いやりでできている。代々ってどのくらいだろう?うーん、江戸末期に建て直したって聞いたな。だからか、所々モダンな感じもする。敷地内に自宅もあるし。門からは見えないけど。それにしても、今朝のやり取りはちょっと腹の虫が~‼空腹ではないが、腹が立つ‼もーなんか、どうでもいい感じだ。家を継ぐからと言っても剃髪済みではないが、茶髪にでもしたい感じ?俺はかなり遅くにやってきた反抗期というような様相で自分の見た目を変えようとした。茶髪は無理だな。という結論にすぐに至り、結果ピアスで終わった。翌日の親父は怒髪天。髪ないけど。「檀家さんを迎えたりするのに、ピアスなど!」とかなりのお怒りだった。開けてしまったものは仕様がない。そこは諦めてもらおう。ピアスに袈裟という風体で僧侶の務めを果たすことにした。「ここは、萩野寺ですか?」寺の門の前の女性に尋ねれた。(そうだよな。門の文字はもう読めないくらい古びてるしな…)「えーと、ここではなんですから、中へ案内します」「お前の案内はなんかいかがわしい‼申し訳ありません、愚息が。渡辺様ですね?こちらへどうぞ」俺は真面目なのに…。見た目で人を判断するとは。ん?渡辺?「渡辺飛鳥か?」「呼び捨てとは何事か⁈タケル!」「俺が中学の時の同級生」向こうの方が
last updateLast Updated : 2025-10-01
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2.衝撃の告白
渡辺家…この辺の土地をぜーんぶ取り仕切っている財閥?みたいな。超金持。うちのお得意さん。一番大きい檀家。とはいえ、渡辺飛鳥は同級生だしなぁ。あ、元か。中学時代ねぇ、俺はモットーの元にろくに女と会話してなかったからな。名前覚えてたのは名前にインパクトがあったからだな。丁度‘飛鳥時代’とか歴史でやってた。なついなー。親父との話も終わったようで、衝撃の言葉が親父から発表された。「あー、そこの愚息。タケル。お前だ。ここの飛鳥さんと婚約するように」はぁ?寝ぼけてる。いや、ボケたのか?「おい、渡辺飛鳥。お前はそれでいいのか?」「家の達示よ」と、軽く言う。「いきなり、10は年上のおっさんと婚約よりはいいわ。そんなこともあり得るから」「金持ちも大変なんだな」「で、タケル。お前はどうなんだよ?」「これも寺のためなんだろ?それなら了承だ」「そういうことでタケルと飛鳥さんは今後婚約者同士ということでお願いします」寺の経営のためねぇ。これって政略結婚ってやつか?渡辺飛鳥かぁ。中学の時は男子に人気があったような気がする。女に興味がなかったから、美人とかわかんないんだよな。少なくとも俺の姉妹よりは女らしいな。うわー!好野君と婚約‼まさか僧侶になってると思わなかったけど、なんでピアス?目鼻立ちがハッキリしてるのは中学の時から変わらないけど、体格ががっちりしてたなぁ。僧侶って体力使うのかな?大学の授業が休講だったりした時に寺にお邪魔してもいいかな?翌日、いきなり大学の授業が休講だったりする。寺の方に行ってみよう。なんだか、声が低くて落ち着くなぁ。これは好野君の声?「飛鳥さん?」「あ、こんにちは。大学が休講だったので来てみました」「タケルもこれでも4年は僧侶やってるので、簡単な仕事は任せてるんですよ」私にはどれが簡単なのかわからない…。むしろ全部難しい。「タケル、客人だ。きちんともてなすように」「いらっしゃいませ。渡辺飛鳥。用件は?」「来てみたんだけど、迷惑だったかしら?」「昨日の今日でよく来たなーと思ったんだよ。粗茶でよろしければ出しますよ、お嬢様」「よろしくお願いします」うわー!私は何をよろしくされたんだ‼お茶を頂くだけだから!ん?俺は何をよろしくなんだ?とにかくお茶で接待だな。「俺らって婚約者同士でいいのか?」「いいんじゃ
last updateLast Updated : 2025-10-01
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3.僧侶の苦悩
さて、どうしたもんか。欲情しないんじゃなぁ。朝勃ちする以上EDじゃないだろう。婚約者だから、『うおー、こいつをずっと幸せにしたい。俺が』とか独占欲みたいのがわけばOKか?難しいぞ。現段階で渡辺飛鳥は金持ちで美人で幸せそうだもんな。俺が与えられる幸せなどあるのだろうか?「こんにちはー」(今日も元気だな)「いらっしゃい。渡辺飛鳥」「珍しい。今日はタケルさんが出迎えてくれるのね」「親父は法要中。どうぞ、上がってください」「すごい考えた。はげるかと思った」「はげてもいいんじゃない?」と、渡辺飛鳥はクスクス笑っている。「お前は笑うと可愛いんだな」渡辺飛鳥は赤面した。「それはそうと、タケルさんっていつ剃髪するの?剃髪したらピアスが目立ちそうね」「あー、なんだかんだ伸び伸びだなぁ。うーん、脱DTしたらにするかなぁ?」「DT?」「どーてー」渡辺飛鳥は赤面した。「あのなぁ、ミスキャンパスが泣くぞ?このくらいで赤面するな。ところで、俺がお前に与えられる幸せってあるか?」しばらくの沈黙のうちに渡辺飛鳥は沈黙を破った。「タケルさんと一緒の時間が私は幸せ」「そんなもんなのか?」はー、まさかの展開だなぁ。俺との時間ねぇ。家族とうまくいってないのか?うまくいってないからうちみたいのと政略結婚なのか…。大学もミスキャンパスじゃ女子から目の敵にされて女友達少ないかいないだろうしなぁ。そうなりゃ、うちに来れば安心もするわな。今度会ったら、いろいろ聞いてみよう。「こんにちはー」渡辺飛鳥が今日も来た。声は元気で明るいな。「飛鳥さん、いらっしゃい!息子なら、一人母屋で勉強中かなぁ?気にせず上がってください」気にしろよ、親父。まぁ、今日は渡辺飛鳥に聞きたいことあるからいいけど。「どうも、いらっしゃい。お茶でも淹れますね」「…」「どうした?元気ないな」「両親がケンカをしていて…」やはりそこに落ち着くのか。「私の事を妾の子って…」金持ちってのはなぁ。「家出してきちゃった」はぁ⁈それはビックリ。「で、お前はどうしたいんだ?家出なんかしたらますます‘妾の子’ってのがついて回ることになるんじゃね?」渡辺飛鳥は黙ってしまった。「お前の両親のケンカの原因は知らないけど、いつもなのか?いつもお前は‘妾の子’って言われてるのか?扱いも。そ
last updateLast Updated : 2025-10-01
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4.僧侶の誤算
予想通り俺と渡辺飛鳥は同じ部屋で一夜を共にすることとなった。「姉妹多いのね」夕食の時の女性率の高さからの発言だろう。「女ばっかりな、俺は肩身が狭くてな」「ここのお風呂は温泉?」「そうだが?」「うちでも温泉湧くかなぁ?」豪邸の庭でダウジング?ちょっと面白そうだ。「お気に召したようで何より」「じゃあ、おやすみなさい!」クソ。計画的犯行でうちに泊まり簡単に寝付きやがって、俺は眠れねー‼目を閉じるとこの女の色んな仕草が映写機のように俺の瞼の裏に映り出す。もー!タケルさんてば本当に私に欲情しないのね。ふて寝しよー。そうだ!「タケルさん!抱き枕になってくれませんか?」「断る。俺は有機物だ。無機物にはなれない」ちぇっ。つまんないのー。ふて寝しよー!抱き枕だとー‼そんなのになったら、俺はノンストップだ。多分。頭の中が煩悩だらけになっている自分を諫めるためにも経を心で唱えながら寝つこう。翌朝が地獄「きゃー‼」渡辺飛鳥の悲鳴が部屋中に響いた。俺の耳も痛かった。俺が渡辺飛鳥に抱きついてた。というか、俺の片手が渡辺飛鳥の胸を揉んでいた。「悪い。そこにあるから抱き枕になってもらってたんだな」「胸…」「そこにあったからだ。寝てるうちにだから許せ。決して意図的に襲ったのではない。襲うのであればもっと派手に襲っているであろう」「それはそうだけど…」「それと、悲鳴で俺の耳が痛い」「自業自得よ」俺は渡辺飛鳥の家に挨拶に行かなくていいのだろうか?と思うようになりつつある。そうだなー、婚約者っぽい感じになってきたし。気持ちが。そこらへんも今度会ったら…「こんにちはー」今日も元気だなぁ。「親父は法要中だから俺が出迎え。不満か?っ俺は何もしてないぞ」渡辺飛鳥が赤面したので、俺は動揺した。1泊した時に俺が渡辺飛鳥の胸を揉んだのを気にしているようだ。「どうぞ、お上がりください」「なぁ、気になってるんだけど。俺はお前の家に挨拶に行かなくてもいいのか?行くべきだろう?」「うちに来なくても大丈夫なのよ。ほら‘妾の子’だから。本妻の子もいるし」「でも変わらずに愛情受けてるんだろ?だったら…」「それよりも!既成事実と孫の顔よ‼」「それを僧侶の俺の前で言うか?オカタクて結構。俺は順序だってコトを進めたいの」「今どきの若者が…」「そこで、挨拶はい
last updateLast Updated : 2025-10-01
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5.僧侶の望み
もっとこう、『娘はやらん』的なものを想定していたのに淡泊過ぎて気が抜ける。『娘はやらん』感じなら婚約者なんぞつけないだろうが。俺の髪とかピアスにも触れなかったな。あー、なんか面倒になってきた。式ナシで写真のみ。白無垢バージョンとドレスバージョンでよくね?で入籍後は初夜でよくねーか?「こんにちはー」今日も元気だな、よしよし。面倒ごとは避けたい。特に、今‼また‘両親の喧嘩’とか悩み相談はまっぴらだ。で、物は相談なんだけど…「式ナシで写真のみ。白無垢バージョンとドレスバージョンでよくねー?で入籍後は初夜でどう?」「味気なーい。ドレスでブーケトスしたいの!招待客とか考えるよりずっと楽だけどさぁ。タケルさんが剃髪する前にタケルさんのタキシード姿も見たかったし」「俺の紋付袴姿は?」「別腹です!」「招待客ってどうなりそうなんだ?うちは親戚かなぁ?渡辺飛鳥は招待できるほどたくさん女友達いるのか?」「…いないけど」「オッサンの群れにブーケトスするのか?」「わかったわよ!ドレスは写真で我慢する‼」渡辺飛鳥の目にうっすらと涙が浮かんだいた。「悪かったな。意地悪が過ぎた」俺は渡辺飛鳥の頭を撫でた。渡辺飛鳥が俺にしがみついて泣き始めた。「袈裟に鼻水はつけるなよ。そして、行動が過ぎると俺の脱DTが早まる」さすがに渡辺飛鳥は体を離した。 タケルさんには前から憧れてたから、この縁談はどんどん進めたいんだけど。タケルさんが私に欲情しない宣言したのはショックだったなぁ。そんなに魅力ないかなぁ?あーあ、ウエディングドレスだってオフショルダーの着たかったんだけどな。着れるかもだけど、でも写真…。白無垢は全身布で覆ってるしなぁ。もちろん、タケルさんのタキシードも紋付袴姿も見たい。タケルさんも同じように想ってくれてるのかなぁ?「こんにちはー!お邪魔してもいいですか?」「邪魔なんてないですよ!飛鳥さんはうちの大事な嫁ですから、どうぞ上がってください」「今日も来たな。元気そうじゃん」「私もいろいろ考えるのよ!タケルさんの提案でOK。早いところ写真撮りましょう?タケルさんが剃髪しちゃう前の姿で写真に写って欲しいし」「僧侶はダメなのか?」「そういうわけじゃないけど…。あーもう!タケルさんが初恋なのよ。その思い出的な感じ」「女心はわからん。あと
last updateLast Updated : 2025-10-02
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6.僧侶の煩悩
あー、飛鳥は絶対ドレス似合うよなぁ。脱DT…。いつになるんだろ?写真撮ったらすぐ入籍していいもんだろうか?飛鳥のドレス姿を他の男の目にさらしたくない理由で神前式を推してたっていうのはなぁ、我ながら恥ずかしい。写真を撮るカメラマンが男だったらアウトなんだけど。こういうの飛鳥が調べててくれると楽なんだけどなぁ。雑誌とか。うぉー‼俺は何を考えてるんだ?これでは煩悩まみれではないか?僧侶としてしっかりせねばなぁ。今日も心で経を唱えるか?否、写経をしてからにしよう。全くなんてことだよ……。「こんにちはー、お邪魔します」部屋をノックする音が聞こえた。飛鳥が来たのはわかったし、飛鳥だろう。「タケル!」んな⁈おふくろ⁈「飛鳥さんが来たんだから、出迎えるとかしなさいな。あと、これ飲み物ね」と、お盆を手渡された。「タケルさん、こんにちは」「ああ、元気そうだな」「何よー!私が能天気みたいに!」飛鳥が顔をフイっと背けた。「連日うちに来てるけど、大学は大丈夫なのか?」「単位は取れるだけ低学年のうちに取ってるから平気」ドヤ顔で言われたが、大学に行ってない俺には飛鳥が言っていることがいいことなのかわからない。「まぁ、お前の大学生活に支障がないならいいさ」「ドレスのフィッテングとか時間かかるんじゃね?いつもお前が来る時間よりも早い時間に考えないといけないのかなぁ?」「ドレスを選ぶ日と写真を撮る日は別!」「そうなのか?俺は疎くてなー。お前に任せるよ。あ、俺は白無垢着てるとこも見たいからな」今日は天気良いなぁ。「よし、今日ドレスを選びに行こう!平日だから人少ないだろ?」「決めても写真撮るまでドレス姿見せないよ」「そいつは楽しみだな」飛鳥がじーっと車を見ている。「どうした?」「いや、ミニカーがおっきくなったみたいだなぁと思って」俺は察した。飛鳥は小さいころから高級外車しか見たことがないからミニカーのようで不思議なんだろう。俺の運転で写真館をいくつか廻るんだけどな。「運転手って普通はいないからな」と、先に言っておいた。写真館は飛鳥が予めピックアップしておいてくれたので助かった。 ~式の当日~「馬子にも衣―」と、俺が言い終わる前に、飛鳥から右腹、親父から左腹を殴られた。「痛てーよ。なんだよ、褒め言葉だろう?」「飛鳥さんに失
last updateLast Updated : 2025-10-03
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7.僧侶の緊張
さて、今日から飛鳥はうちで暮らすのか?ん?入籍してないから違うのか?うーん?「何を唸っているのだ。少年!」「俺は少年って年齢じゃねーだろ?で、何の用だ?」「今日から飛鳥さんがうちで暮らすんだ」(マジかよ?入籍してないけどいいのか?向こうの家は関心薄かったな)「そこで、この部屋は倉庫になります!お前と飛鳥さんの部屋は別に作るからな」(作るって増築ですか?)「いやいやいや。俺の趣味だってここにはあるし。倉庫はねーだろ?俺の書斎とかさぁ」「新婚さんが何を言うか!エロ本の1冊も持たないお前の趣味なんて、仏教関係だろ?それなら父の書斎に移動すればよいことだ」「何で親父は自分の部屋持ってて、俺はないんだよ?」「新婚さんが文句をいうな!」新婚さんは立場が弱いのか…ん?飛鳥が来たか。いよいよタケルさんと同居!きっと私の気持ちを考えて、タケルさんとは別の部屋を私に用意してくれるわよね!「いらっしゃーい!飛鳥さん‼今日からここで暮らすんだよ。この部屋、いいでしょ。タケルと二人の部屋♡」(えー?寝室はわかるけど、普段もってこと?)「よう、さっきぶり。俺もさっき聞いた。二人の部屋だとさ。私室は増築中」「着替えとかもこの部屋の中?」「まぁ夫婦だからなぁ。なんか趣味のもん持ってきたとか?2次元アイドルとか?」「そんなのはありません!」本日2度目のボディーにストレート……。「お前は……その拳が財産だよ……」「ゴメン、同じトコに二度はきついよね?」「いや、他のトコにその拳は痛い……。封印したほうがよくね?」と、談笑しているとつながったもう一つの部屋への襖の隙間から2組の布団が見えて、飛鳥の鼓動は高鳴った。飛鳥の様子がおかしいとタケルも思い、飛鳥の視線を追いかけようとすると……。「ダメ―――‼」と、大声でタケルの頭を全力で自分の方に向けた。「ちらっと見えた。あー、まぁ、なぁ?ところで!お前が全力で俺の頭を動かしたから首の筋が痛い。どうしてくれよう?今はまだ夕飯前だしこれで我慢してやるよ」と、タケルは飛鳥のつむじに唇を落とした。「俺…剃髪できるか心配になってきた。首痛いし、脇腹痛いし…」「ごめんなさい…」さすがに飛鳥を謝らせることになった。「なぁ、こういう時って奥さんになる方が三つ指立てて『不束者ですが、よろしくお願いします』って言
last updateLast Updated : 2025-10-04
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8.家族の意見
「タケル…いつになったら飛鳥さんと身も心も結ばれるんだ?父は心配だ」そんな心配よりものぞきをやめてくれ。「家族のみんなが心配していることだぞ?」「親父…心配はありがたいっちゃーありがたいけど、こう毎日二人の寝室をのぞかれてはできるもんもできねーよ。のぞきはやめてくれ」「いーや!やめない!」(マジかよ。のぞきの連中がいなくなるまで俺がどんなに我慢で苦しんでいることか)「あの…」夕食の食卓で飛鳥は恥じらいの顔で訴えた。「タケルさんと私の部屋を夜にのぞくのをやめていただけませんか?」(ナイス!飛鳥‼その顔は演技だな?)「飛鳥さん、私たち家族はあなたとタケルが身も心も結ばれて真の家族になるのを見届けたい」「でも…あの…恥ずかしい…」「飛鳥さん、気持ちはわかるのよ。私もそうだったもの」(おふくろー‼見られてたのか?おふくろの初夜with親父)「増築中の所ができたらそこに二人で住まおうぜ?それにしてもラストのおふくろの発言には驚かされた」「そうね。のぞかれながらでしょ?私はムリ。やめてね?」「俺も絶対無理。萎える。ところでさぁ、飛鳥は危険日とか手帳につける方?」「そういうのよくわかんない。婦人体温計の説明書に書いてそうだなぁ」俺は小声で「現時点で飛鳥が妊娠したら解決じゃねー?」と、小声で言った。「んなっ。大学ちゃんと卒業したいし。私だってまだまだ二人っきりを満喫したい」ラストにしたがって小声になっていったが。「そうだ!新婚旅行ってのはどうだ?ここだからのぞかれるんだよな。俺、絶対萎えるわー」俺は‘萎える’をわざと大声で言った。「大学があるから長期の旅行はムリよ?」「俺は2泊くらいしたい!」「うーん、時間作れるかな?そのくらいなら。国内ね。その間の仕事は?」「新婚旅行を邪魔する?わけないから、親父に丸投げー」「大学の単位があと卒論だけでよかった!」「そんじゃ、今日も遅くなったな。寝るか」飛鳥には「後でな」と、言った返しに「ゴメン!生理始まっちゃった」と、言われた。「おやすみなさーい」実に健全に夜は更けた。「おはよう、タケルさん」「あぁ、飛鳥おはよう」「タケルさん、髭もそうだけど、頭も髪が生えてきてますよ?」「髭剃りでいけるのか?飛鳥ー、あとでチェックしてくれ」「ラジャー」「おはようございます。うわぁ、今朝
last updateLast Updated : 2025-10-05
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9.僧侶の煩悩
人間手に入らないものほど欲しくなるものだと強く思う。今、飛鳥を抱くわけにはいかない。というか仕事中に煩悩まみれ。同じ部屋で寝ているから、拷問のようだ。たまにスヤスヤと寝息を立てやがってと思うときがある。ああ、せめて違う部屋ならなぁ。…きっと夜這いに行くだろう。少し前まで欲情しなかったのになぁ。そんなこと考えながら仕事中でいいのだろうか?そんなこと考えながら木魚を叩いているが?そんなこと考えながら読経しているが?「2泊できそうだよ!」と、飛鳥は元気に俺に言う。「大学、無理してないか?変な男に引っかからないか?」「心配性だなぁ。私にはコレがついてるもん!」と、左手の薬指の指輪を見せようとしたんだろう。はまってない……。「嘘…。ヤダ…。大学のどっかに落としたのかな?大学の事務局に落とし物で届いてないかな?」「おい、顔色悪いぞ。わかったから、それは明日考えよう。今日はゆっくり休め。やっぱり無理かけてるんだろ?俺は大丈夫だから」(本当は大丈夫じゃない。かなり溜まっている)こんな時でもしっかりのぞいている。飛鳥が具合悪いんだから出てきて、助けてくれてもいいものを!どうしよう。指輪…。大学で落とし物のとこにあるかなぁ?拾った人がいい人ならいいんだけど。最悪質屋とかに行ってしまったら…。明日バッグの中とかよく調べるけど。タケルさんみたいに私もピアスにすれば絶対なくさなかった。指輪にこだわったばっかりに…。「飛鳥ー、大丈夫か?まだ指輪の事考えて悶々として眠れないのか?仕方ないなぁ」と、タケルさんは掛け布団ごと私を抱きしめて一緒に眠ってくれた。「これならのぞかれても恥ずかしくないだろ?」「ありがとう。ぐっすり眠れる。私は抱き枕状態だね(笑)さっきまでタケルさんの言う通り悶々としてた」「この状況は俺が悶々とするんだからな、大人しく寝ろ!」小声で会話していたが、なんだか穏やかな気分になってよく眠れた。翌日から家族によるのぞきはなくなった。翌日の夜の二人の会話。のぞきがないなら、新婚旅行を無理しなくてもいいよなー。1泊でいい。飛鳥にその旨を伝えてみよう。「のぞきがないなら新婚旅行1泊でも俺は構わない。飛鳥が無理して時間作って顔色悪くしてる方が心配だ」「それなんだけど……カメラとかない?ものすごい羞恥プレイなんですけど」「部屋に
last updateLast Updated : 2025-10-06
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10.僧侶の疑念
俺は知り合いの電気屋に『部屋が盗聴もしくは盗撮されてるかもしれないから、だれか紹介してくれ』と頼むと、その日のうちに専門家を紹介してもらった。「佐藤と言います。お世話になります。お寺ですか?」「聞いてませんか?診てもらいたい部屋は母屋なので、こちらへどうぞ」「この部屋を診てください」と、俺は佐藤さんに言った。なにやら、いろいろと専門的な機械が出てきて診査が始まった。(お寺ですか?っていう言葉が怪しいが、まだ確信じゃないからなぁ)「あ、盗聴器ですよ。この意味もなくついている延長コード」(マジかよ、今までのも聞いて知ってんじゃん。何故見る?)「あ、この襖の取っ手。盗撮器ですね。レンズのところにガムテープでも貼っておきましょう」そうこうしながら、結構な数を回収した。「ありがとうございました。自分の私生活をのぞかれるのは嫌なので。ところで、ここへは何度目ですか?初めてきたわけではなさそうでしたので」「あなたは賢い。3度目ですよ。初めてきた時はお寺の方だったので。2度目はここへ盗撮器・盗聴器を仕掛けに来た時、依頼主はあなたの御父上ですよ。そして今日です。安心してください。私が仕掛けたものはすべて回収しました」「他にもあるということですか?何故それを除いてくれなかったのか?あなたの仕事は盗聴器・盗撮器の除去のはずだ」「私には見抜けなかった。というのが理由ですね。御父上の性格ならばあと2・3人はあたった方が賢明かと思います」やっとこさ、増築された。親父の趣味なのか?盗聴・盗撮には気をつけよう。「おお、出来たのか。どれ、わしも中を確認しよう」「お義父様!それはいけません。まるで工務店の方を信頼していないようですわ」「お、おお。わかった」ナイス、飛鳥。そんじゃ、俺らで昨日確認したように動こう。俺は2階。飛鳥は1階だな。昨日の晩のこと。俺らは盗聴や盗撮を避けるように筆談をした。もちろん、会話をしながら。「やっと私たちの部屋ができるのね!」 『どんな作戦でいくの?』「そうだな。こことは違ってまさに二人っきりって感じだよな」 『俺は2階を見て回る、飛鳥は1階でいいか?』「やだー、なんか緊張しちゃう」 『了解』「俺が全部解してやるよ!」 『じゃあ、明日はよろしく』「明日、移動かな?なんか楽しみになってきたー」「俺も」「おやすみなさい
last updateLast Updated : 2025-10-07
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