Search
Library
Home / ミステリー / PSYCHO-w / 20.参加意思

20.参加意思

Author: 神木セイユ
2025-06-26 11:00:00

 ルキは朝になると蛍が目覚める前、一人帰って行った。

 一口減ったミネラルウォーターを残して。蛍を抱き枕にしただけの一夜。

 蛍はふわふわした気持ちで、卵をフライパンに落とす。夏休みも終わり、既に九月に入ったが、まだまだ猛暑は続いている。

 夜中に感じたルキの体温と感触。

(あいつ、本当になんなんだよ……)

 蛍は自分がどれだけ油断していたのか。この時ようやく気付く。

 背後から抱き着かれたルキの身体は柔らかかった。以前は刃物を仕込んでいると明かし、その固められた身体に触れた。あんなゲームイベントの主催者が、まさか武装していないわけがないというのに、何故か昨夜はしていなかったのは事実。

(俺はいつか殺す気でいるってのに。余裕ってわけ ? )

 考えれば考える程、内側に広がる初めての……なにかの感情。

 そこへ背広姿の重明が帰宅した。

「おかえり」

「おう。食ったらすぐ出る。

 今日も図書館か ? 美果さんを待たせるのもなんだから、先に準備して来い」

「もうしてある」

「そうか。なら……いいが」

 重明は飛び出てきたトーストを皿にのせると、目玉焼きを持ってきた蛍と卓に着く。

「昨日は眠れたか ? 」

「……あー。うん。別に普通」

「あいつは友達か ? 」

 あいつ……とは ?

 ルキが来たことを知るはずもないのだから、椿希のことだ。

 蛍としては自分にちょっかいを出してきた椿希より、何も言わずに夜に来たルキの方が余程気になっているのが本音だ。しかし重明も内心穏やかじゃない。

 

「いや……。ちょっと絡まれただけだよ。

 学校で美果を紹介しろって言われて、曖昧に返したんだ。だってそいつ転校生で話したことないし……勝手に決めらんないじゃん。変な奴かもしれないのに美果に会わせらんないよ」

「そうだったのか……」

 重明はトーストを折り畳んだりちぎったりするだけで、口に運ぼうとしない。

「……どうしたの ? 」

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP