今年のGWは短く、大学勤務の理玖と晴翔は最初の祝日と土日を休んだだけで、いつもとほぼ同じ一週間を過ごした。
世間的にも今年は四連休程度の短いGWだったが、大学が休みを増やしたので、学生にとっては約一週間の大型連休になっていた。
その間は部活動やサークル活動、ゼミなどを大学が推奨していたので、一週間の休暇中も大学には学生や教職員が溢れていた。
だから、長期休暇明けという気がしない。とはいえ、既に休みが明けて三日は経過しているから平素に戻りつつあるわけだが。
「理玖さん、大変です。事件かも」
そう言いながら研究室に戻ってきた晴翔に、ドキリとした。
「ダメだよ、は……空咲君。仕事中は先生って呼ばないと」
改めて苗字で呼ぼうとすると、逆に照れが出る。
ドアの鍵が締まったのをしっかり確認して、晴翔が理玖に口付けた。
「すみません。気を付けます、向井先生。でも時々、ウッカリするかもしれません」
いつもの王子様スマイルを向けられて、何も言えなくなる。
(間違いなく確信犯的ウッカリだ……。恋人になってからの晴翔君は行動が大胆だ)
恋人になった事実を特に公表はしていないが、秘密にもしていない。
そのせいなのか、二人で廊下を歩いている時、普通に手を繋ごうとしたり、後ろから抱き締めたり、晴翔の行動は周囲に気付いてもらいにいっているなと思う。
WOという第二の性の発見以降、同性でも妊娠出産できる事実から同性婚が認められた。そのお陰もあって、同性カップルは昔ほど稀有な目で見られなくなった。
とはいっても、まだまだ珍しい類なので、一般的とまでは言い難い。
「理玖さんは、俺と恋人だってバレるの、嫌ですか?」
捨てられた子犬のよう