私が藤堂さんにそう告げると、藤堂さんは私を睨みつけ、「いい加減にしてくれる?……いい?恭平さんとは別れてもらうから」と顔を近付けられる。
「イヤです。私は絶対に別れませんから。……失礼します」
私は藤堂さんにそう告げると、カバンを手にお店から出た。
課長に早く会いたい。課長に触れてほしい。 抱きしめてほしい。
「敵う訳、ないじゃん……」
あんな人がいたら、私は到底敵わない。あの人の方が、強いと感じた。
そう思った時だったーーー。
「あら、瑞紀?」
「……沙織?」
沙織が私の前に歩いてきた。
「どうしたのこんなところで。 なんかあったの?」
「っ、沙織……」
私は沙織に抱き着いた。
「瑞紀、どうしたの。大丈夫?」
「私……。私ね……」
上手く言葉が出ない私に、沙織は優しく「大丈夫よ。話なら私が聞いてあげるから。 だからゆっくりでいいから、話してみなさい」と言ってくれる。
「……私は、どうしたらいい?」
「え……?」
「私、幸せになっちゃいけないの?」
私が沙織にそう言うと、沙織は「なに言ってんのよ。幸せになっちゃイケない訳がないでしょ? なんなら、人間は幸せになるべき権利を持ってるんだから、幸せになるべきなのよ」と言ってくれる。
「……いいんだ。幸せになっても」
「当たり前でしょ。この世の中に幸せになっちゃイケない人なんて、いないのよ」
「っ……ありがとう」
そうだよね。私、幸せになってもいいんだよね?
私が幸せになっちゃイケないなんて、そんなこと誰が決めたの?
私は、課長と幸せになりたい。私は課長のそばにいたい。 課長を誰よりも愛してるのは、私だなんだから。
「ね、沙織?」
「ん?」
「私が今から話すこと、真剣に聞いてほしいんだ。……歩きながらでも、いいかな」
「うん」
私は歩きながら、ゆっくりと口を開いた。
「……驚かないで、聞いてほしいんだけどさ」
「なによ。急に改まっちゃって」
「実は私ね……課長のことが好きなの」
私がそう告げると、沙織は何も言わずに黙っていた。
「この前沙織に話した、身体の関係がある人って……実は課長のことなの」
私がそう話しても、沙織はずっと口を閉ざしたまま私の話を聞いてくれている。
「課長も私のことを好きでいてくれてるの」
なんか、この後の言葉を言うのがとても怖い。でも、沙織には言わなきゃって