でも沙織にそんなことを言われてから、条件だけじゃいい恋愛はできないということを知った。
だからもうそんな理想は捨てて、今は本当に私を愛してくれる人と幸せになりたいと思う。
でも今はその条件なんて気にしてないし、課長とだけ幸せになれればそれでいい。 課長のことが、好きで好きでたまらないから。
「……私ね、課長のこと、本当に好きなんだ」
沙織は私を優しい目で見ている。
「課長も好きだって言ってくれて本当に嬉しくて。……だから私、ずっと課長のそばにいたいの」
「……ん、頑張りな」
沙織は私の肩に手を置くと、小さくそう呟いた。
「うん……ありがとう、沙織」
「またいつでも、話聞くからね」
沙織に話したら、なんとなく気分がスッキリした気がした。
「……アンタ、成長したね」
ふとそう呟いた沙織に、私は「え……?」と沙織を見た。
「今のアンタ、すごくキラキラしてるもん。……昔のアンタとは、大違いね」
「……そう思う?」
「思うよ。 昔のアンタは、イイ男の条件にばっかりこだわってたから、彼氏が出来てもあまりいい恋愛が出来なかったじゃん?……でもね、今のアンタは違うって分かるよ」
沙織がそう言ってくれたことが嬉しくて、なんか元気が湧いてきた。
「今のアンタは、課長のことを本当に一途に想ってるし、真っ直ぐに課長とぶつかろうとしてる。……それってさ、アンタが成長したってことでしょ?」
「成長……」
「今のアンタはすごく生き生きしてるし、輝いてる。 だから課長と幸せになりなさい」
沙織は私の手を握ると、「私にとっての幸せは、アンタがとにかく幸せになること。 確かに自分の幸せも大事だけど、アンタの幸せのが大事だから」と言ってくれる。
「ありがとう、沙織。 私、幸せになりたい。……ううん、絶対幸せになるから」
「うん、頑張って」
沙織の優しさはどこか温かくて、でも優しさに包まれてる。 そんな友達を持った私って、きっと幸せなのだと思う。持つべきものは、友だ。
「今日色々とありがとう、沙織。……沙織にはいつも、助けてもらってばかりだね」
「なに言ってんの。アンタの幸せが一番だって言ったでしょ」
「うん……ありがとう」
「じゃあ、私こっちだから」
「うん。じゃあね」
私は沙織に手を振ると、そのまま家に帰った。
* * *
ん……? あれ?家の前に、誰かいる……?