クリスマス当日。
その日の夜、まさかと思っていたら――
イーサンが私たちの家のドアをノックした。
「叔母さん、うちの両親、出かけちゃって。今年のクリスマスはひとりで過ごす予定で……一緒に過ごしてもいいですか?」
その口調は、意外にも丁寧だった。
両親も断る理由がなかったのだろう。
イーサンを家の中に招き入れた。
自然と、彼は私の隣に座った。
正直、席を離れたかったけれど――
それもあからさますぎる気がして、そのまま黙って座り続けた。
親戚の叔母たちは、私たちの間に何があったかを知らず、昔のように軽い調子でふたりをからかってくる。
イーサンは最初、愛想よく笑って応じていた。
けれど、私が穏やかに――まるで何もなかったように、一つずつ丁寧に説明していくと、
彼の表情が、じわじわと曇っていった。
やがて夜も更けて、家族たちがそれぞれの部屋へと引き上げていく。
私も部屋へ戻ろうと立ち上がったとき、背後からイーサンに手を掴まれた。
「……そんなに、俺との関係を否定したいのかよ」
その問いかけに、私は首をかしげて返す。
「関係?……何かあったっけ、私たちの間に?」
その言葉で、イーサンは動きを止めた。
言葉を失ったように、その場に立ち尽くす。
何かを言いかけた彼の声を遮るように、私のスマホが鳴った。
表示された名前――マイルズ。
私の大学の同級生で、出会ってからずっと、私に好意を持ってくれている人。
最初は何も感じていなかったけれど……
イーサンとのことを清算し終えた今となっては、彼の存在は少しずつ心に入ってきていた。
マイルズは、イーサンのように強引じゃない。
静かに寄り添ってくれて、必要な時にちゃんと手を差し伸べてくれる。
その日も、彼との会話は心地よかった。
マイルズと話していると、不思議と話題を探す必要がなかった。
いつも、気づけば時間が過ぎていて――気まずさも沈黙も、どこにもなかった。
「シンシア、メリークリスマス」
もう日付が変わって、深夜になっていた。
名残惜しそうに、マイルズが電話を切った。
「うん、メリークリスマス」
通話を終えて、スマホを置いてふと振り向くと――
そこに、まだイーサンがいた。
いつからそこに立って