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Home / 恋愛 / たとえ、この恋が罪だとしても / 6・スタジオで

6・スタジオで

Author: 泉南佳那
2025-06-23 16:29:52

いくら表面を飾ってもそれは隠しきれない。

でも、あの子は違った。

服装は目も当てられないぐらいダサかった。

でも彼女の内面にあるのは、欲望とは無縁の透明で繊細なガラス細工だ。

そのガラス細工は鍵のついた箱に大切にしまってあったらしく、俗世間の垢(あか)にまみれずにここまで来たようだ。

玄関のチャイムが鳴り、来客を知らせる。

インターホンのカメラ越しに緊張した面持ちの文乃の姿が見えた。

「来た、来た」

得意げな顔を紗加に向けてから、おれは玄関へ急いだ。

〈side Ayano〉

来てしまった。今、安西さんのスタジオの呼び鈴を押している。

自分にこんな無謀なことをする度胸があったことに驚いた。

ほんの5分ほど立ち話しただけの男の人を訪ねるなんて。

ただ、心の片隅に、結婚したらもうこんな冒険はできなくなるという思いがあった。

独身最後のわずかな期間に、いままで経験のないことをしてみるのも悪くないかな、と。

それに第一線で活躍する写真家のスタジオとはどんなところか、のぞいてみたいという好奇心もあった。

でも、それがどんなに浅はかな考えだったか、このときのわたしは、まだ気づいていなかった。

事前にネットで「安西瀧人・写真家」を検索した。

彼の言っていたことは本当で、写真業界ではかなり名の知られた人のようだ。

 
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