この人、どうしてこんなに人を和ませる顔をするんだろう。
旧知の友だちに見せるような笑顔。
わたしたち、まだたった2回しか会ったことがないのに。
奥にもう一つの部屋につながる扉があった。
わたしはまずその部屋に入るように促された。
「でも、来てくれるってわかってたよ。なんでだろう? わかんないけど、きみが来ないはずないって思ってたよ」
「……こんな高価なもの預けられたら、来ない訳にいかないじゃないですか」
彼はいたずらが成功した子供のように、目を輝かせた。
「じゃあ狙いは当たったんだ。なんとしてももう一度会いたかったんだ、きみに」
まるで愛の告白のような言葉を口にしながらじっと見つめてくる。
わたしは思わず視線を外して下を向いた。
赤く上気してくる顔を隠したかった。
「でも、あの、わたしモデルなんて無理です。だいたい写真撮られるの苦手で、いっつも変な顔になっちゃうし……」
何が何でも断ろうと必死だった。
でも目の前の人は余裕の表情で見つめてくる。
わたしが断ることなんて、最初からお見通しって顔で。
「とにかくさあ、せっかく来てくれたんだし、一度だけ撮ってみようよ。自分で言うのもなんだけど、結構レアな機会だよ。無料(ただ)でプロに写真撮ってもらうのは」