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Home / 恋愛 / クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚! / 第2話

第2話

Author: レイシ大好き
紗雪は恕原に長く留まることはなかった。本来、彼女がこの地で学業を続けたのは加津也のため。しかし、大学は卒業したし、彼の心にはもう別の女性がいる。

この街に、もはや彼女がいる理由はない。

紗雪はその夜のうちに航空券を手配し、鳴り城へと飛び立った。

空港に降り立ったとき、迎えに来ていたのは松尾 清那(まつお せいな)だった。

「今度は、もう行かないの?」

「うん」

かつて、紗雪は加津也を追いかけるため、鳴り城に滞在する時間が少なく、清那と過ごす機会も限られていた。

しかし、賭けには敗れた。

もう、離れる理由もない。

清那は彼女と加津也のことを聞き、少し複雑な表情を浮かべたが、何も言わずに紗雪の腕を軽く引いた。

「暗い話はやめよう。今日はあなたの歓迎会よ」

紗雪は微笑みながら頷き、断ることなくその言葉を受け入れた。

清那は彼女を鳴り城で最も高級な会員制クラブへ連れて行き、最高級の酒を注文し、独身パーティーを開いてくれた。

グラスを傾けるごとに、紗雪の胸に残っていたわだかまりは少しずつ薄れていく。

「紗雪が加津也と別れてくれて、正直ほっとしたよ」

清那が冗談めかして言った。

「あのときの紗雪、本当に別人みたいだった。加津也に合わせるために、猫かぶって大人しくしてたし、酒もやめて、スポーツカーも手放して、毎日図書館にこもってたの、今思い出しても衝撃だったわ」

加津也の好みとは真逆のタイプだった紗雪。

二川家は鳴り城でも屈指の名家であり、かつての紗雪は華やかな世界を好み、カーレースや乗馬、登山やバンジージャンプに夢中だった。

明るく、情熱的で、自由奔放。

恋愛など、人生のささやかな彩りに過ぎないと考えていた。

それなのに、加津也のためにすべてをやめ、静かで従順な少女に成り変わった。

「あの時の私はどうかしてる」

過去を思い出しながら、紗雪は気怠げに言う。

彼女は絶世の美女だった。

ただ、かつては無理をして、自分に合わない姿を作っていただけ。

今の彼女には、そんな違和感はない。その自然な美しさに、隣で酒を注いでいた男性すら、思わず頬を赤らめるほどだった。

清那は笑いながら問いかけた。

「紗雪、加津也とは終わったことだし、本当に二川家を継ぐの?」

「約束はちゃんと守らないと」

紗雪はグラスの酒を一口飲み、淡々と答えた。

二川母はやり手の女性であり、夫を亡くした後、激しい企業内の抗争をたった一人で乗り切ってきた。

姉の二川 緒莉(ふたかわ いおり)は生まれつき体が弱かった。

そして、紗雪は自由を愛する性格だったため、二川母は無理強いすることなく、彼女に選択の自由を与えた。

それが、今回の賭けにつながった。

負けた以上、潔く認めるしかない。

清那は肩をすくめる。

「二川家の決まりは、結婚してから家業を継ぐことよね?相手、もう決めた?」

「実はまだ」

紗雪は母の考えをよく理解していた。

母は確かに強気な人間だが、結婚相手を厳しく制限することはなかった。

かつて彼女が加津也との交際を強く反対したのは、小関家と西山家が競合関係にあったからだ。

「紗雪が負けたとしても、おばさんは無理に結婚させたりしないわよ。だいたい、世の中には男なんていくらでもいるし、どうしてもっていうなら、私の従兄を紹介しようか?」

清那の従兄、椎名 京弥(しいな きょうや)。

彼は有名な「高嶺の花」だった。

冷淡で、禁欲的な雰囲気を持ち、それでいて容姿は端整を極める。

紗雪は、幼い頃に彼の顔を見たとき、あまりの美しさに息をのんだことがある。

子供の頃の浅い恋心は、やがて静かに消えていった。

その後、互いに遠くで存在を知るだけの関係になり、一度も会うことはなかった。

紗雪は清那の言葉を冗談と受け流した。

冷たい酒が喉を通り抜けると、後になってわずかな苦みを感じる。

宴が終わりに近づいた頃、二人の足取りは少しふらついていた。

清那は妙な顔をして言った。

「京弥が、迎えに来るって」

そう言いながらも、少し不思議に思っていた。

彼女は昔から従兄と特別親しいわけではなかった。

それなのに、突然メッセージが届き、「紗雪と一緒にいるのか?」と尋ねられ、さらに迎えに行くとまで言われた。

清那はあまり深く考えず、それを単なる気まぐれな親切だと思っていた。

数分後、一台の黒いマイバッハがクラブの前に滑り込んだ。

車の窓が下がると、そこには冷たく、それでいて妖艶な雰囲気を纏った男性の顔があった。

端正な顔立ち。

陶器のように滑らかな肌。

上品で、気品を感じさせる佇まい。

月明かりの下、その美貌は一段と際立ち、まるで人ならざる存在のように思えた。

まさに、目の保養。

「乗れ」

低く響く声は、耳をくすぐるような魅力に満ちていた。

京弥の視線が清那を軽くかすめ、最後に紗雪の上で止まる。

目が合った瞬間、紗雪の心臓がわずかに跳ねた。

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