「ヒマワリさん、ごきげんよう」
うげ。お前が言うな。「寮長先生、ごきげんよう」 寮長先生? ヒマワリの声ちっさ。「おや、殺人鬼さん。町長の名において、アタシがしっかり成敗してあげますからね」 町長なの、これが? ウチがこの間会った町長とはまったくの別人。どういうことヒマワリ。あれ? ヒマワリはどこ? 部屋の隅で縮こまってる。「ところでヒマワリさん。いつまで大塔宮女子学院の冬季制服を着ているのです?」「はい。申し訳ございません。寮長先生」 さっきの威勢はどうしたの? ヒマワリ、なんでこんなところで服脱ぐの? 制服の下、ブラとショーツしか着けてないんだ。ヒマワリすごく痩せちゃったんだね。あのしなやかだった体はどこいっちゃったの? 背骨、曲がってない? 肩甲骨が飛び出て見える。どうしたのその背中、傷の跡がいっぱい。 ヒマワリは、そのままの姿で脱いだ制服をショーケースのマネキンに着させると、テーブルの上の丁寧に畳まれた違う制服を着はじめた。今度のは胸に三つ葉の模様のついた明るい緑のやつ。「三ッ葉女子学館高等学校の夏季制服に着かえました。寮長先生」「そう、それでいい」「二時間ごとに着替えて私に見せに来る。約束を破ると」「鞭で打たれます。寮長先生」「今回は、私が来てさしあげたからいいようなものの、そうでなかったら」「鞭で打たれます。寮長先生」「よろしい。こっちに来なさい」 ヒマワリは体を固くして、動こうとしない。「もう一度いいます。ヒマワリさん。こっちに来なさい」 やっぱり動かない。「命令に背くと」「鞭で打たれます。寮長先生」 ヒマワリの声、震えてる。「制服の裾を上げ、向うをむいて、壁に手をつきなさい。早く!」 メタボの町長が、机の引き出しから鞭を出して手にすると、牙の生えた口の端から汚い色の涎をたらし、ヒマワリのいる方へ歩み寄っていく。 ヒマワリ、ヒマワリ、ゴメンね。ウチ何にも知らなかった。違う。知ってた。ヒマワリがパパのことで悩んでるの知